Web3が発展を見せ、インターネットの世界を大きく変革しようとしています。

Web3とはどのようなものであり、どのような技術に活用されているのでしょうか?

また、Web3にまつわる法律にはどのようなものがあるでしょうか?

今回は、Web3やそれにまつわる法律について、Web3に詳しい弁護士が解説します。

Web3とその可能性

はじめに、Web3の概要について解説します。

Web3とは

一般的に、Web3とはブロックチェーン技術を活用した分散型のインターネットを指します。

ほかに、「Web3.0」などと表記されることもあります。

ただし、Web3は技術上からのみ定義できるものではなく、コンテンツを個々のユーザーが所有するとの思想を含んでいることも少なくありません。

これは、個々のユーザーが自身の投稿を収益化したり権利化したりすることが困難であったFacebookやX(旧:Twitter)などのプラットフォームと対比した考え方によるものです。

このプラットフォームが台頭した概念を「Web2.0」などと呼ぶことから、これに対応してWeb3の概念が生まれたとの見方もあります。

なお、日本政府が公表している「経済財政運営と改革の基本方針 2022」では、脚注70がWeb3の用語解説となっています。

これによると、Web3とは「次世代インターネットとして注目される概念。巨大なプラットフォーマーの支配を脱し、分散化されて個と個がつながった世界。電子メールとウェブサイトを中心としたWeb1.0、スマートフォンとSNSに特徴付けられるWeb2.0に続くもの」と表記されており、これがWeb3の1つの定義となっています。

Web3に将来性はあるか

Web3には、非常に大きな将来性があると考えられます。

後ほど解説しますが、Web3はすでにさまざまな技術の基盤となっており、生活に欠かせないものとなりつつあります。

今後もさまざまな場面で活用が進み、私たちの生活を大きく変革していくことでしょう。

Web3に関連する主な技術

Web3に関連する技術には、どのようなものがあるのでしょうか?

ここでは、Web3に関連する技術を4つ紹介します。

  • NFT
  • メタバース
  • DAO
  • 暗号資産

NFT

NFT(Non-Fungible Token)とは、「代替不可能なトークン」を意味します。

これは、ブロックチェーン技術を用いて、ウェブ上のコンテンツやアイテムを唯一無二の物とする技術です。

ウェブ上のコンテンツ(たとえば、アート作品)は複製が容易であり、劣化させることなく無限にコピーすることができてしまいます。

そのため、正規品とコピー品との区別が付きづらいという問題がありました。

一方、NFT技術を活用することで、ウェブ上のアート作品が唯一無二のものとなります。

これにより、デジタルアート作品について正規の所有者を証明することが可能となり、デジタルコンテンツが取引されやすくなりました。

メタバース

メタバースとは、インターネット上に広がる仮想空間です。

メタバース上ではアイテムなどが取引されることが多く、ここにもWeb3の根底となるブロックチェーン技術が用いられています。

DAO

DAOとは、一般的な組織のような中央集権的なマネジメント組織がない、分散型の組織形態です。

個々の参加者が有する「トークン」を用いて意思決定が行われ、あらかじめ設定したプログラムに従って組織が運営されます。

暗号資産

暗号資産とは、国家やその中央銀行とは異なり、特定の国家が発行しないインターネット上の通貨です。

代表的なものにはビットコイン(Bitcoin)があります。

暗号資産はブロックチェーン技術の代表格ともいえる存在であり、これもWeb3ならではの技術です。

Web3に関連する主な法律

Web3については、ある法律のみによって規制されているものではありません。

「Web3をビジネスに取り入れるならこの法律だけを知っておけばよい」というものではなく、そのweb3技術を使って行おうとしている取り組みによって関連する法律は大きく変動します。

そのため、ここではWeb3に関連し得る主な法律を紹介しますが、これで十分ということではありません。

実際にビジネスにWeb3の技術を取り入れる際は、個別具体的に関連する法律を洗い出さなければなりません。

ここでは、まず知っておくべき法律を6つ紹介します。

実際にWeb3に関するビジネスを展開する際は、弁護士へご相談ください。

  • 民法
  • 資金決済法
  • 金融商品取引法
  • 金融サービス提供法(旧金融商品販売法)
  • 個人情報保護法
  • 著作権法

民法

民法は、私人間(国や地方公共団体ではない個人あるいは企業間)の契約や権利義務関係を定めた法律です。

取引をするうえでのベースとなる法律であるため、Web3を活用したビジネスを展開する場合であっても、例外なく民法についての理解は不可欠です。

特に、Web3ではスマートコントラクト(ブロックチェーン技術を用いて人の手を直接介さずに契約内容を自動で実行する仕組み)が用いられることもあり、これが日本の法律上契約が成立したといえるかどうか、個別に検証しなければなりません。

資金決済法

資金決済法とは、決済サービスの利用者を保護しつつ、決済サービスの適切な実施を確保するための法律です。

法定通貨ではない仮想通貨であっても交換業を営むためには、あらかじめ所定の登録を受けなければなりません。

また、事業者がトークンを発行する場合は、その態様によって資金決済法の規制対象となる可能性があるため、あらかじめ確認する必要があります。

金融商品取引法

金融商品取引法とは、有価証券の発行や売買などの金融取引を公正なものとすることで投資家を保護するための法律です。

暗号資産は金融商品取引法上金銭とみなされるため、暗号資産でのみを組み込むからといって自由にファンドを組成してよいわけではありません。

また、韓国のステーブルコイン(価格の安定性が実現するように設計された、新しい仮想通貨)である「テラ」が大暴落したことを受け、日本ではステーブルコインを銀行などが発行できる法改正がなされています。

金融サービス提供法(旧金融商品販売法)

金融サービス提供法は、金融商品を販売する業者に対して、重要事項の説明義務や断定的判断の提供等の禁止を義務付ける法律です。

以前は「金融商品販売法」でしたが、2020年の改正によって名称が変わりました。

暗号資産取引や暗号資産デリバティブ取引も規制対象となるため、暗号資産を用いた金融商品を取り扱う際は金融サービス提供法の規制内容を十分確認しなければなりません。

個人情報保護法

個人情報保護法とは、個人情報の有用性に配慮しつつ、個人の権利利益を保護することを目的とする法律です。

Web3ビジネスではこれまでのビジネスと同様にユーザーから登録を受ける場面で個人情報を取り扱うことになるほか、ブロックチェーン上に記録された情報が個人情報や個人データである場合の取り扱いが問題となり得ます。

ブロックチェーン上に記録された情報が個人情報や個人データに該当するかどうかは、暗号化やハッシュ化の結果として、その情報が「他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができる」かどうかによって異なります。

復元ができないのであれば、その情報は個人情報に該当しません。

一方、復元によって特定の個人の識別が可能である以上はそのブロックチェーン上に記録された情報が個人情報に該当し、第三者提供時に原則としてあらかじめ本人の同意が必要となるなどさまざまな規制の対象となります。

そのため、そもそもその情報が個人情報にあたり得るかどうかを検討するとともに、個人情報に該当し得る場合は同意取得の方法や内容などについて吟味していかなければなりません。

Web3では国内のみで取引が完結しないことも多く、その場合は外国への提供を踏まえた対策が必要となります。

著作権法

著作権法とは、著作物を保護するための法律です。

メタバースをはじめとするWeb3技術の活用では、他者の著作権を侵害しないよう十分に留意しなければなりません。

著作権の対象となる著作物とは、「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」を指します。

誤解の多いところですが、漫画家や写真家などプロの作品のみならず、一般個人が描いた絵やスマートフォンで撮られた写真、ブログ記事なども著作物に該当し得ます。

著作権の保護対象となるために登録などを受ける必要はなく、「©マーク」を付していないからといって保護対象から外れるわけでもありません。

また、SNSに投稿されたからといって自由に使ってよいわけではない点にも注意しなければなりません。

そのため、たとえば一般個人が描いてSNSに投稿したイラストを無断で転載してNFTアート化して販売したりメタバース上のアバター衣装に転載して販売したりした場合は、著作権侵害となる可能性が高くなります。

Web3へ参入する際を弁護士に相談するメリット

Web3をビジネスに取り入れたりWeb3へ参入したりする際は、インターネット法務に強い弁護士のサポートを受けるようにしてください。

最後に、Web3へ参入する際に弁護士へ相談する主なメリットを3点紹介します。

  • 法規制について横断的に確認できる
  • 安心してビジネスを始めやすくなる
  • トラブル発生時の対応がスムーズになる

法規制について横断的に確認できる

1つ目は、そのビジネスを展開するにあたって、関係し得る法規制について横断的に確認しやすくなる点です。

Web3は新しい概念であり、Web3を横断的に規制する法律はありません。

そのため、自身で対応しようとすると、関連する法令を洗い出すだけでもひと苦労です。

弁護士へ相談することで、Web3を活用して行いたいビジネスに関する法規制を、横断的に確認することが可能となります。

安心してビジネスを始めやすくなる

2つ目は、安心してビジネスを始めやすくなることです。

Web3ではこれまでにない新しいビジネスモデルも生まれやすい反面、前例がないことも少なくありません。

せっかくビジネスモデルを検討して軌道に乗り始めたところで、そのビジネスモデルに法令上の問題があることが発覚すると、大きな転換を迫られることとなります。

また、リスクを懸念しながら進み出すと法令違反がないかなど不安が残り、エンジンがかかりきらないかもしれません。

弁護士へ相談してビジネスモデルの検証をしておくことで、安心してビジネスを展開しやすくなります。

トラブル発生時の対応がスムーズになる

3つ目は、トラブルへの対応がスムーズなことです。

ビジネスを展開する中では、多かれ少なかれトラブルが発生します。

Web3を活用した新たなビジネスであればなおさらでしょう。

トラブルの多くは初動が非常に重要であり、初動を誤るとトラブルが拡大することとなりかねません。

弁護士にサポートを依頼していると、いざトラブルが発生した際の対応がスムーズとなります。

弁護士のサポートを受けて利用規約や契約書を作り込んでおくことで、自社が負うリスクを最小限に抑えることも可能となります。

まとめ

Web3は非常に画期的な技術です。

すでに暗号資産やメタバースなどを実現するために広く活用されているほか、今後も社会を大きく変えていくことでしょう。

そのため、新たにビジネスにWeb3を取り入れようとする企業も増えています。

しかし、Web3については横断的な法規制がなく、関連する法律を洗い出すだけでも多大な労力がかかるのが現状です。

法律違反をしてしまった場合、「知らなかった」ことで免責されるわけではありません。

Web3をビジネスに取り入れる際は、インターネット法務に詳しい弁護士に相談するようにしてください。

伊藤海法律事務所では、Web3に関するリーガルサポートに力を入れています。

Web3の活用をご検討の際は、伊藤海法律事務所までお気軽にご相談ください。

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