クリエイターとしては、生成AIに自らの作品を学習される事態を避けたいと考えることでしょう。生成AIに作品を学習されれば、自分の作品が生成AIに取り込まれ、自分の作品に似た画像や動画を生成されてしまう可能性があるためです。

そこで、委託者側と締結する契約書に、生成AIへの学習禁止条項を盛り込む対策が検討できます。

では、生成AIへの学習禁止条項とは、どのようなものなのでしょうか?また、生成AIの学習禁止条項を設ける際は、どのような点に注意すればよいのでしょうか?

今回は、生成AIの学習禁止条項の概要や契約書に生成AIへの学習禁止条項を設けるメリット、生成AIの学習禁止条項の注意点などについて、弁護士がくわしく解説します。

なお、当事務所(伊藤海法律事務所)はカルチャー・エンターテイメント法務に特化しており、生成AIによる学習禁止条項について豊富なサポート実績を有しています。特に、学習禁止条項の中でも、厳格に一律禁止から緩いものまで相当数のグラデーションをご用意しており、案件やクリエイターさんのご希望に沿って使い分けて交渉が可能です。生成AIによる著作権侵害でお困りの際や、生成AIに自らの作品が学習される事態を避けたいとお考えの際などには、伊藤海法律事務所までお気軽にご相談ください。

生成AIの学習禁止条項とは?

生成AIの学習禁止条項とは、イラストや写真、コード、文章などの納品物や声優であれば自らの声などを、生成AIに学習させることを禁じる条項です。これについてだけ単独で契約を交わすのではなく、業務委託契約書や制作委託契約書などの中に盛り込むことが多いでしょう。

なお、生成AIに他者のイラストなどを学習させることが、直ちに著作権法などに違反するわけではありません。このように、法律上は本来許可されている(違法ではない)行為を当事者間の契約で禁じる条項を、「オーバーライド条項」と呼ぶこともあります。

生成AIに納品物を学習させると直ちに著作権侵害となる?

生成AIに納品物を学習させることは、著作権侵害にあたるのでしょうか?ケースごとに解説します。

原則:著作権侵害ではない

先ほども触れたように、生成AIに納品物であるイラストなどを読み込ませることは、原則として著作権侵害とはなりません(著作権法30条の4、47条の4、47条の5)。

生成AIに著作物を読み込ませることはイノベーションの創出にもつながると考えられており、厳しい制限はなされていないのが現状です。

似た作品をAIに生成させる目的である場合:著作権侵害となり得る

生成AIに著作物を読み込ませることが、常に合法となるわけではありません。似た作品をAIに生成させる目的であるなど、「著作権者の利益を不当に害することとなる場合」には著作権侵害となり得ます(同30条の4 但し書き)。

とはいえ、生成AIに著作物を読み込ませた段階では著作権侵害とはいえず、責任追及は困難でしょう。著作物を読み込ませただけではなく、これを元に類似した作品を生成しこれを無断で公表するなどした際に、著作権侵害を追及し得るにとどまります。

生成AIの学習禁止条項がある場合:契約違反として責任追及し得る

生成AIの学習禁止条項が契約書に盛り込まれている場合、この規定に違反して生成AIに納品物を読み込ませたことが判明した時点で相手方への責任追及が可能となります。

具体的には、損害賠償請求や契約解除などが検討できるでしょう。これについては、後ほど改めて解説します。

契約書に生成AIの学習禁止条項を設けるメリット

契約書に生成AIの学習禁止条項を設けることには、どのようなメリットがあるのでしょうか?主なメリットは次の2点です。

  • 生成AI学習の抑止力となる
  • 生成AIに学習させたことが発覚した際、差止請求や損害賠償請求しやすくなる
  • 場合によっては条項を利用してライセンス料をとりビジネスへの転化が可能である

なお、伊藤海法律事務所はAI法務に特化しており、相手方との交渉により契約書に生成AIへの学習禁止条項や、条件付学習条項、条件失効条項等を設けることに成功した実績なども豊富に有しています。生成AIに納品物が読み込まれる事態を避けたいとお考えの際は、伊藤海法律事務所までお気軽にご相談ください。

生成AI学習の抑止力となる

契約書に生成AIの学習禁止条項を設けることで、生成AI学習への抑止力となります。

相手方が誠実な企業であれば、契約書で禁止されている行為をあえて行おうとはしないでしょう。そのため、生成AIに納品物を学習される事態を回避できます。

生成AIに学習させたことが発覚した際、差止請求や損害賠償請求しやすくなる

先ほど解説したように、生成AIに納品物が学習されただけである段階では、相手方に責任追及をするのは困難です。一方で、契約書に生成AIの学習禁止条項を設けている場合には、生成AIに納品物を読み込ませたことが判明した段階で、相手方への責任追及が可能となります。

具体的には、次の責任追及などが検討できるでしょう。

  • 差止請求:生成AIに納品物を読み込ませるのをやめることや、生成された侵害品を破棄することなどを求めるもの
  • 損害賠償請求:契約違反(生成AIへの納品物の学習)により生じた損害を、金銭の支払いで償うよう求めるもの
  • 契約解除:相手方との契約を解除すること

ただし、具体的にとり得る対応は条項や契約書の内容などによって異なります。

 

お困りの際は、伊藤海法律事務所までお気軽にご相談ください。当事務所は、生成AIによる権利侵害時の対応についても、豊富なサポート実績を有しています。

生成AIの学習禁止条項の注意点

生成AIの学習禁止条項は万能ではなく、この条項さえ設ければ生成AI学習を完全に回避できるわけではありません。生成AIの学習禁止条項に関する主な注意点は、次の3点です。

  • 損害賠償の予定額を盛り込むことを検討する
  • 第三者が生成AIに学習させる可能性までの排除は難しい
  • 相手が生成AIに学習させたとしてもその証拠の確保が難しい

損害賠償の予定額を盛り込むことを検討する

1つ目は、損害賠償の予定額を契約書に盛り込むことです。

生成AIへの学習禁止条項を契約書に盛り込んだにもかかわらず、相手方がこの条項に違反して生成AIに納品物を学習させた場合、損害賠償請求の対象となります。

しかし、損害賠償請求をするには、相手方の契約違反と損害発生の因果関係や契約違反により発生した損害額などを立証しなければなりません。生成AIに納品物を学習させたことによる損害額を、客観的に立証するのは容易ではないでしょう。

そのため、契約書には損害賠償の予定額を盛り込んでおくのがおすすめです。生成AIの学習禁止条項に違反した場合における損害賠償の予定額を契約書に明記することで、万が一契約違反があった際に、具体的な損害額などを立証する必要がなくなります。但し、合理的な範囲を超える金額の損害賠償額の予定は公序良俗違反として無効となりますので注意が必要です。

第三者が生成AIに学習させる可能性までの排除は難しい

2つ目は、第三者が生成AIに学習させる可能性までの排除が難しいことです。

納品物が社内システムのコードなど第三者の目に触れないようなものであれば、第三者がこれを生成AIに読み込ませる可能性は低いでしょう。一方で、納品物がポスター用のイラストである場合やインターネット上に掲載される写真などである場合、これを見た第三者が生成AIに読み込ませる可能性までは排除できません。

また、そもそも生成AIはインターネット上の情報を広く学習するものです。そのため、納品物がインターネット上に掲載される性質のものであれば、自動的に生成AIに学習される可能性もあるでしょう。

相手が生成AIに学習させたとしてもその証拠の確保が難しい

3つ目は、相手が契約に違反して納品物を生成AIに学習させたとしても、その証拠の確保が難しいことです。

よほど特殊なイラストや写真、コードなどでない限り、相手方が契約条項に違反して生成AIに学習させたことの立証が困難である可能性が高いでしょう。仮に似た画像が生成AIで出力されるようになり、相手方の契約違反が疑わしい場合であっても、契約違反の立証までには至らない可能性もあります。

このように、生成AIの学習禁止条項は万能ではありません。とはいえ、先ほど解説したように、学習禁止条項を設けることは生成AI学習への大きな抑止力となるでしょう。

伊藤海法律事務所は、生成AIの学習禁止条項について豊富なサポート実績と研究歴を有しています。納品物が生成AIに学習される事態を避けたいとお考えの際は、伊藤海法律事務所までお気軽にご相談ください。実績豊富な弁護士が、状況に応じた最適な解決策を提案します。

生成AIへの学習を制限する条項でお悩みの際は伊藤海法律事務所へご相談ください

生成AIへの学習を制限する条項についてお困りの際は、伊藤海法律事務所までお気軽にご相談ください。ここでは、当事務所の主な特徴を4つ紹介します。

  • カルチャー・エンターテイメント法務に強い
  • 代表は弁理士資格も有している
  • 多様な顧問プランを展開している
  • 英文契約書にも対応している

カルチャー・エンターテイメント法務に強い

伊藤海法律事務所はカルチャー・エンターテイメント法務に特化しており、生成AIによる権利侵害についても豊富な対応実績を有しています。

相手方との交渉により、契約書に生成AIへの学習禁止条項を盛り込んだ実績も豊富であるため、契約締結段階から安心してお任せいただけます。

代表は弁理士資格も有している

伊藤海法律事務所の代表である伊藤海は、弁護士のほかに弁理士資格も有しています。弁理士とは、知的財産の保護に関する専門家です。

そのため、権利の保護から権利侵害時の対応に至るまで、一貫したサポートが提供できます。

多様な顧問プランを展開している

伊藤海法律事務所は、さまざまなステージにある企業や個人に過不足なくサポートを提供できるよう、多様な顧問プランを展開しています。

主な顧問契約プランは次の4つです。

  • スタンダードプラン:フリーランスや個人事業主、比較的小規模な中小企業、創業間もないベンチャー、アーリーステージにある企業、スモールビジネスなどを想定したリーズナブルなプラン
  • リーガルプラン:一般的な中小企業やメガベンチャー、ミドル~レイター期、N-2フェーズ頃の上場準備企業などを想定した標準的なプラン
  • コーポレートプラン:上場企業や資金調達・M&A・DD(デューデリジェンス)などに伴う業務が想定される企業など、相応の稼働時間を確保する必要のある企業を想定したプラン
  • 包括的法務受託:当事務所が実質的な法務部として稼働するプラン

また、顧問契約をいただいたクライアント様は、LINEやChatwork、Slack、メールなど多様な通信手段で弁護士とのやり取りが可能となります。さらに、弁護士を法務部のグループチャットに追加いただくことも可能となり、早期段階からの関与が実現できます。

英文契約書にも対応している

伊藤海法律事務所は、英文契約書にも対応しています。そのため、海外の企業や個人と契約を締結すべき場面においても、一貫したリーガルサポートが提供できます。

生成AIの学習禁止条項に関する伊藤海法律事務所の主な実績

伊藤海法律事務所は、生成AIの学習禁止条項について豊富なサポート実績を有しています。ここでは、当事務所の主な実績を2つ紹介します。

アニメ制作会社と声優の契約において声優の声に関する学習禁止を交渉により獲得

声優の声が生成AIに学習されれば、実際には話していない内容をその声優が話したように見せることなどが可能となります。アニメ制作会社としては、声優の声を汎用的に利用できるよう、生成AIに声を読み込ませたいと考える場合もあるでしょう。

一方、声優側としては、生成AIに声を学習される事態は避けたいことかと思います。生成AIに声を学習されれば声を自由に使われる可能性があり、自分の仕事をAIに奪われる可能性があるためです。

当事務所は声優側から相談を受け、アニメ制作会社と契約を締結するにあたり、声優の声の生成AIへの学習を禁止する条項を盛り込むことに成功しました。

アニメ制作会社が下請会社との契約において学習禁止条項を設けたうえで、裁量による適用除外を実施

当事務所では、アニメ制作会社へのサポート実績も豊富です。こちらは、アニメ制作会社が下請会社と契約を締結するにあたり、契約書に生成AIへの学習禁止条項を盛り込んだ事例です。

ただし、この場合には生成AIへの学習を全面的に禁じたいわけではなく、個別の事情に応じては学習を許可してもよいと考えていました。そのため、裁量による適用除外条項も盛り込んでいます。こちらも前述したグラデーションの一部です。

生成AIの学習禁止条項に関するよくある質問

最後に、生成AIの学習禁止条項に関するよくある質問とその回答を2つ紹介します。

生成AIへの学習を納品後に事後的に禁止できる?

生成AIへの学習を、事後的に禁止するのは困難です。そのため、生成AIの学習を禁止したいのであれば、契約締結段階で契約書に盛り込む必要があるでしょう。

生成AIの学習禁止条項は、誰に相談すればよい?

生成AIの学習禁止条項は、カルチャー・エンターテイメント法務に注力している弁護士にご相談ください。

伊藤海法律事務所は、生成AIの学習禁止条項について豊富なサポート実績を有しています。お困りの際は、当事務所までお気軽にご相談ください。

まとめ

生成AIの学習禁止条項の概要や、生成AIの学習禁止条項を契約書に盛り込むメリット・注意点などについて解説しました。

生成AIに著作物を読み込ませることは、原則として著作権侵害とはなりません。そのため、イラストや写真、コードなどの納品物を生成AIに読み込ませたくないのであれば、契約段階で生成AIへの学習を禁止する旨の条項を設ける必要があるでしょう。

このような条項を設けることで生成AI学習への抑止力となるほか、万が一契約違反が発覚した際に契約解除や損害賠償請求などの対応が可能となります。

とはいえ、生成AIの学習禁止条項を設けても、イラストなどを見た第三者が生成AIに読み込ませるリスクまでは排除できません。また、契約違反が生じたとしても損害額の立証が困難であることから、契約書には損害賠償の予定額なども記載しておく必要があるでしょう。

生成AIの学習禁止条項には、注意点も少なくありません。そのため、実際に契約書を締結しようとする際は、弁護士のサポートを受けることをおすすめします。

伊藤海法律事務所はカルチャー・エンターテイメント法務に特化しており、相手方と交渉した上で契約書に生成AI学習を禁止する条項を盛り込むことに成功した事例などを多数有しています。また、契約違反時の損害賠償請求などへの対応も可能です。

生成AIの学習禁止条項を契約書に盛り込みたいとお考えの際や、生成AIによる権利侵害でお困りの際などには、伊藤海法律事務所までまずはお気軽にお問い合わせください。

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