2025年12月18日、スマホ新法が全面施行されました。直接的な規制対象である国内の月間平均利用者数4,000万人以上の指定事業者だけではなく、特定のアプリストアだけでスマホアプリを販売している事業者などもスマホ新法の内容を理解し、適宜対応していくとよいでしょう。

では、スマホ新法はどのような法律なのでしょうか?また、スマホ新法の施行により、企業にはどのような影響が生じるのでしょうか?

今回は、スマホ新法の概要や主な規制内容、企業に生じる影響、企業が講じるべき主な対策などについて弁護士がくわしく解説します。

なお、当事務所(伊藤海法律事務所)はカルチャー・エンターテインメント法務に特化しており、スマホ新法への対策についてもご相談いただけます。スマホ新法について相談できる弁護士をお探しの際は、伊藤海法律事務所までお気軽にお問い合わせください。

スマホ新法とは?

はじめに、スマホ新法の概要や制定の背景、規制対象者について解説します。

スマホ新法の概要

スマホ新法は、正式名称を「スマートフォンにおいて利用される特定ソフトウェアに係る競争の促進に関する法律」といいます。これを略して、「スマホ新法」や「スマホソフトウェア競争促進法」などと呼ばれます。

その正式名称のとおり、スマホ新法とはスマホアプリの公正かつ自由な競争を促進するための法律です。これを実現するために、指定事業者に対して、一定の行為の禁止(禁止事項)や一定の措置を講じる義務付け(遵守事項)を定めています。

スマホ新法制定の背景

スマホ新法が制定された背景には、スマートフォンの普及と、特定少数の有力な事業者による寡占状態が挙げられます。

スマートフォンは急速に普及しており、スマートフォンの中で1つの経済圏が確立していると言えるでしょう。しかし、スマートフォン上でビジネスを展開する事業者(アプリ事業者など)にとって、公正な競争が実現されているとは言えませんでした。

なぜなら、たとえばiPhone上で動作するアプリケーションを販売するにはこれまでApp Storeを通すほかなく、Apple社に承認されなければ販売さえできなかったためです。また、販売にあたってはAppleに手数料を支払う必要があるほか、アプリ内課金についてもApple IDに設定したクレジットカードなど一定の選択しかできません。

同様の問題は、Google Playを通じてしかアプリを販売できなかったGoogleのAndroidでも起きています。

このような事態を受け、公正かつ自由な競争を回復することを目的としてスマホ新法が制定されています。

スマホ新法の対象者

スマホ新法による規制対象者は、国内利用者数が月平均4,000万人以上である「特定ソフトウェア」の提供等を行う事業者のうち、指定を受けた事業者です。

特定ソフトウェアとは、モバイルOSとアプリストア、ブラウザ、検索エンジンを指します。また、スマホ新法の規制対象となる事業者を「指定事業者」といいます。

これに該当する事業者は多くなく、2026年3月時点ではAppleとGoogle、そしてiTunesを含む事業体の3社のみが該当しています。多くの事業者は直接的な規制対象になるわけではないため、むしろ「これまでの寡占状態が緩和され、競争機会が増える」と捉えておくとよいでしょう。

伊藤海法律事務所はカルチャー・テクノロジー法務に特化しており、スマホ新法への対策のサポートも可能です。スマホ新法への対応でお困りの事業者様は、伊藤海法律事務所までお気軽にご相談ください。

スマホ新法の主な規制内容

先ほど解説したように、スマホ新法の規制対象者(指定事業者)はAppleとGoogle、そしてiTunesを含む事業体の3社のみであり、その他のアプリ販売会社などが直接的な規制対象になるわけではありません。

しかし、スマホ新法によってAppleやGoogleなどに課される規制内容を知っておくことで、ビジネス展開を検討しやすくなるでしょう。ここでは、スマホ新法による9つの禁止行為と5つの遵守義務を紹介します。

9つの禁止行為

スマホ新法では、指定事業者に対して次の9つの禁止行為が定められています。

  1. 取得したデータの不当な使用の禁止(スマホ新法5条)
  2. アプリ事業者に対する不公正な取扱いの禁止(同6条)
  3. 他のアプリストアの提供妨害の禁止(同7条1号)
  4. モバイルOSの機能の利用妨害の禁止(同2号)
  5. 他の課金システムの利用妨害の禁止(同8条1号)
  6. リンクアウト(外部決済)、ステアリング(アプリ外決済への誘導)の制限等の禁止(同2号)
  7. 他のブラウザエンジンの利用妨害の禁止(同3号)
  8. 自社のソーシャルログインの利用強制の禁止(同4号)
  9. 検索結果の表示における自社優遇の禁止(同9条)

これらの行為の多くは、AppleやGoogleが事実上の「囲い込み」をするためにこれまで行ってきたものです。これらの行為が禁止されることで、アプリ事業者としてはより自由なプロモーションや決済方法の選択などが可能となります。

その反面、アプリ事業への参入障壁が下がり新規のアプリが増大する可能性があるため、競争激化に備える必要もあるでしょう。

5つの遵守義務

スマホ新法では、指定事業者が遵守すべき義務を5つ定めています。

  1. 取得データの使用条件等の開示に係る措置(同10条)
  2. 取得データの利用者に対する移転に係る措置(同11条)
  3. デフォルト設定の変更、選択画面の表示に係る措置(同12条1号イロ・2号)
  4. 追加インストールの同意、アンインストールに係る措置(同12条1号ハニ)
  5. 仕様変更等の開示、期間の確保等に係る措置(同13条)

これらの義務が遵守されることで、アプリ事業者による公正かつ自由な競争の促進につながるでしょう。

スマホ新法で企業に生じる主な影響

スマホ新法の施行により、企業には具体的にどのような影響が生じるのでしょうか?ここでは、スマホ新法の指定事業者に生じる主な影響を解説します。

  • 法令違反リスクが生じる
  • 収益が減少する可能性がある

法令違反リスクが生じる

指定事業者がスマホ新法に違反した場合、排除措置命令や課徴金納付命令の対象となります。それぞれの内容は、次のとおりです。

排除措置命令

排除措置命令とは、違反行為を速やかにやめるよう公正取引委員会が求めることです。ただし、「確約手続き」の対象となります。

確約手続きとは、違反をした事業者自らが自主的に改善計画(是正措置計画)を作成し認定を受けることで、排除措置命令や課徴金納付命令の対象から外れる措置です。ただし、自らが策定した改善計画に違反した場合は、拘禁刑や罰金刑など重い罰則の対象となります。

参照元:確約手続(公正取引委員会)

課徴金納付命令

課徴金納付命令とは、違反行為によって得た収益のうち一定割合を国に納付するよう求めるものです。スマホ新法で課徴金納付命令の対象となるのは、次の禁止事項に違反した場合です。

  • 他のアプリストアの提供妨害の禁止(同7条1号)
  • モバイルOSの機能の利用妨害の禁止(同2号)
  • 他の課金システムの利用妨害の禁止(同8条1号)
  • リンクアウト、ステアリングの制限等の禁止(同2号)

課徴金の額は、違反行為による売上に20%を乗じて計算されます。

収益が減少する可能性がある

スマホ新法の制定により、規制対象企業の収益が一時的に減少する可能性があります。これまでの寡占状態が解消され、App StoreやGoogle Playを通さずにアプリが販売されるケースや他の決済手段によるアプリ内決済が増える可能性が高いためです。

スマホ新法で企業が講じるべき主な対策

スマホ新法の施行により、指定事業者以外の事業者はどのような対策を講じればよいのでしょうか?ここでは、スマホアプリ事業者などを想定し、スマホ新法の施行を受けて講じたい主な対策を解説します。

  • 法令を正しく理解する
  • 決済システムを見直す
  • プロモーション戦略を練る
  • 利用規約を改定する

なお、伊藤海法律事務所はカルチャー・テクノロジー法務に特化しており、法的な視点でのビジネスモデルのチェックや助言なども可能です。スマホ新法の施行を受けて自社のビジネスモデルを転換したいとお考えの際は、伊藤海法律事務所までお気軽にご相談ください。

法令を正しく理解する

対策の1つ目は、法令を正しく理解することです。

法令を正しく理解することでスマホアプリの販売に関して何がどのように変わるのかが明確になり、今後の販売手法などを検討しやすくなります。スマホアプリの販売事業者としては、基本的に「GoogleやAppleによる寡占状態が緩和される」と理解しておくとよいでしょう。

決済システムを見直す

対策の2つ目は、決済システムを見直すことです。

これまでスマホアプリでアプリ内決済をする場合、Apple IDやGoogle Playアカウントに紐づいた決済方法しか選択できませんでした。スマホ新法の制定により、AppleやGoogleなどによる他の課金システムの利用妨害が禁止されるため、決済方法を選択する幅が広がります。

そのため、これまでどおりの決済方法でよいのか他の決済システムを導入するのかについて検討するとよいでしょう。もちろん、これまでの決済方法の方が「ユーザーがスムーズに課金しやすい」などのメリットがあるのであれば、あえて決済方法を変更しないことも1つの方法です。

プロモーション戦略を練る

対策の3つ目は、プロモーション戦略を練ることです。

これまではiPhoneアプリであればApp Storeで、GoogleアプリであればGoogle Playで販売するほかなかったため、これを前提としたプロモーションをしていたことでしょう。しかし、スマホ新法の施行後は必ずしもこれらのストアだけで販売する必要はありません。

また、iPhoneアプリやGoogleアプリはこれまで、AppleやGoogleの審査によって絞り込まれてきました。今後は必ずしも公式ストアで販売する必要はなくなるため、これらの審査を経ずに販売されるアプリが増え、玉石混淆となる可能性が高いでしょう。

これらを踏まえ、自社のアプリの特性に応じてプロモーション戦略を検討しなおすことをおすすめします。

利用規約を改定する

対策の4つ目は、利用規約を確認し、必要に応じて改定することです。

アプリの現在の利用規約は、現在の決済方法や販売方法を前提として作成されていることでしょう。スマホ新法の施行を受けて決済方法やアプリの販売方法などを見直す場合、これに合わせてアプリの利用規約も見直す必要が生じます。

何をどのように見直すべきか分からない場合は、弁護士のサポートを受けて利用規約の改定を進めるとよいでしょう。

伊藤海法律事務所はカルチャー・テクノロジー法務に特化しており、スマホアプリの利用規約の策定・改正についても豊富なサポート実績を有しています。スマホ新法への対策として利用規約の改定をご検討の際は、伊藤海法律事務所までお気軽にご相談ください。

スマホ新法への対策は伊藤海法律事務所へご相談ください

スマホ新法への対策は、伊藤海法律事務所へご相談ください。ここでは、当事務所の主な特長を4つ紹介します。

  • カルチャー・テクノロジー法務に強い
  • 代表は弁理士資格も有しており知財に強い
  • 顧問契約も可能である
  • 英文契約書にも対応している

カルチャー・テクノロジー法務に強い

伊藤海法律事務所は、カルチャー・テクノロジー法務に特化しており、ビジネス構想段階や実施段階、実施後のどの段階においても法的助言やビジネスモデルチェックなどのサポートが可能です。

スマホ新法への対応にお困りの場合はもちろん、スマホ新法の施行を機に自社のビジネスモデルを見直したいとお考えの際などにも、当事務所までお気軽にご相談ください。

代表は弁理士資格も有しており知財に強い

伊藤海法律事務所の代表である伊藤海は、弁護士のほかに弁理士資格も有しています。そのため、知財の保護から侵害時の対応に至るまで、一貫したサポートを提供できます。

顧問契約も可能である

伊藤海法律事務所は顧問契約にも対応しており、次の4つのプランを設けています。

  • スタンダードプラン:個人事業主、比較的小規模な中小企業などを想定したプラン
  • リーガルプラン:一般的な中小企業、メガベンチャーなどを想定したプラン
  • コーポレートプラン:上場企業などを想定したプラン
  • 包括的法務受託:弁護士が実質的な法務部として稼働するプラン

そのため、どのステージにある事業者様であっても、過不足のないリーガルサポートを提供できます。

英文契約書にも対応している

スマホ新法の影響を受ける事業者は、海外の企業や個人と契約を締結すべき場面が生じることもあるでしょう。伊藤海法律事務所は、英文契約書にも対応しています。

スマホ新法への対策に関するよくある質問

最後に、スマホ新法への対策に関するよくある質問とその回答を2つ紹介します。

スマホ新法の施行日はいつ?

スマホ新法は、2025年12月18日に全面施行されています。

すでに施行されているため、対応ができていない事業者様は伊藤海法律事務所までお早めにご相談ください。

スマホ新法で企業が講じるべき対策は?

スマホ新法の施行により企業が講じるべき主な対策は、法令の内容を理解することと必要に応じて利用規約・決済システムを見直すことなどがあります。

自社による具体的な影響や自社が行うべき具体的な対応が分からない場合には、伊藤海法律事務所までご相談ください。

まとめ

スマホ新法の概要やスマホ新法の制定を受けて企業が講じるべき対策などを解説しました。

スマホ新法とは、AppleやGoogleによる寡占状態を解消する目的で制定された法律です。スマホ新法の施行により、一定の指定事業者に対し、寡占状態を緩和するためのさまざまな制約が課されることとなりました。

スマホアプリ事業者にとっては、スマホ新法の制定によりビジネスの自由度が高まることとなります。そのため、スマホ新法の内容を正しく理解したうえで、必要に応じて決済方法やプロモーション戦略の見直しをするとよいでしょう。

また、決済方法などを変更する際は、利用規約の改定も必要となる可能性があります。利用規約を的確な内容へと改定するためには、弁護士のサポートを受けるのがおすすめです。

伊藤海法律事務所はカルチャー・エンターテイメント法務に特化しており、スマホ新法に関するご相談にも対応しています。スマホ新法の制定を受けて法的な視点によるビジネスモデルのチェックをご希望の際や利用規約の改定でお困りの際などには、伊藤海法律事務所までお気軽にご相談ください。

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