「ファッションロー」が、ファッション業界においてにわかに注目を集めています。
では、ファッションローとはどのようなものなのでしょうか?また、ファッションローに関して弁護士にサポートを受けることには、どのようなメリットがあるのでしょうか?今回は、ファッションローの概要やファッションローとして挙げられる具体的な法律、ファッションローに関して弁護士にサポートを受けるメリットなどについてくわしく解説します。
なお、当事務所(伊藤海法律事務所)はファッションローに力を入れており、ファッションブランドやデザイナー事務所、セレクトショップなどからのご相談・サポート実績を豊富に有しています。ファッションローに強い弁護士をお探しの際は、伊藤海法律事務所までお気軽にご相談ください。
ファッションローとは
ファッションローとは、ファッション業界に関連する法律を総称する用語です。「ファッションロー」という名称の法律が存在するわけではありません。
ファッションローの概念はアメリカで始まり確立されたという説や、1711年にフランスで制定された「リオン絹織物産業の共同従業者および製造者のデザインの盗用に関する執政官規則」が起源であるとの説などがあります。
いずれにしても、ファッションローの概念自体はさほど新しいものではありません。しかし、経済産業省から2023年に「FASHION LAW GUIDEBOOK 2023」が公開され、改めて注目されている法分野であるといえます。
ファッションローに関連する主な法律
先ほど解説したように、ファッションローは1つの法律を示す言葉ではなく、ファッション業界に関連するさまざまな法律を含有した分野です。では、ファッションローに含まれる代表的な法律には、どのようなものがあるのでしょうか?ここでは、ファッションローに関連する主な法律を5つ解説します。
- 商標法
- 意匠法
- 不正競争防止法
- 民法(契約法)
- 景表法
商標法
1つ目は、商標法です。商標法とは、商標を保護するための法律です。商標とは、商品やサービスに対して使用される名称やロゴマーク、サウンドロゴ、立体的形状、色彩などです。
ファッション業界においては、ブランド名やブランドロゴなどの浸透によって消費者から認知度向上をはかることが少なくありません。たとえば、あのモノグラムのロゴを見たら多くの人は「Louis Vuitton」を想起するし、Cを二つ重ねたココマークを見れば「CHANEL」を想起するでしょう。これが、ブランドのおける商標の価値です。
そうであるからこそ、ファッション業界においては、商標の適切な保護をはからなければなりません。具体的には、商標法に基づいて商標登録を受けることです。
商標登録を受けた商標はその区分において独占排他的な使用が可能となり、他社に模倣がされた場合には差止請求や損害賠償請求などによって対抗できます。
このようなことを定めているのが商標法です。
意匠法
2つ目は、意匠法です。意匠法とは、意匠を保護する法律です。意匠とは、簡単にいえばデザインのことであり、物品や建築物、画像などの形状や模様、色彩、これらの組み合わせなどを指します。
衣服のデザインや靴の形状などについても、意匠登録を受けることで意匠権を獲得できる可能性があります。出願をして意匠権を獲得できれば、その意匠を独占排他的な実施が可能となり、模倣品が出回った際に差止請求や損害賠償請求などでの対抗が可能となります。
このようなことを定めているのが意匠法です。
不正競争防止法
3つ目は不正競争防止法です。
不正競争防止法とは、事業者間での公正な競争の秩序を守ることを目的とし、営業秘密の漏洩、模倣品の販売、信用毀損などを禁止し、その被害者には差止請求権や損害賠償請求権等の救済手段を与える法律です。
ファッションローの分野では、特に「商品の形態模倣」によるデザインのコピー、すなわち他のブランドや企業の衣服などの形状を模倣して販売した場合です。
民法(契約法)
4つ目は、民法です。
民法とは、私人間の権利義務関係を定める法律であり、契約のベースとなる法律です。民法はさまざまな法律の基礎に位置する「一般法」であり、他の法律や契約書での記載がない限り、私人間(企業と企業や、企業と個人、個人と個人など)の契約関係にはこの民法の規定が適用されます。
そのため、ファッション業界に限らず、すべての人、特にビジネスに携わる者は、民法の理解は不可欠といえるでしょう。
景表法
5つ目は、景表法です。景表法は、正式名称を「不当景品類及び不当表示防止法」といい、消費者の合理的かつ自主的な購入判断を歪めるような不当表示や不当な景品を規制しています。
たとえば、実際にはカシミヤの混合率が50%であるにもかかわらず、その商品を「カシミヤ100%」などとして販売した場合には、この景表法に違反します。同様に、合理的な根拠がないにもかかわらず「耐久性業界No.1」などと表記すれば、これも景表法に違反するでしょう。
景表法はメディアに掲載する広告や宣伝のみならず、店頭のディスプレイやポスターなども規制対象です。ファッション業界においては景表法の内容を正しく理解したうえで、違反しないよう注意すべきでしょう。
また、2023年10月1日からはいわゆる「ステマ」が景表法違反になることとなりました。インフルエンサーなどにPRを依頼する機会がある場合には、このステマ規制にも注意しなければなりません。
ファッションローにまつわる主な視点
ファッションローには数多くの視点が存在します。ここでは、代表的な視点として3つを解説します。
- デザインの模倣
- 商標の盗用
- ステマ規制
デザインの模倣
1つ目は、デザインの模倣です。
ファッションローにおける最大の関心事は、デザインの模倣の予防にあるといっても過言ではないでしょう。せっかく苦心して革新的なデザインを考案しても、これが他社に「ただ乗り」されてしまえば、自社が十分な利益を得る機会を逸することとなります。
そのような事態を避けるため、デザインの模倣を防ぐとともに、模倣が発生した際には厳格な法的措置をとることが検討できます。デザインの模倣を避け、模倣時における対応をスムーズなものとするためには、意匠登録を検討すべきでしょう。
商標の盗用
2つ目は、商標の盗用です。
先ほど解説したように、商標の盗用もファッション業界における重大な関心事の一つです。自社の商標が盗用されれば正当な収益を得る機会を逸するほか、模倣品が粗悪であれば自社のブランドイメージまでが失墜しかねません。商標の盗用を避けるためには、積極的な商標登録を検討すると良いでしょう。
伊藤海法律事務所の代表である伊藤海は、弁護士のほか弁理士資格も有しているため、商標登録出願や意匠登録出願についてもサポートできます。
ステマ規制
3つ目は、ステマ規制です。
2023年10月から、ステルスマーケティング(いわゆる「ステマ」)が景表法違反に該当することとなりました。消費者は広告であればある程度の誇張が含まれていると考える一方で、事業者が関与しない感想であれば誇張はないものと考えます。そのため、インフルエンサーが広告としてPRするのと個人的な感想としておすすめするのとでは、後者の方が高い効果が」得られるでしょう。
しかし、これは消費者を騙していることに他なりません。そこで、広告であることを明示しない広告を「ステマ」として、景表法で規制されることとなりました。
ここで注意すべきであるのは、ファッションブランドA社がインフルエンサーB氏にステマを依頼し、B氏がステマ行為をした場合、景表法違反となるのはファッションブランドA社であるということです。インフルエンサーが罰せられるのではありません。
また、中には企業側が広告であることを明示してのPRを依頼したにもかかわらず、インフルエンサーの独断(または、ミス)によって、結果的にステマとなる可能性もあるでしょう。その場合であっても、企業が景表法違反に問われる可能性があります。
そのため、インフルエンサーなどにPRを依頼する際は、ステマをしないことについて契約書に明記したうえで、定期的にそのPR動画などを確認するなどの対策をとる必要があるでしょう。
ファッションローに関して弁護士のサポートを受ける主なメリット
ファッションローに関して弁護士のサポートを受けることには、大きなメリットがあります。ここでは、主なメリットを4つ解説します。
- 知的財産権の的確な処理が可能となる
- 侵害時に迅速かつ的確な対応が実現できる
- 知らずに法令違反に手を染める事態を避けられる
- 契約にまつわるトラブルを避けやすくなる
知的財産権の的確な処理が可能となる
先ほど解説したように、ファッションローにおいて最も重要となるのは、知的財産権の保護や的確な処理でしょう。しかし、的確な権利獲得や権利処理には、高度な専門知識が必要です。
たとえば、「商標権の出願手続き」自体はさほど難しいものではありません。難しいのは、出願をする商標の選定や区分の検討など、出願前の戦略を練る段階です。
同様に、商標権や意匠権のライセンス契約も、インターネット上を探せばひな型などは見つかるでしょう。しかし、そのひな型が契約実態に即している可能性は低く、十分に理解しないまま流用すればむしろ自社の大切な知的財産が毀損する事態ともなりかねません。
弁護士のサポートを受けることで、知的財産の的確な保護や的確な処理が実現できます。なお、伊藤海法律事務所の代表である伊藤海は弁護士のほかに弁理士資格も有しているため、知的財産権の出願段階から総合的なリーガルサポートが可能です。
侵害時に迅速かつ的確な対応が実現できる
知的財産権が侵害された際、対処方法がわからず手をこまねいていれば、侵害行為がエスカレートしたり拡大したりして、被害が広がるおそれがあります。そのような事態を避けるため、知的財産権が侵害されたら、早期に的確な対応をすべきです。
ファッションローに強い弁護士に日ごろから相談しておくことで、侵害行為が発生した際にも、迅速かつ的確な対応が実現しやすくなります。これにより、侵害の回復がはかれるとともに、以後の侵害の抑止力ともなるでしょう。
知らずに法令違反に手を染める事態を避けられる
ファッションという華やかな業界と法律とは一見対極にも思え、法律に苦手意識を持っている人も少なくないでしょう。しかし、ファッションローを十分に理解することなくファッション業界に身を置いている場合、法令などへの理解不足などが原因で、知らず知らずに法令違反に手を染めるリスクがあります。そして、「法律を知らなかった」からといって免責されるものでもありません。
日ごろから相談できる弁護士を見つけておくことで、気になる事象が生じた際に弁護士へ相談したり意見を求めたりすることが可能となります。これにより、知らずに法令違反をする事態を避けやすくなります。
契約にまつわるトラブルを避けやすくなる
ファッション業界ではさまざまな企業や個人が密接に関係しており、契約を締結する機会も少なくないでしょう。たとえば、デザイナーと交わすデザイン委託契約、OEM先と締結するOEM契約、ファッションモデルと締結する契約、代理店と締結する代理店契約など、枚挙に暇がありません。
契約は、契約当事者間において、法律に優先して適用される取り決めです。法律の規定はどうあれ、契約書に「Aの一方的な都合で中途解約できる」と書かれていれば、A側の都合だけで一方的に解約できるのです。
そのような重大なものであるにもかかわらず、条項をよく読まないままに押印するなど、契約を軽視しているケースも少なくありません。
弁護士にサポートを依頼する場合は、契約実態に合った契約書の作成が可能となるほか、相手方から提示された契約書のレビューや交渉も任せられます。これにより、契約書にまつわるトラブルを避けやすくなります。
ファッションローに関して弁護士にサポートを受けるポイント
ファッションローに関して弁護士からより的確なサポートを受けるには、3つのポイントがあります。ここでは、3つのポイントの概要をそれぞれ解説します。
- 契約締結段階から相談する
- ファッションローや知財に強い弁護士を選ぶ
- 必要に応じて顧問契約も検討する
契約締結段階から相談する
1つ目は、契約の締結段階から相談することです。
締結済みの契約書に後から自社に不利なポイントなどが見つかったからといって、その契約を一方的に覆すことはできません。一消費者であれば消費者契約法や特定商取引法などで守られている一方で、事業者同士の契約は原則として自己責任であるためです。
そのため、契約を締結してしまってからではなく、可能な限り契約締結前に相談することをおすすめします。最終的な契約締結前であれば、条項の修正を交渉するなどの対応が可能であるためです。
ファッションローや知財に強い弁護士を選ぶ
2つ目は、ファッションローや知財に強い弁護士を選んで相談することです。
弁護士にはそれぞれ、得意とする分野があることが少なくありません。特にファッションローはやや特殊な法分野であり、弁護士によって得意・不得意が分かれやすいといえます。
また、弁護士によっては、知財を「弁理士の範疇」と考えており、やや苦手意識を持っている場合もあります。そのため、「弁護士なら誰でも良い」と考えるのではなく、ファッションローや知財に関する実績が豊富な事務所を選ぶことをおすすめします。
お困りの差は、伊藤海法律事務所へご相談ください。当事務所はファッションローを得意としているほか、代表である伊藤海は弁理士でもあるため知財面にも強みを有しています。
必要に応じて顧問契約も検討する
3つ目は、必要に応じて顧問契約の締結を検討することです。
弁護士へは、単発(スポット)でも相談・依頼できます。しかし、スポットでの依頼の場合には、原則としてその都度予約を取って相談に出向く必要があるほか、弁護士が多忙であると依頼を受けてもらえない可能性もあります。
一方で、顧問契約を締結する場合は、優先的な対応が受けられることが原則です。また、詳細なサポート内容は弁護士ごとに異なるものの、電話やメール、チャットなどでの気軽な相談が可能となることが多いでしょう。さらに、弁護士と長期的な関係を構築することで、より自社にカスタマイズされたアドバイスやサポートが受けやすくなります。
そのため、ファッションローに強く自社との相性も良いと感じる弁護士を見つけたら、顧問契約の締結も積極的に検討すると良いでしょう。
ファッションローに強い弁護士をお探しなら伊藤海法律事務所へご相談ください
ファッションローに強い弁護士をお探しの際は、伊藤海法律事務所までご相談ください。最後に、当事務所の主な特長を4つ紹介します。
- ファッション・カルチャー法務に強い
- 多様な顧問プランを設けている
- 多様な連絡手段がある
- 英文契約書にも対応している
ファッション・カルチャー法務に強い
伊藤海法律事務所は、ファッション・カルチャー法務に強みを有しています。ファッション業界における取引慣例や用語、ファッションロー関連の判例や事例などについて日々研究を重ねているため、的確なリーガルサポートを実現できます。
また、当事務所の代表である伊藤海は、弁護士のほかに弁理士資格も有しています。そのため、ファッションローの中核ともいえる知的財産の保護についても、出願する権利の選定や出願手続きのサポート段階などからのサポートが可能です。
多様な顧問プランを設けている
伊藤海法律事務所は、月額料金5.5万円(税込)のリーズナブルなプランから月額料金44万円(税込)の包括的な法務受託まで、4つの顧問契約プランを設けています。そのため、個人事業者様から上場企業様に至るまで、自社の規模やニーズ、予算に応じた過不足のないプランの選択が可能です。
多様な連絡手段がある
伊藤海法律事務所は、メールや電話のみならず、LINEやSlack、Chatworkなど多様な連絡手段を設けています。そのため、クライアント様にとって使い勝手の良いツールで連絡できます。
また、顧問契約を締結した場合、法務部のグループチャットに弁護士を追加することも可能です。これにより問題の早期段階からの関与が可能となるほか、変化の速いファッション業界においてスピーディーな対応も実現しています。
英文契約書にも対応している
ファッション業界においては、海外の企業や個人と契約を締結すべき場面も多いでしょう。そうであるにもかかわらず、弁護士が英文での契約書に対応していなければ、英文契約書に対応できる別の弁護士を探さなければなりません。
伊藤海法律事務所は英文契約書にも対応しているため、海外との取引についても一貫したサポートが可能です。
まとめ
ファッションローの概要やファッションローに含まれる代表的な法律を紹介するとともに、ファッションローについて弁護士にサポートを受けるメリットやポイントなどを解説しました。
ファッションローとは、ファッション業界に関連する法律を取りまとめた法分野です。ファッションローに含まれる代表的な法律としては、商標法や意匠法などが挙げられます。
ファッション業界においても、法律と無縁でいることはできません。せっかく素晴らしいデザインを考案したり真摯に消費者との信頼関係を構築したりしたにもかかわらず、法に対する理解不足から他社に出し抜かれたり、思わぬ違法状態に陥ったりする事態は避けたいことでしょう。
自社のブランドを適切に保護し、トラブルを避けるために、ファッションローに強い弁護士のサポートを受けることをおすすめします。
伊藤海法律事務所はファッション・カルチャー法務に強みを有しており、アパレルブランドやシューズブランド、デザイナー、セレクトショップなど、アパレル業界に数多くのクライアントを有しています。ファッションローに強い弁護士をお探しの際は、伊藤海法律事務所までまずはお気軽にご相談ください。