VTuberとして活動する人は、増加傾向にあります。

VTuberが稼ぐためのビジネスモデルはどのようになっており、どのような収益源があるのでしょうか?また、VTuberがビジネスを展開する際は、どのような点に注意する必要があるでしょうか?

今回は、VTuberのビジネスモデルや収益源などについて、インターネット法務に詳しい弁護士がわかりやすく解説します。

VTuberとは

VTuberは「バーチャルYouTuber」の略称であり、2Dや3Dのアバターをまとって活動するYouTuberを指します。当初はYouTubeが活動の場の中心となっていましたが、YouTube以外のプラットフォームで活動する場合もVTuberと呼ばれることが一般的です。

VTuberはアニメーションと違ってキャラクターを演じている演者(「中の人」といいます)がおり、中の人が誰であるのか明かされないことも少なくありません。また、複数人や企業がプロジェクト型でVTuberを作り上げている場合もあるものの、「中の人」が一人で演じているケースがほとんどです。

その意味で、アニメーションというよりはインターネット版の「着ぐるみ」に近いといえるでしょう。

VTuberが期待される3つの理由

近年、企業とのコラボレーションなどVTuberの活躍の場が広がっており、VTuberの活躍が期待されています。それはなぜなのか、考えられる主な理由を3つ解説します。

  • 動画コンテンツが身近になったから
  • SNSとの相性が良いから
  • ユーザーに親しみやすさを持ってもらえるから

動画コンテンツが身近になったから

1つ目は、高速インターネットが当たり前となり、動画のコンテンツが身近になったことです。VTuberは動画コンテンツと非常に相性が良い存在であり、企業がPRを依頼する際の選択肢となりやすくなっています。

SNSとの相性が良いから

2つ目は、SNSとの相性が良いことです。

VTuberがキャラクターとしてX(旧Twitter)などのSNSを運用することで、ファン層が広がりやすくなります。SNSで「バズる」と大きな宣伝効果が得られるため、YouTubeなどのプラットフォームとSNSでいずれも宣伝活動をしてもらうことで、企業が多くの人に自社を知ってもらいやすくなります。

ユーザーに親しみやすさを持ってもらえるから

3つ目は、ユーザーに親しみをもってもらいやすいことです。

VTuberはキャラクターの姿をしており、人物がそのまま話すよりも親しみや好感を持つ人も少なくありません。そのため、企業がVTuberにPRを依頼することで、新たな顧客層へのアピールをしやすくなります。

VTuberのビジネスモデルは?収益源6選

では、VTuberのビジネスモデルは、どのようになっているのでしょうか?ここでは、VTuberの主な収益源を6つ紹介します。

  • YouTubeなどのプラットフォームからの広告収入
  • スパチャ(投げ銭)収入
  • グッズ販売
  • いわゆる「企業案件」
  • ファンクラブ収入
  • イベント収入

YouTubeなどのプラットフォームからの広告収入

1つ目にして王道ともいえる収益源が、YouTubeなど配信プラットフォームからの広告収入です。

YouTubeによる広告収入単価は公開されていないものの、一般的には1再生あたり0.05円から0.7円程度といわれています。広告単価はジャンルによっても異なっているうえ、登録者数や再生数などが多い人気のチャンネルになると単価が高くなるようです。1再生あたりの広告収入は微々たるものであるものの、ファンが増えて再生数が増えると、まとまった収入となるでしょう。

なお、YouTubeはチャンネルの開始当初から広告収入を受け取る設定とすることはできず、チャンネルが次の要件をいずれも満たした場合にチャンネルの収益化が可能となります(2023年12月現在)。

  • チャンネル登録者数が1,000人以上であること
  • 次のいずれかの要件を満たしていること
    • 公開されている長尺動画の過去365日間における総再生時間が4,000時間以上である
    • 公開されているショート動画の過去90日間の視聴回数が1,000万回以上である

このほかに、18歳以上であることや広告掲載に適したコンテンツのガイドラインに準拠したコンテンツを作成していることなどの要件も満たさなければなりません。収益化の要件は改訂される可能性もあるため、最新情報をご確認ください。

参照元:YouTube で収益を得るには(YouTubeヘルプ)

スパチャ(投げ銭)収入

2つ目は、スーパーチャット(通称「スパチャ」)による収入です。スパチャとはいわゆる投げ銭のことであり、ライブ配信中に視聴者からお金を受け取れる機能です。これも、VTuberにとって大切な収入源となります。

視聴者としてはスパチャによって「推し」のVTuberを応援することができるほか、スパチャの額に応じて自身のコメントが長く表示されたりコメントの色が変わったりすることで、配信者であるVTuberから認識してもらいやすくなるメリットがあります。

そのため、VTuberとしてはスパチャをしてくれた視聴者にその生配信でお礼を言ったり名前を呼んだりして反応することで、視聴者にスパチャをしてもらいやすくなるでしょう。

スパチャのうち30%程度はYouTubeが受け取る手数料となり、残りの70%程度がVTuberに配分されるといわれています。スパチャを有効とするためには、チャンネルが次の要件をすべて満たすことが必要です(2023年12月現在)。

  • チャンネル登録者数が500人以上であること
  • 過去90日間でアップロードした公開動画が3本以上であること
  • 次のいずれかの要件を満たしていること
    • 公開されている長尺動画の過去365日間における総再生時間が3,000時間以上である
    • 公開されているショート動画の過去90日間の視聴回数が300万回以上である

ほかにも、18歳以上であることなどの要件を満たすことも必要です。要件は改訂される可能性もあるため、最新情報をご確認ください。

参照元:YouTube で収益を得るには(YouTubeヘルプ)

グッズ販売

3つ目は、オリジナルグッズの販売です。VTuberとして人気が出ると、グッズを購入したいとの需要が生じます。オリジナルグッズを制作して販売することで、VTuberの収入源となります。

VTuberが販売するオリジナルグッズの定番はアクリルスタンドやキーホルダー、缶バッジ、タオル、ステッカーなどが定番ですが、アイディア次第でさまざまなグッズが展開できるでしょう。

特に、自身の配信内容と合致したグッズを展開することで、ファンに購入してもらいやすくなります。近年、少数からオリジナルグッズを制作できるサービスも少なくないため、大量発注でなくともグッズを制作することが可能です。

グッズ販売は他のECサイトを設けてこれを動画内やSNSで宣伝することもできるほか、Shopifyなど指定のECサイトをYouTubeのショッピング機能に連携させることも可能です。

YouTubeのショッピング機能を使うことで視聴者がECサイトへスムーズにアクセスしやすくなり、グッズが購入される可能性を高めやすくなるでしょう。

YouTubeショッピングを使って自己の商品を販売するためのチャンネルの条件は、スパチャによって収益を得る方法と同じです。

参照元:YouTube のショッピング機能を利用する(YouTubeヘルプ)

ほかにも、次の要件を満たすことが必要です。

  • チャンネル登録者数が基準に達しているか、公式アーティスト チャンネルであること
  • チャンネルが子ども向けとして設定されておらず、子ども向けに設定された動画の数が多くないこと
  • チャンネル収益化ポリシーに違反する動画の数が多くないこと
  • ヘイトスピーチに関するコミュニティ ガイドラインの違反警告を受けていないこと

なお、グッズの制作や販売には手間がかかるため、VTuberの中の人が1人で行うことは現実的ではないでしょう。そのため、グッズ販売などを広く展開したい場合はスタッフを雇用するか、事務所に所属することが有力な選択肢となります。

いわゆる「企業案件」

4つ目は、いわゆる「企業案件」を獲得することです。企業案件とは、VTuberが企業から依頼を受けて企業とタイアップ(コラボ)をしたり、VTuberが企業の商品やサービスをPRしたりすることです。人気のあるVTuberでは企業案件の報酬は高額となることもあり、VTuberにとって大きな収益源となり得ます。

ただし、企業案件では企業との間で詳細な契約書を締結することが多く、契約に違反した場合は多額の違約金が発生する可能性があります。そのため、企業から提示された契約書にはそのまま署名や押印をするのではなく、内容を十分確認してリスクを把握したうえで締結するようにしてください。

とはいえ、契約書の文言は難解であることも多く、理解が難しいこともあるでしょう。

その場合は事前に弁護士へ相談し、契約内容を確認してもらうようにしてください。

ファンクラブ収入

5つ目は、ファンクラブ収入です。VTuberがファンクラブを開設することで、ファンクラブへの入会者から定期的な収入を得ることが可能となります。また、ファンクラブ限定でグッズを販売したりイベントを開催したりすることで、さらなる収益が得られる可能性も高くなるでしょう。

なお、ファンクラブを円滑に運営するためには、ファンクラブ開設前に規約を作り込んでおくことが必要です。ファンクラブの規約作成は、弁護士へお任せください。

イベント収入

6つ目は、イベント収入です。VTuberがイベントに出演したりイベントを主催したりすることで、イベント収入を得ることが可能となります。

なお、事務所に所属している場合は事務所主催のイベントが開催されることも多く、イベントに出演することで新たなファンを獲得できる可能性も期待できます。

VTuberの活動方法

VTuberの活動方法には、個人で活動する方法と事務所に所属する方法の2つがあります。ここでは、それぞれの概要やメリット・デメリットについて解説します。

個人で活動する

VTuberには、個人で活動している人も少なくありません。個人で活動するメリットは、次の2点です。

  • 事務所の方針などに縛られず自由な活動がしやすい
  • 収益を事務所に分配する必要がない

一方で、個人で活動する場合は、事務所に所属する場合のメリットを享受することができません。事務所に所属するメリットは次で解説します。

事務所に所属して活動する

VTuberは、事務所に所属して活動することもできます。VTuberが事務所に所属することには、次のメリットなどが挙げられます。

  • 事務所単位で企業案件が打診されることも多いため企業案件を獲得しやすい
  • 事務所がVTuberをPR・ブランディングしてくれるためファンが増えやすい
  • 事務所主催のイベントに参加することでファンが増えやすい
  • 動画の撮影や編集以外の事務作業を事務所が担ってくれることが多い
  • 外部との契約やスケジュール調整などを事務所が担ってくれる
  • 誹謗中傷やストーカーなどのトラブルが発生した際に事務所が対応してくれる

一方で、事務所に所属する場合は事務所の方針に背く活動が難しいことや、収入が事務所にも分配されることになることがデメリットです。

また、事務所のサポート範囲や収益の分配割合などは、事務所によって異なります。VTuberのキャラクターにまつわる商標権や動画の著作権が、事務所に帰属するとされていることも少なくありません。

この場合は、仮に事務所を退所することとなった場合、今後はそのキャラクターを使用することはできないうえ、チャンネルも一から作り直す必要が生じます。

そのため、事務所に所属する際はあらかじめ事務所と取り交わす契約書の内容を、よく確認してください。弁護士に契約書の内容をあらかじめ確認してもらうと良いでしょう。

VTuberビジネスを展開する際のポイント

VTuberビジネスを展開する場合、どのような点に注意する必要があるでしょうか?最後に、VTuberがビジネスを展開する際の注意点を2つ解説します。

  • 個人か事務所所属かを慎重に検討する
  • 問題発生時に弁護士に相談できる体制を構築しておく

個人か事務所所属かを慎重に検討する

1つ目は、個人で活動するのか事務所に所属するのか慎重に検討することです。

 

先ほど解説したように、VTuberが個人で活動することと事務所に所属することには、それぞれ異なるメリットとデメリットがあります。それぞれのメリットとデメリットを踏まえたうえで、将来も見据えながら自身に合った活動方法を選択しましょう。

問題発生時に弁護士に相談できる体制を構築しておく

2つ目は、相談先の弁護士を確保しておくことです。

VTuberとして活動する中で、トラブルに巻き込まれる可能性は低くありません。企業案件を受ける場合やファンクラブを解説したい場合など、契約書や規約の内容を確認すべき場面も増えることでしょう。

このような際、毎回異なる弁護士を探して依頼するよりも、同じ弁護士へ依頼したり顧問契約を締結したりしておくことで、一貫したリーガルサポートが受けやすくなります。特に、顧問契約を締結している場合は、誹謗中傷の被害に遭ったなど急いで対応すべき場面であっても、優先的に対応してもらえる可能性が高くなります。

そのため、VTuberとしてビジネスを展開する際はVTuberのビジネスモデルを熟知している弁護士を見つけ、可能であれば顧問契約を締結しておくと良いでしょう。

まとめ

VTuberのビジネスモデルや収益源について解説しました。

VTuberビジネスを始めた当初は、まとまった収益を得ることは難しいかもしれません。一方で、活動を続ける中でファンやチャンネル登録者数が増えると広告収入が増えるほか、スパチャやグッズ販売、企業案件の獲得、ファンクラブの開設、イベントへの参加などによりまとまった収益を得られる可能性が高くなります。

VTuberとして人気が出れば大きな収入を得られる可能性もあり、夢のあるビジネスであるといえるでしょう。

ただし、VTuberとして活動する中でトラブルに巻き込まれる可能性もあるほか、事業者として契約書を取り交わしたり規約を作成したりする場面も増加します。そのため、VTuberビジネスを展開する際は、VTuberのビジネスモデルやインターネット法務を熟知した弁護士へ相談できる体制を構築しておくようにしてください。

伊藤海法律事務所では、VTuberへのリーガルサポートに力を入れており、数多くの相談・サポート実績があります。VTuberビジネスを展開する中で相談できる弁護士をお探しの際や、VTuberとして活動する中で法的なトラブルが生じている際は、伊藤海法律事務所までお気軽にお問い合わせください。