YouTubeに動画を投稿すると、視聴者からコメントがつくことがあります。

しかし、嬉しい応援コメントもある一方で、誹謗中傷されてしまうこともあるでしょう。

では、YouTuberがコメントで誹謗中傷された場合、どのように対処すればよいでしょうか?

今回は、YouTubeでの誹謗中傷コメントへの対応方法などについて、誹謗中傷に詳しい弁護士が解説します。

YouTubeコメントでの誹謗中傷は少なくない

YouTubeが舞台となる誹謗中傷は少なくありません。

総務省 プラットフォームサービスに関する研究会(第36回)の資料である「インターネット上の誹謗中傷情報の流通実態に関するアンケート調査結果」によると、インターネットで誹謗中傷を見たことがあると回答した者のうち、誹謗中傷を目撃したサービスとしてYouTubeを挙げた者は28.2%でした。

YouTubeなどのSNSで誹謗中傷が多いことにはさまざまな原因が考えられるものの、匿名で書き込めることが大きな要因の1つであるといえるでしょう。

参照元:インターネット上の誹謗中傷情報の流通実態に関するアンケート調査結果(総務省)

YouTubeコメントで誹謗中傷された場合にとり得る法的措置

YouTubeのコメントで誹謗中傷された場合、どのような法的措置が検討できるのでしょうか?

実は「誹謗中傷」について、法令に明確な定義があるわけではありません。

また、「誹謗中傷をしたら〇〇の刑に処す」、「誹謗中傷をしたら損害賠償請求の対象になる」などと法令に記載されているわけでもありません。

そのため、実際に法的措置を検討する際は、実際になされた誹謗中傷の内容を各法令の要件に当てはめ、相手に問えそうな罪や損賠賠償請求の可否などを検討することとなります。

個の検討を自身で行うことは容易ではないため、早期に弁護士へご相談ください。

刑事告訴

1つ目は、相手を刑事告訴することです。

刑事告訴とは、捜査機関(警察や検察)に犯罪事実を申告し、犯人の処罰を求める旨の意思表示です。

刑事告訴の最終目的は、相手に前科をつけることとなります。

誤解をしている人も少なくありませんが、刑事告訴はあくまでも刑事の視点での話であり、たとえ相手が有罪となっても被害者に対して金銭が支払われるわけではありません。

誹謗中傷に関する刑事告訴は、警察署へ告訴状を提出する形で行うことが一般的です。

告訴状が受理されると警察によって捜査が開始され、必要に応じて相手が逮捕されます。

その後は身柄が検察に送られ、検察でも捜査がなされたうえ、起訴か不起訴かが決まります。

不起訴となった場合は相手に前科は付かず、この時点で事件は終了します。

一方、起訴がされると刑事裁判が開始され、相手の有罪・無罪や量刑などが決まります。

ただし、誹謗中傷事件では執行猶予付きの判決となることも少なくありません。

執行猶予とは、一定期間中刑の執行が猶予され、その期間をトラブルを起こすことなく過ごすことで、刑の言渡しの効力が消滅する(つまり、一定期間が過ぎることで前科が消える)制度です。

また、捜査は捜査機関に一任することとなり、被害者が希望する結論が得られるとは限らないことを理解しておく必要があります。

誹謗中傷は、次の罪などに該当する可能性があります。

  • 名誉毀損罪
  • 侮辱罪
  • 脅迫罪
  • 信用毀損罪・業務妨害罪

名誉毀損罪

名誉毀損罪とは、公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者が該当し得る罪です(刑法230条)。

ここでいう「事実」とは、「真実」という意味ではなく、嘘の内容であっても名誉毀損罪は成立し得ます。

ただし、次の3つをすべて満たす場合は、例外的に違法性が阻却されます。

  1. 公共の利害に関する事実に係るものであること
  2. その目的が専ら公益を図ることにあること
  3. 真実であることの証明があること

名誉毀損罪が成立すると、3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金に処されます。

侮辱罪

侮辱罪とは、事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者が該当し得る罪です。

侮辱罪が成立すると、1年以下の懲役もしくは禁錮もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料の対象となります(同231条)。

名誉毀損罪が具体的な事実の摘示(「違法薬物をやっている」、「不倫している」など)が要件である一方で、侮辱罪はより抽象的な表現(「ブス」、「気持ち悪い」など)であっても成立する可能性があります。

侮辱罪の法定刑は以前は拘留または科料のみでしたが、時に相手が命を絶つほどの行為に対しこれでは刑が軽すぎるとの指摘を受け、2022年7月7日より法定刑が引き上げられました。

参照元:侮辱罪の法定刑の引上げ Q&A(法務省)

脅迫罪

脅迫罪とは、相手や親族の生命、身体、自由、名誉、財産に対し害を加える旨を告知して脅迫した者が該当する罪です。

脅迫罪が成立すると、2年以下の懲役または30万円以下の罰金に処されます。

信用毀損罪・業務妨害罪

信用毀損罪や業務妨害罪とは、虚偽の風説を流布し、または偽計を用いて、人の信用を毀損し、またはその業務を妨害した者が該当する罪です。

これらの罪が成立すると、3年以下の懲役または50万円以下の罰金の対象となります(同233条)。

損害賠償請求

2つ目は、損害賠償請求です。

損害賠償請求とは、被害者が被った損害や精神的苦痛を金銭で賠償するよう、加害者に対して求めることを指します。

損害賠償請求は民事の話であり、「損害賠償請求が認められるかどうか」と「刑事上で前科がつくかどうか」は別の話です。

損害賠償請求は、弁護士を介して加害者に対して直接行うことが一般的です。

そのうえで、相手が任意に請求額を支払わない場合や相手が不誠実な態度を取る場合は、裁判上での請求に移行することとなります。

誹謗中傷で認められる損害賠償の額は、誹謗中傷の内容や被った損害の内容などによって異なります。

あらかじめ弁護士へ相談し、そのケースにおける目安となる金額を把握しておくとよいでしょう。

YouTubeで誹謗中傷の被害に遭った場合の対応の流れ

YouTubeで誹謗中傷の被害に遭った場合、どのように対応すればよいのでしょうか?

基本的な対応の流れを解説します。

  • 誹謗中傷の証拠を残す
  • 早期に弁護士へ相談する
  • 法的措置の内容を検討する
  • 発信者を特定する
  • 弁護士から相手に連絡をとる
  • 示談交渉をする
  • (損害賠償請求する場合)損害賠償請求をする
  • (刑事上の罪に問う場合)刑事告訴する

誹謗中傷の証拠を残す

自身を誹謗中傷するコメントを見つけたら、すぐにその証拠を残します。

誹謗中傷をした者が自らコメントを消したり他のユーザーからの違反報告などによってコメントが消えてしまったりすると、誹謗中傷の証拠がなくなってしまうためです。

証拠がなければ、相手を特定するための発信者情報開示請求が困難となり、法的措置をとることが事実上不可能となってしまいます。

証拠は、スクリーンショットで残すことが一般的です。

スクリーンショットでは、そのコメントの内容だけでなく、対象動画やコメントがされた時期、そしてその画面のURLが完全に掲載されるように撮影します。

誹謗中傷のコメントが複数ある場合や他のコメントとの対話形式でなされている場合は、関連するコメントがすべて掲載されるように撮影してください。

スマートフォンからではURLの表示などが不完全となることが多いため、可能な限りパソコンから撮影した方がよいでしょう。

早期に弁護士へ相談する

誹謗中傷の証拠を残したら、できるだけ早期に誹謗中傷への対応に力を入れている弁護士へ相談してください。

誹謗中傷への法的措置は、時間との勝負であるといっても過言ではありません。

そのため、1人で長く悩むのではなく、できるだけすみやかに相談するようにしてください」。

相談の際はスクリーンショットで保存した証拠を見せ、不足があれば追加で証拠を残しましょう。

法的措置の内容を検討する

弁護士と相談したうえで、相手に対してとる法的措置の内容を検討します。

損害賠償請求をするのか刑事告訴をするのか、それとも両方を前提とするのかなどです。

これらの両方の措置がとれる可能性があるケースもある一方で、誹謗中傷の内容などによってはいずれか一方の措置しか難しいこともあります。

また、両方の措置をとれば、その分だけ費用や時間が長くかかる傾向にあります。

そのため、弁護士によるアドバイスを踏まえ、どのような法的措置をとるのか検討します。

発信者を特定する

YouTubeコメントでの誹謗中傷は、投稿者が誰であるのかわからないことがほとんどです。

相手が誰かわからないと、原則として法的措置をとることはできません。

そのため、損害賠償請求や刑事告訴に先立って、相手を特定するための手続きをとる必要があります。

この点が、インターネット上での誹謗中傷への法的措置の最大の特徴の一つです。

発信者を特定するには、YouTubeを運営するGoogleに対して、コメント投稿者のIPアドレスなどの開示を請求します。

とはいえ、直接開示を求めたところで、Googleが開示に応じる可能性は高くありません。

そのため、実際は裁判所に仮処分命令を申し立てることが一般的です。

Googleから情報が開示されたら、その情報をもとに相手が接続に使用したプロバイダ(NTTやKDDIなど)に対して、契約者の住所や氏名の開示を求めます。

こちらも直接開示を請求しても応じてもらえない可能性が高いため、発信者情報開示請求訴訟の申立てが必要です。

ただし、Googleがコメント投稿者の電話番号などの情報も所有している場合は、Googleに対してこの情報の開示を求めることもあるなど、実際の流れは状況によって異なります。

このような一連の手続きを経て相手の特定をするまでには、半年から10か月程度を要することが一般的です。

弁護士から相手に連絡をとる

相手が特定できたら、弁護士からコメントの投稿者に対して連絡をとります。

弁護士へ依頼している場合は、原則として弁護士が窓口となって相手方とやりとりをします。

示談交渉をする

相手と連絡がとれたら、示談交渉を行います。

示談とは、トラブルについて裁判外で解決を図るための交渉です。

示談を成立させるには、加害者側から被害者に対し、示談金を支払うことが一般的です。

相手が誹謗中傷の事実を認め謝罪をし、納得できるだけの示談金を支払う場合は示談が成立し、この段階で事件は収束となります。

一方、相手が誠実な対応をしない場合や相手が提示する示談金が到底納得のできる金額でない場合などには交渉は決裂となり、次の段階へと移行します。

(損害賠償請求する場合)損害賠償請求をする

示談交渉が決裂した場合は、裁判上での損害賠償請求へ移行します。

裁判となった場合、損害賠償の適正額は裁判所が決定します。

(刑事上の罪に問う場合)刑事告訴する

相手を刑事上の責任に問いたい場合は、刑事告訴をします。

告訴が受理された後の捜査は捜査機関に任せることとなるため、たとえ被害者であっても捜査に関して細かな指示などはできないことが原則です。

YouTuberが誹謗中傷に対応するためのポイント

YouTuberが誹謗中傷の被害に遭った場合、対応時にはどのような点に注意する必要があるのでしょうか?

最後に、誹謗中傷への対応ポイントを4つ解説します。

  • 直接の反論は避ける
  • 弁護士のサポートを受ける
  • できるだけ早期に対応する
  • 削除請求は慎重に行う

直接の反論は避ける

YouTubeのコメント欄で誹謗中傷がなされても、直接反論することはおすすめできません。

なぜなら、直接反論をしてしまうと火に油を注ぐこととなり、誹謗中傷がエスカレートする可能性があるためです。

反論を受けた相手がコメントを削除してしまい、法的措置が困難となるリスクもあります。

また、反論をした内容によっては法的措置をとるにあたって不利となったり、反対に相手から誹謗中傷であるなどとして損賠賠償請求などがなされたりする可能性も否定できません。

弁護士のサポートを受ける

誹謗中傷への対応を自分で行うことは、容易ではありません。

誹謗中傷への法的措置には、法令や裁判手続きなどへの理解が不可欠であるためです。

たとえば、発信者情報の開示請求だけであっても、単に裁判所に所定の書類を出しさえすれば開示が認められるようなものではなく、相手による権利侵害があった旨などを法的な根拠をもとに主張する必要があります。

主張が不十分であり裁判所が開示が相当でないと判断すれば、発信者情報の開示を受けることはできません。

また、1つずつ調べて自分で対応使用とした結果、長い期間を要してしまうと、プロバイダでのログの保存期間が過ぎてしまい法的措置が事実上不可能となるおそれもあります。

できるだけ早期に対応する

誹謗中傷への法的措置を成功させるには、できるだけ早期に対応に取り掛かることがカギとなります。

なぜなら、プロバイダでは永久に情報が保存されているわけではなく、一定の期間が過ぎるとログが削除されてしまうためです。

ログの保存期間はプロバイダによって異なるものの、おおむね3か月から6か月程度とされています。

対応を悩んでいる間にログの保存期間を過ぎてしまうと、もはや発信者を特定することはできません。

そのため、誹謗中傷の被害に遭ったら、できるだけ早期に弁護士へご相談ください。

削除請求は慎重に行う

書き込まれた内容によっては、その内容をできるだけ他者の目に触れさせたくないこともあるでしょう。

その際は、コメントを削除して欲しいと考えると思います。

しかし、相手への法的措置を検討しているのであれば、削除請求は慎重に行ってください。証拠の保存が十分ではない段階でコメントが消えてしまうと、誹謗中傷の証拠が消えてしまい、法的措置が困難となるおそれがあるためです。

そのため、コメントの削除請求や違法コメントの報告は証拠を保存し、弁護士に相談したうえで行うようにしてください。

まとめ

YouTubeで誹謗中傷の被害に遭った場合、損害賠償請求や刑事告訴ができる可能性があります。

ただし、プロバイダによるログの保存期間が過ぎてしまうと、法的措置をとることが困難となります。

なぜなら、ログの保存期間が経過すると、発信者情報開示請求をしても、相手を特定するための情報の開示を受けることができなくなるためです。

そのため、YouTubeのコメントなどで誹謗中傷の被害に遭ったらすみやかにスクリーンショットを撮影したうえで、できるだけ早期に弁護士へご相談ください。

伊藤海法律事務所では、誹謗中傷への法的対応に力を入れており、これまでも多くの発信者情報開示や損害賠償請求、刑事告訴をサポートしてきた実績があります。

YouTubeで誹謗中傷の被害に遭ってお困りの際は、できるだけ早期に伊藤海法律事務所までご相談ください。

お気軽にお問い合わせください。