オンラインサロンの立ち上げには、メリットが少なくありません。
では、オンラインサロンを開設するには、どのようなメリットや注意点があるのでしょうか?また、オンラインサロンにはどのようなビジネスモデルがあるのでしょうか?
今回は、オンラインサロンのビジネスモデルについて、弁護士が詳しく解説します。
オンラインサロンとは
オンラインサロンとは、インターネット上で展開される会員制コミュニティです。多くは、月額課金制をとっており、月額料金は1,000円程度のものから数万円にのぼるものまでさまざまなものがあります。
オンラインサロンの主なビジネスモデル(収益モデル)
オンラインサロンの主催者は、どのような収益を得ているのでしょうか?ここでは、オンラインサロンの主なビジネスモデル(収益のポイント)を3つ紹介します。
- 会費収入
- 会員限定セミナーによる収入
- 物販収入
会費収入
代表的なものは、会費収入です。
オンラインサロンは月額制であることが多く、会員が支払う会費が収益となります。会員が多ければそれだけ会費収入が多くなるため、収益が安定しやすくなります。
オンラインサロンの運営を始める際は、会費の設定が一つのポイントとなるでしょう。会費が安ければ気軽に入会する人が増える可能性が見込まれる一方で、会員の質が安定しないリスクや、会員を集めても収益が上がりにくくなるリスクが生じます。
一方で、会費が高ければ会員の質が高くなりやすい(本当にそのサロンに興味のある人だけが会員となりやすい)うえ、比較的少数の会員であっても収益が安定しやすくなります。その反面、会費が高いと会員が集まりづらく、軌道に乗せるまでに時間がかかる可能性が高くなります。
会員限定セミナーによる収入
2つ目は、会員限定セミナーやイベントによる収益です。オンラインサロンの主催者が、会員向けにセミナーやイベントを開催することがあります。
イベントの内容としては、主催者や主催者が集めた知識人が知識やノウハウを提供するセミナーのほか、会員同士の交流を目的とした懇親会、会員同士が知識を提供し合う勉強会、これらのハイブリット型のものなど、さまざまなものが検討できます。
セミナーやイベントの参加料を別途徴収することで、これも重要な収入源となります。
ただし、オンラインサロン自体が有料であるにもかかわらず、オンラインサロンが有料セミナーへの誘導としての役割しか果たしていなければ、よほど唯一無二の場や知識を提供しているのでない限り、会員が離れてしまいかねません。
そのため、オンラインサロンのビジネスモデルを設計する際は、会費の範囲内で会員に提供するサービスと、会費とは別料金で提供するサービスとの線引きやバランスを十分検討しておく必要があるでしょう。
物販収入
3つ目は、物販収入です。
主催者自身にファンがついている場合や、サロンへの帰属意識が高い会員が多い場合や、限定グッズを販売することで収益を上げる道があります。
これは特に、次で紹介する「ファンクラブ型」との相性がよいでしょう。
オンラインサロンの4つの型
オンラインサロンは、その目的によって主に4つの型に分類できます。
- ファンクラブ型
- スキルシェア型
- ユーザーコミュニティ型
- テーマ型
もちろん、明確な線引きが難しいものや、複数の型に該当するものも少なくないでしょう。しかし、自身が運営するオンラインサロンがどの型に該当するかによって、会費の設定や会員に提供するサービスの内容、運営方法、規約の内容などが異なってきます。
そのため、オンラインサロンのビジネスモデルを組み立てる際は、自身が立ち上げたいオンラインサロンがどの型に該当しそうかあらかじめ検討しておくとよいでしょう。
ファンクラブ型
1つ目は、ファンクラブ型です。
ファンクラブ型の場合、一定以上ファンがついているアーティストや芸能人の存在が前提となります。この型の場合、会員の主な目的はそのアーティスト等を応援することや、サロン内で限定公開されるそのアーティスト等の情報を得ること、アーティスト等が主催するイベントに優先的に参加する権利を得ることなどであることが多いでしょう。
また、同じアーティスト等を応援するファン同士で交流をすることが、目的の一つとなることもあります。
スキルシェア型
2つ目は、スキルシェア型です。
スキルシェア型とは、主に主催者が有する知識やノウハウを、会員と共有するタイプのオンラインサロンです。一方的に主催者がノウハウ等を提供するオンラインセミナーやメールマガジンなどとは異なり、会員同士も知識やノウハウをシェアできることが、スキルシェア型のオンラインサロンの特徴です。
会員同士もスキルを提供したり、主催者から学んだノウハウ等を実践した結果をシェアしたりすることで、コミュニティとしての価値が高くなります。
ユーザーコミュニティ型
3つ目は、ユーザーコミュニティ型です。
ユーザーコミュニティ型とは、ある企業や商品、店舗のファンが集まるオンラインサロンです。有名なものでは、カゴメ株式会社が運営する「&KAGOME」などが挙げられます。
自社や自社製品のファンが集まる場をオンラインで提供することで、ファンがより自社製品に愛着を持ちやすくなります。また、商品開発時にオンラインサロンの会員を聞くなど、企業がファンの「生の声」を聞きやすくなる効果も期待できます。
この型の場合、他のオンラインサロンとは異なり、会費を無償とすることも少なくありません。
テーマ型
4つ目は、テーマ型です。
テーマ型とは、共通のテーマを掘り下げたりプロジェクトを進行したりすることを目的としたオンラインサロンです。この型は、クラウドファンディングと合わせて立ち上げられることも少なくありません。
クラウドファンディングを立ち上げた人や初期の賛同者がオンラインサロンを立ち上げ、その後はサロンの会員と情報を交換したり意見を募ったりしてプロジェクトの完成を目指します。
オンラインサロンビジネスを立ち上げるメリット
オンラインサロンを立ち上げることには、どのようなメリットがあるのでしょうか?ここでは、オンラインサロンを運営する主なメリットを3つ解説します。
- 会員獲得に成功すれば継続的な収入が得られる
- ファンの囲い込みによる収益化がしやすくなる
- 副業として取り組みやすい
会員獲得に成功すれば継続的な収入が得られる
1つ目は、会員獲得に成功することで、継続的な収入を得られる点です。
オンラインサロンはサブスクリプション型であることが多く、一度加入すると、会員が解約手続きをとるまで継続課金がなされることが一般的です。そのため、毎月新たに新規顧客へ商品やサービスを販売することと比較して、ビジネスが安定しやすくなります。
先の収支が予想しやすくなることから、たとえばオンラインサロンにまつわる事務作業を依頼する従業員や委託先を増やすなどの投資も計画しやすくなるでしょう。また、会員の離脱を防ぎつつ新規会員を増やすことで安定的に得られる収入が増えるシンプルな収益構造であることから、ビジネスの成長が見えやすいこともメリットです。
ファンの囲い込みによる収益化がしやすくなる
2つ目は、オンラインサロンにファンを囲い込むことで、収益化がしやすくなることです。
単発で商品を購入してもらう場合、顧客の顔は見えにくい傾向にあります。また、購入者同士のコミュニケーションも生じにくいでしょう。そのため、ふとしたきっかけで簡単に購買されなくなる可能性があります。
一方、オンラインサロン内にファンを囲い込むことができれば、効率的なマーケティングがしやすくなります。オンラインサロンの規模がある程度大きくなっていれば、オンラインサロン内でのみ商品やサービスを案内するだけでも、一定程度の売り上げが見込めるかもしれません。
また、新商品をまずオンラインサロン内で販売するなど、テストマーケティングもしやすくなるでしょう。さらに、オンラインサロン内でファン同士のコミュニケーションが生じることでそのコミュニティ自体に価値を感じる会員が増え、簡単に離脱されにくくなることもメリットです。
副業として取り組みやすい
3つ目は、副業として比較的取り組みやすいビジネスであることです。
文字通り、オンラインサロンはオンラインで完結することも多く、ファンがいるか、もしくは一定以上の人が求める知識や「場」を提供することさえできれば副業であっても取り組むことが可能です。
また、本業としてビジネスを展開している者がオンラインサロンを始めることで、オンラインサロンの会員が本業の顧客になってくれたり、反対に本業の顧客がオンラインサロンの会員になってくれたりするなどの相乗効果も期待できます。
相乗効果を最大限に発揮させるには、あらかじめビジネスモデルを練り込んでおく必要があるでしょう。
オンラインサロンをビジネスとして成功させるポイント
オンラインサロンをビジネスとして成功させるには、どのようなポイントを踏まえればよいのでしょうか?ここでは、オンラインサロンをビジネスとして成功させるポイントを2つ解説します。
- 継続的に価値を提供する
- 会員同士がコミュニケーションできる場を提供する
継続的に価値を提供する
オンラインサロンの会員は、継続的に課金しています。そのため、入会当初にだけ価値を感じてもらうのではなく、継続的に価値を感じてもらうための工夫が必要です。
会員に継続課金する価値がないと判断されてしまえば、解約率が高くなります。解約率が高くなると常に新規会員を募る必要があり、広告費が嵩んだりオンラインサロン会員に価値を提供するために割く時間が取りづらくなったりして、負のサイクルにはまってしまうおそれがあります。
会員同士がコミュニケーションできる場を提供する
オンラインサロンの会員に提供する価値は、何も主催者が提供する知識だけではありません。むしろ、主催者だけが価値を提供し続けることは容易ではなく、知識の枯渇や陳腐化と同時にオンラインサロンの価値が低下するリスクが高くなります。
そこで、オンラインサロンの価値を主催者だけで提供しようと考えるのではなく、サロンが提供する会員同士のコミュニケーションの場も価値の一つと考えるとよいでしょう。会員同士がスムーズかつ健全にコミュニケーションが取れる場を提供することで「場」としての価値が高まり、オンラインサロンの継続率を高める効果が期待できます。
オンラインサロンのビジネスモデルを検討する際の注意点
最後に、オンラインサロンのビジネスモデルを検討する際の注意点を4つ解説します。
- 投資できるリソースを検討する
- 適切な価格を設定する
- 規約を作り込む
- 法令に違反しないか入念に確認する
投資できるリソースを検討する
1つ目は、オンラインサロンの維持に割くことのできるリソースを、あらかじめ検討しておくことです。
オンラインサロンは、決して「楽に稼げる」ビジネスモデルではありません。多数の者に入会してもらい、かつ会員数を維持していくには、それなりの労力と工夫が必要です。また、最初に大風呂敷を広げてしまうと、オンラインサロンに割ける時間が減少した際に立ち行かなくなるリスクが高くなります。
そのため、立ち上げ当初にオンラインサロンに投資できるリソースを検討し、どのようなコンテンツを発信しどのようなコンセプトで運営していくのか十分に検討しておくことをおすすめします。
適切な価格を設定する
2つ目は、適切な価格設定をすることです。
特にありがちな失敗としては、会費を安く設定しすぎてしまうことです。会費を途中から引き下げることは比較的容易である一方で、すでに会員がある程度いる状態から会費を引き上げることは容易ではありません。せっかく会員数が増えても会費が安すぎれば、十分な収益が得られず、価格設定を後悔してしまう事態となりかねないでしょう。
そのため、オンラインサロンを立ち上げる際は会費をいくらにするのか、入念に検討することをおすすめします。
規約を作り込む
3つ目は、オンラインサロンを開設する前に規約を作り込むことです。
オンラインサロンに規約がなければ、民法などの法令がそのまま適用されます。しかし、実際にオンラインサロンを運営する中では、法令だけでは不十分です。
たとえば、オンラインサロンの他の会員を自身のビジネスに勧誘をしたり、しきりにデートに誘ったりする会員が現れた場合、サロンの運営者としては退会させたいことでしょう。そのような会員を退会させなければ、オンラインサロン内の秩序が乱れたり、他の善良な会員の退会が増加したりするおそれがあるためです。
しかし、他の会員に対するビジネスの勧誘やデートへの誘いが、直ちに違法といえるわけではありません。そのため、規約がなければ強制的に退会させることは困難でしょう。
また、強制的に退会させれば相手がその行為に対して異議を唱え、法的なトラブルに発展するおそれもあります。
一方で、オンラインサロンの規約を作り、そこでサロン内で禁止する行為や禁止行為に違反した場合の措置(強制退会など)を定めておくことで、迷惑行為をした者をサロンから退会させやすくなります。また、規約内で禁止行為を定めておくことで、迷惑行為の抑止力としての効果も期待できます。
ただし、オンラインサロンの規約を定める際は法令に違反しないよう注意する必要があり、自分で作成することは容易ではありません。そのため、オンラインサロンの規約を作成する際は、弁護士のサポートを受けることをおすすめします。
法令に違反しないか入念に確認する
4つ目は、オンラインサロンのビジネスモデルが法令に違反していないかどうか入念に確認することです。
たとえば、株式投資やFXに関する知識を提供するオンラインサロンは金融商品取引法上の投資助言業にあたる可能性があり、無登録で行えば違法となるおそれがあります。また、オンラインサロン上で弁護士でない者が法律相談を受けることは、弁護士法に違反する可能性が高いでしょう。
このように、仮にニーズがありそうな内容であったとしても、安易に行ってしまうと法令に違反するおそれがあります。そのため、オンラインサロンのビジネスモデルを検討する際はあらかじめ弁護士へ相談し、法令違反とならないことを確認しておくことをおすすめします。
まとめ
オンラインサロンのビジネスモデルについて解説しました。
オンラインサロンの運営には、メリットが少なくありません。特に、自身でビジネスを営んでいる者がオンラインサロンを運営することで、相乗効果も期待できるでしょう。
しかし、オンラインサロンの運営には注意点もあります。オンラインサロンの会員を維持するためには価値を提供し続ける工夫が必要であるほか、規約を作っていなければトラブル発生時に対応が難しくなるかもしれません。
また、オンラインサロンで行いたい内容によっては法令に違反する可能性もあるため、あらかじめ弁護士へ相談するのがおすすめです。
伊藤海法律事務所ではオンラインサロン運営者のサポートに力を入れており、数多くの支援実績や顧問実績があります。オンラインサロンの立ち上げをご検討の際や、オンラインサロンで行おうとしているビジネスモデルが法令違反となっていないか確認して欲しい場合などには、伊藤海法律事務所までお気軽にご相談ください。