ゲーム制作の委託にあたっては、著作権の処理や修正対応など取り決めるべき事項が数多く発生します。そのため、必ず契約書を作成し、双方が契約内容に合意したうえで開発に取り掛かるべきでしょう。
では、ゲーム制作の委託契約書は、どのようなポイントを踏まえて作成すればよいのでしょうか?また、ゲーム制作の委託契約書に不備があった場合、どのようなトラブルが生じ得るでしょうか?今回は、ゲーム制作の委託契約の概要や契約に不備があった場合に生じ得るトラブル、ゲーム制作の委託契約に際して弁護士にサポートを受けるメリットなどについてくわしく解説します。
なお、この記事ではゲーム制作を委託する企業を「委託者」、ゲーム制作を請け負う者を「受託者」と表記します。
当事務所(伊藤海法律事務所)はカルチャー・テクノロジー法務に強みを有しており、ゲームの制作の委託契約についても豊富なサポート実績を有しています。ゲーム制作に関する契約について相談できる弁護士をお探しの際は、伊藤海法律事務所までお気軽にお問い合わせください。
ゲーム制作の委託契約とは
ゲーム制作の委託契約とは、ゲームの制作を第三者に委託する際に締結する契約です。ゲーム制作では、開発業務の一部を他の企業やフリーランスなどに委託することも少なくありません。
ゲーム制作の委託契約は完成が目的とされることが多いため、民法上の「請負」にあたる場合が多いでしょう。請負とは当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって効力を生ずる契約です(民法632条)。
請負契約の原則的な内容は民法に規定されているものの、当事者間の契約によってこれに修正を加えたり、民法には定めのない事項を新たに定めたりすることができます。また、契約書を取り交わすことで委託した業務の内容が明確となり、齟齬が生じづらくなります。
ゲーム制作の委託契約を締結しようとする際は、伊藤海法律事務所までご相談ください。
ゲーム開発委託契約書に不備があった場合に生じ得る主なトラブル
ゲームの開発委託契約を取り交わさなかったり、契約内容に不備があったりした場合、これがもとでトラブルが生じるおそれがあります。ここでは、ゲーム制作で生じやすい主なトラブルを紹介します。
- 修正対応に関するトラブル
- 第三者の権利侵害時の責任の所在に関するトラブル
- 著作権の所在に関するトラブル
- 中途解約時の清算にまつわるトラブル
修正対応に関するトラブル
1つ目は、修正対応に関するトラブルです。
受託者からの納品物が委託者にとって納得のいかないものであった場合、委託者としては追加料金を支払うことなく修正に応じてほしいと考えます。一方、受託者としてはすでに納品しているのであり、修正対応をするのであれば追加料金を支払ってほしいと考えるでしょう。
ゲームなどのコンテンツ制作では、このようなトラブルは少なくありません。事前に契約書を取り交わし、契約によって委託者が求める仕様をできる限り明確にしておくことで、このようなトラブルを避けやすくなります。
仕様が明確である場合、納品物が仕様に適合していないのであれば「仕事の完成」には至っていないため、追加料金を支払うことなく修正対応を求めることが可能です。一方で、仕様に適合していないとまでは言えないのであれば、そもそもの委託者側の定義に問題があったと考え、追加料金の支払いによって修正対応を依頼することになります。
第三者の権利侵害時の責任の所在に関するトラブル
2つ目は、第三者の権利侵害が判明した際の、責任の所在にまつわるトラブルです。
中には、受託者から納品されたコンテンツが、他者の知的財産権を侵害している場合があります。このような場合には、権利者からの差止請求や損害賠償請求がなされ、一義的には委託者が責任を負うこととなるでしょう。そのうえで、これらの損害の賠償を受託者に請求できるか否かが問題となります。
契約書の中に表明保証の条項を設けることで、このような場合の責任の所在が明確となり、スムーズな解決をはかりやすくなります。表明保証とは、受託者が納品物について第三者の権利を侵害していない旨を保証する条項です。
著作権の所在に関するトラブル
3つ目は、著作権の所在に関するトラブルです。
契約書で特に定めがない場合、著作権は著作物を創作した著作者に帰属します。開発の対価を支払った側に、自動的に帰属するのではありません。そのため、受託者に著作権が帰属する余地は大いにあり、著作権の所在をめぐってトラブルとなる可能性があるでしょう。
ゲーム制作の契約書で成果物の著作権の帰属先を明確に定めておくことで、このようなトラブルを防ぎやすくなります。
中途解約時の清算にまつわるトラブル
4つ目は、中途解約時の清算にまつわるトラブルです。
ゲーム制作は、途中頓挫することもあります。途中頓挫の原因はさまざまであり、受託者の義務違反や職務放棄などによる場合もあれば、委託者側の事業方針の変更などによる場合もあるでしょう。
途中頓挫した場合、その時点までの報酬の支払いの有無や報酬額の算定方法などについてトラブルとなる可能性があります。契約書で、途中頓挫の原因ごとの処理方法を定めておくことで、このようなトラブルを避けやすくなります。
ゲームの制作委託契約書の主な条項とポイント
ゲーム制作の委託契約には、どのような条項を盛り込めばよいのでしょうか?ここでは、主な条項とポイントを解説します。
- 委託する業務の内容・範囲
- 納品方法・納期
- 検収
- 契約不適合責任
- 報酬額と支払い時期
- 知的財産権の帰属
- 再委託
- 表明保証
- 第三者からのクレーム処理
- 中途解約時の清算
なお、ここで解説するのは一例であり、盛り込むべき条項や注意すべきポイントは状況によって異なります。実際にゲーム制作の委託契約を締結しようとする際は、無理に自社だけで条項を検討するのではなく、弁護士のサポートを受けるとよいでしょう。お困りの際は、伊藤海法律事務所までご相談ください。
委託する業務の内容・範囲
ゲーム制作の委託契約では、委託する業務の内容と範囲を定めます。ここでは、仕様を可能な限り詳細に定めるべきでしょう。仕様があいまいであれば、後ほど解説する「契約不適合責任」の追及が困難となるためです。
納品方法・納期
ゲーム制作の委託契約では、納品方法と納期を定めます。いつ、どのような方法で納品すべきであるのか、明確に定めましょう。
検収
ゲーム制作の委託では、納品をさせて終わりではなく、納品後に検収をするケースがほとんどです。検収ではその納品物が仕様に定めた条件を満たしているか否かが確認され、検収に合格した場合に受託者が契約の義務を履行したこととなります。
契約書では、検収のプロセスと期限も定めておきましょう。一定の期限を定めたうえで、その期間内に委託者側から合否の通知がない場合には、合格したものとみなすことが一般的です。
契約不適合責任
契約不適合責任とは、納品物が契約内容(つまり、仕様)に適合していなかった場合に、受託者が負う責任です。ゲーム制作の委託契約では、委託者は損害賠償などではなく、報酬内での修正対応を求めたいと考える場合が多いでしょう。
ここでは、契約不適合があった場合に委託者が請求できる対応(報酬内での修正など)を定めるほか、契約不適合責任を追及できる期間などを定めます。委託者としては、この期間は長い方が望ましいでしょう。一方で、受託者としてはこの期間を短縮したいと考えることが一般的です。
報酬額と支払い時期
ゲーム制作の委託契約では、報酬額や支払い時期、支払い方法などを定めます。ゲーム制作は長期に及ぶことも多いため、契約締結時や制作の途上で報酬の一部を支払うとする場合もあります。
知的財産権の帰属
先ほど解説したように、ゲーム制作の委託契約では知的財産権の帰属についてトラブルとなるケースが少なくありません。認識の齟齬からトラブルとなる事態を避けるため、成果物の知的財産権の帰属先を明確にしておきましょう。
再委託
ゲーム制作の委託契約は請負契約であることが多く、民法の規定によれば、請負契約での再委託は受託者の判断で自由に行えます。
しかし、特にフリーランスなどへの委託である場合、委託者は「その人」に任せたのであって、再委託を禁止したい場合もあるでしょう。その場合には、契約書の中で再委託の禁止や、再委託をしたい場合には事前に委託者の許可を受けるべきことなどを明確に定める必要があります。
表明保証
先ほど解説したように、制作したゲームが第三者の知的財産権を侵害する場合があります。この場合に備え、第三者の権利を侵害していない旨を受託者に保証させる条項を設けます。
委託者としては、表明保証の範囲を広く取り、第三者の権利侵害を一切していない旨を保証させたいことでしょう。しかし、登録制度をとっている商標権などとは異なり著作権は原則として登録されておらず、第三者の権利をすべて調べきることは現実的ではありません。
そのため、受託者としては、「受託者が知り得る限り」など保証に一定の制限を設けることを検討・交渉すべきでしょう。
第三者からのクレーム処理
ゲーム制作の委託契約では、第三者から権利侵害を指摘された際に、そのクレーム処理を委託者と受託者のいずれが負うかについて定めます。それぞれが個々に対応すれば対応に矛盾が生じ、トラブルを大きくするおそれもあるためです。
権利侵害に関するクレーム処理は原則として受託者が行う一方で、委託者が提供した素材などが原因である場合には例外的に委託者が対応する旨を定めることが多いでしょう。
中途解約時の清算
ゲーム制作の委託契約が中途解約となった場合に備え、清算金の計算方法などを定めます。清算金の額は、制作のステップや区分ごとに定めることが多いでしょう。
なお、単に中途解約時の清算金だけを定めた場合、委託者都合による場合のみならず、受託者都合による解約の場合にも清算金の支払いが発生することとなります。委託者としてこれを避けたい場合には、受託者の契約違反による場合には清算金を支払わない旨の定めを検討します。
ゲームの制作委託契約に関して弁護士のサポートを受けるメリット
ゲーム制作の委託契約を締結しようとする際は、弁護士のサポートを受けることをおすすめします。ここでは、弁護士にサポートを依頼する主なメリットを4つ紹介します。
- 実態に合った的確な契約書が作成できる
- 自社に有利な条項を盛り込みやすくなる
- 紛争発生から「逆算」をした条項の検討が可能となる
- トラブル発生時の相談がスムーズとなる
ゲームの制作委託契約の締結について相談できる弁護士をお探しの際は、伊藤海法律事務所までお問い合わせください。当事務所はカルチャー法務やテクノロジー法務に特化しており、ゲーム制作に関する契約についても豊富なサポート実績を有しています。
実態に合った的確な契約書が作成できる
ゲーム制作の委託契約書は、インターネットで検索すればひな型などが見つかるかもしれません。しかし、ひな型はあくまでもモデルとなる一定の事例を前提としたものであり、実際の契約内容がこれに合致している可能性は限りなく低いと言えます。
実態に合っていない契約書を取り交わしてしまうと、トラブルの原因となりかねません。そのため、ひな型をそのまま流用することは避けるべきでしょう。また、ひな型を実態に即して作り変えようにも、これにも法令に関する知識が必要であり、容易ではありません。ひな型に中途半端に手を入れれば条項ごとの整合性が取れなくなったり、無効となる条項が生じたりするおそれがあります。
弁護士にサポートを依頼することで、契約実態に即した的確な契約書の作成が可能となります。
自社に有利な条項を盛り込みやすくなる
契約書の「最適解」は、1つではありません。料金の支払い時期一つをとっても、委託者としては遅い方がよい一方で、受託者としては早いほうがよいでしょう。また、契約違反が生じた際、受託者としては事前に催告を受け是正する機会が欲しいと考える一方で、委託者としては即座に契約を解除して損害賠償請求をしたいと考えるかもしれません。このように、契約書の望ましい内容は、どちらの側に立つかによって異なります。
とはいえ、契約条項の意味を正しく理解できていなければ、自社に有利な条項を検討することさえ困難です。また、明らかに自社だけに有利な条項ばかりを盛り込めば、交渉が決裂するおそれも高くなるでしょう。
弁護士にサポートを依頼することで、契約書全体のバランスに配慮しつつ、自社に有利な条項を盛り込みやすくなります。
紛争発生から「逆算」をした条項の検討が可能となる
弁護士は、紛争が発生してから関与するケースも少なくありません。紛争解決をはかる中で、「契約書にこのような条項が入っていたら、もう少しスムーズに解決できた」と感じる機会も数多く存在します。
そのため、弁護士に契約書の作成やレビューを依頼することで、その契約類型において起こりがちなトラブルから「逆算」をして、万が一の際にスムーズかつ有利な解決をはかるための条項を盛り込むことが可能となります。
トラブル発生時の相談がスムーズとなる
契約締結の段階から弁護士にサポートを受けておくことで、万が一トラブルが発生した際の相談がスムーズとなります。契約締結時にサポートをした弁護士は契約内容や契約の背景などを理解しているためです。
また、弁護士が多忙な時期であっても、自身がサポートをした契約にまつわるトラブルであれば、優先的に対応してもらえる可能性もあるでしょう。
ゲームの開発委託契約書の作成やレビューは伊藤海法律事務所にお任せください
ゲームの開発委託契約書の作成やレビューは、伊藤海法律事務所にお任せください。最後に、当事務所の主な特長を5つ紹介します。
- カルチャー・エンターテインメント法務やテクノロジー法務に特化している
- 弁理士資格も有しており的確な知財保護が可能である
- 英文契約書にも対応可能である
- ChatworkやSlack、LINEなどさまざまなツールでのコンタクトが可能である
- ご希望に応じた多様な顧問プランを用意している
カルチャー・エンターテインメント法務やテクノロジー法務に特化している
当事務所は、カルチャー・エンターテインメント法務やテクノロジー法務に特化しています。ゲームの制作委託にまつわるリーガルサポート実績も豊富であり、契約背景や発生しやすい紛争、実際の判例・事例なども踏まえた的確な支援を実現しています。
弁理士資格も有しており的確な知財保護が可能である
ゲーム制作では、著作権の帰属や商標登録など、知的財産にまつわる問題も発生しやすいといえます。当事務所の代表・伊藤海は弁理士資格も有しており、弁護士・弁理士の両方の視点から的確な知財保護をはかります。
英文契約書にも対応可能である
ゲーム制作にあたっては、海外の企業や個人との契約が必要となる場面もあるでしょう。当事務所は英文契約書にも対応しているため、海外との契約についても一貫したサポートが可能です。
ChatworkやSlack、LINEなどさまざまなツールでのコンタクトが可能である
当事務所はChatworkやSlack、LINEなど多様な連絡ツールに対応しており、スピーディーな対応を実現しています。また、顧問契約を締結いただいた場合には法務部のグループチャットへの参加も可能となり、より早期の段階から気軽にご相談いただける体制を実現しています。
ご希望に応じた多様な顧問プランを用意している
当事務所は、クライアント様の規模やニーズに応えられるよう、4種類の顧問プランを用意しています。そのため、フリーランスから上場企業まで、多様なステージの事業者様にご契約いただいています。
まとめ
ゲーム制作の委託契約の概要や契約書で定めるべき主な条項、ゲーム制作委託契約で生じやすいトラブルなどを解説しました。
ゲーム制作委託契約では、修正への対応や知的財産権の帰属などについてトラブルが生じやすいといえます。トラブルの発生を避け、またトラブルが発生した際にもスムーズな解決がはかれるよう、ゲーム制作を委託する際は契約内容を慎重に検討すべきでしょう。弁護士のサポートを受けることで契約実態に即した契約書を作成しやすくなり、万が一トラブルが発生した際にも自社を守ることが可能となります。
伊藤海法律事務所はカルチャー・エンターテインメント法務やテクノロジー法務に特化しており、ゲーム制作の委託契約についても豊富なサポート実績を有しています。ゲーム制作の委託に関する契約締結でお困りの際は、伊藤海法律事務所までお気軽にご相談ください。