モデルを撮影する場合には、モデルとの間であらかじめ契約書を交わしておくことをおすすめします。
では、撮影するモデルと取り交わす契約書には、どのような事項を盛り込めばよいのでしょうか?また、モデルと交わす契約書に不備があった場合、どのようなトラブルが生じる可能性があるのでしょうか?
今回は、写真や映像を撮影するモデルとの間で取り交わす契約書に盛り込むべき内容や不備があった場合に生じ得るトラブルなどについて、弁護士がくわしく解説します。
なお、当法律事務所「伊藤海法律事務所」は芸能・エンタメ法務に特化しており、モデル撮影の契約書の作成に関するサポートも可能です。モデル撮影の契約書についてお困りの際は、伊藤海法律事務所までご相談ください。
撮影するモデルとの間で交わす契約書とは
撮影するモデルと取り交わす契約書とは、写真や動画を撮影するにあたって被写体となるモデルとの間で締結する契約書です。モデル側との後のトラブルを避けるため、撮影が有償であるか無償であるかを問わず、あらかじめ契約書を交わしておくべきでしょう。
契約書にはモデルが撮影を許諾していることだけではなく、その写真や動画の用途についてモデルが許諾していることなども盛り込むことが基本です。契約書に撮影の同意についてしか記載されていないと、その後その写真や動画を広告などに使用するにあたって、「撮影は同意したが広告への使用は同意していない」などと主張されトラブルとなる可能性があるためです。
撮影モデルと締結する契約書に盛り込むべき内容
撮影するモデルと締結する契約書には、どのような内容を盛り込めばよいのでしょうか?ここでは、一般的な内容を解説します。
- 撮影とその撮影した写真・動画の使用についてモデルが承諾している旨
- 撮影を承諾する日時・場所の特定
- 報酬額・支払い方法
- モデルが知的財産権を主張しない旨
- 写真・動画の編集への同意
- 免責事項
- モデルのイメージ保持に関する誓約
なお、実際に契約書に盛り込むべき内容は、モデル撮影をする目的などによって変動します。契約書の内容が実態に即していないと、トラブルの原因となりかねません。実際の撮影で使用する契約書の作成をご希望の際は、伊藤海法律事務所までご相談ください。
撮影とその撮影した写真・動画の使用についてモデルが承諾している旨
契約書には、肖像の撮影を許諾していることに加え、その撮影した写真や動画の用途を明記したうえで、その用途での使用についてモデルが承諾していることを記載します。
写真や動画の撮影は撮影自体が目的であることはほとんどなく、その後何らかの使用をすることが目的であるはずです。「撮影は許諾したが、その用途での使用は許諾していない」などと主張される事態を避けるため、契約書では用途について明記しておきましょう。
撮影を承諾する日時・場所の特定
契約書では、撮影をする日時や場所を記載します。たとえば、「〇年〇月〇日の〇時から〇時まで、当社スタジオにて撮影する」などです。モデルが撮影を許諾したからといって、当然ながら「いつでも、どこでも」撮影してよいというわけではないためです。
なお、同じモデルに複数の案件で撮影をお願いすることもあるでしょう。日時などを特定しておくことで、一部の撮影に関してトラブルが生じた際などにも、そのトラブルとなっている案件についての契約がどれであるのか把握しやすくなります。
報酬額・支払い方法
契約書には、報酬の有無や支払い方法、支払い時期などを明記します。なお、報酬は「何についての報酬であるか」について齟齬が生じないよう明確にしておきましょう。
撮影する側としては、「撮影からその写真の公開までの一連の報酬」であるとの認識である一方で、モデル側が「これは撮影の報酬であり、公開時には別途報酬の交渉をする」と認識している可能性もあるためです。
モデルが知的財産権を主張しない旨
契約書には、モデルが知的財産権を主張しない旨の記載を盛り込むとよいでしょう。
前提として、通常の写真や動画は、たとえ人物が被写体であっても、モデル側に著作権などは発生しません。カメラマンやそのカメラマンが所属している会社など、撮影者側に著作権が発生します。
ただし、なかにはモデル側に著作権が発生すると勘違いしているケースもあるため、トラブルを避けるためには規定を設けておくとよいでしょう。
また、モデルがポーズを提案したからといって、ポーズについて著作権が発生する可能性は低い一方で、モデルが自身で考案したダンスをしている動画や話している動画である場合、そのダンスや話の内容についてモデル側に著作権が発生する可能性はゼロではありません。この場合にも、後のトラブルを避けるため、著作権を主張しない旨の規定を盛り込んでおくと安心です。
写真・動画の編集への同意
商用であれば撮影した写真や動画をそのまま表に出すケースは稀であり、何らかの編集やレタッチをすることがほとんどでしょう。これについてモデル側から苦言を呈されることを避けるため、契約書には写真や動画の編集への同意条項盛り込みます。
なお、編集の同意を得たからといって、常識の範囲を超える編集までが無制限に許されるわけではありません。CMなどの演出上、極端な編集を加える可能性があるのであれば事前にその旨をモデル側に伝え、事前に承諾を得ておくべきでしょう。
免責事項
契約書には、免責事項を記載します。免責事項としては、使用方法にクレームを入れない旨や、仮に撮影した写真や動画が使用されなかった場合でもクレームを入れない旨などを記載することが多いでしょう。
モデルのイメージ保持に関する誓約
モデルが何らかの問題を起こした場合、そのモデルを採用している企業のイメージにも傷がつくおそれがあります。そこで、たとえばモデル側に「犯罪行為を行っていない」旨を確約させるなどイメージ保持に関する条項を設けることが検討できます。
このような条項を設けておくことで、万が一モデルが過去の犯罪行為を隠しておりそれが明るみに出た場合、損害賠償請求をするなどの対応がしやすくなります。
モデル撮影の契約書に不備があった場合に生じ得るトラブル
モデル撮影の契約書に万が一不備があった場合、どのようなトラブルが生じ得るのでしょうか?ここでは、生じる可能性のある主なトラブルを3つ紹介します。
- モデルから「想定外の用途で使用された」などと主張される
- モデルから編集への苦情が申し入れられる
- 後からモデル側の問題が発覚したものの対応が困難となる
モデルから「想定外の用途で使用された」などと主張される
契約書に不備があり、撮影した写真や動画の用途が明確となっていなかった場合、モデル側から「想定外の用途で使用された」などと主張されトラブルとなる可能性があります。具体的には、使用をやめることを求める差止請求がなされる可能性があるほか、追加報酬の支払いや損害賠償などが求められる可能性があるでしょう。
このような事態を避けるため、契約書では撮影した動画や写真の用途についてできるだけ明確に定めておく必要があります。
モデルから編集への苦情が申し入れられる
契約書で編集への同意を取っていないと、モデル側から編集への苦情が申し入れられるおそれがあります。具体的には、編集後の写真などの掲載を取りやめる差止請求や損害賠償請求、謝罪広告の掲載などが求められるおそれがあるでしょう。
このような事態を避けるため、契約書では編集やレタッチの同意を得るとともに、演出上の都合から極端な編集をする場合にはあらかじめ十分に説明し理解を得ておく必要があります
後からモデル側の問題が発覚したものの対応が困難となる
撮影後にモデル側の問題(犯罪行為など)が発覚した場合、その内容によってはそのモデルの起用を取りやめざるを得ないでしょう。また、たとえば広告制作会社がそのモデルを起用した広告をクライアントに納品した場合、クライアントから制作会社に対して損害賠償請求などがなされる可能性も生じます。
しかし、モデル撮影にあたって取り交わした契約書に不備がある場合、契約の解除やモデルへの損害賠償請求が困難となるおそれがあります。
このような事態を避けるため、モデル撮影にあたっては契約書に犯罪行為をしていない旨の宣誓条項を盛り込んでおくとよいでしょう。このような条項を設けておくことで、万が一の際にスムーズな契約解除や損害賠償請求が可能となります。
撮影モデルと交わす契約書の作成を弁護士に依頼するメリット
撮影モデルと交わす契約書は自社で作成する方法のほか、弁護士に依頼して作成する方法もあります。では、モデル撮影の契約書の作成を弁護士に依頼することには、どのようなメリットがあるのでしょうか?ここでは、主なメリットを3つ解説します。
- 状況に合った的確な契約書の作成が可能となる
- 自社に有利な条項を盛り込みやすくなる
- トラブル発生時にスムーズな解決がはかりやすくなる
状況に合った的確な契約書の作成が可能となる
1つ目は、状況に合った的確な契約書の作成が可能となることです。
インターネットで検索すれば、撮影契約書のひな型などが見つかるかもしれません。しかし、これをそのまま流用することは避けるべきです。ひな型はあくまでも一般的な内容で作成されており、これが自社の契約実態に即している保証はないためです。
実態と合っていない内容の契約書を取り交わした場合、これが原因でトラブルに発展するおそれもあるでしょう。また、ひな型を実態に合うように作り変えることにも法的な知識が必要であるうえ全体の整合性を取らなければならず、容易なことではありません。
弁護士に依頼することで、契約実態に即した適切な契約書の作成が可能となります。
自社に有利な条項を盛り込みやすくなる
2つ目は、自社に有利な条項を盛り込みやすくなることです。
契約書の「最適解」は、1つではありません。撮影する側とモデル側のどちらに立つのかによって、望ましい条項は異なります。
とはいえ、明らかに自社に一方的に有利な内容とした場合、モデル側から締結を拒否されたりSNSなどで「炎上」したりするリスクもあるでしょう。そのため、全体のバランスに配慮しつつ、自社が譲れない部分などにおいて有利な条項を盛り込むなどの配慮が必要となります。
弁護士へサポートを依頼することで、自社に有利な条項を盛り込んだ的確な契約書を作成しやすくなります。
トラブル発生時にスムーズな解決がはかりやすくなる
3つ目は、トラブル発生時にスムーズな解決がはかりやすくなることです。
契約書に不備があっても、関係性が円滑であるうちはその問題が露呈しないかもしれません。しかし、契約書が真価を発揮するのは、契約に関してトラブルが生じたときです。
弁護士はトラブルが発生してからの対応を任されることも多く、トラブル対応において望ましい条項を熟知しています。そのため、実際のトラブルから「逆算」をして、スムーズな解決が図りやすい条項を盛り込むアドバイスが可能です。
また、契約書の作成時点から弁護士に関与を受けておくことで、いざトラブルが発生した際の相談もスムーズとなりやすいでしょう。
撮影モデルと契約書を取り交わす際のその他の注意点
たとえ法的な責任は負わないとしても、トラブルに発展すれば時間やコストがかかるうえ、担当者には精神的な負担も生じます。そのため、「トラブルとなっても法的には勝てる」と考えるのではなく、そもそもトラブルとならないよう配慮すべきでしょう。
では、撮影モデルとの契約に関してトラブルに発展しないためには、どのような点に注意する必要があるのでしょうか?ここでは、主な注意点を2つ解説します。
- 内容を丁寧に説明する
- モデルの権利に配慮する
内容を丁寧に説明する
撮影するモデルとの間で契約を締結する際は、内容の読み合わせをしたうえで、契約内容を丁寧に説明するとよいでしょう。モデルが契約の内容を正しく理解しておらず、誤解からトラブルに発展する可能性があるためです。
なかでも、免責事項やモデルの承諾内容、宣誓事項については「聞いていなかった」などと主張される事態を避けるため、特に丁寧に説明することをおすすめします。
モデルの権利に配慮する
契約を締結したからといって、どのような撮影でも自由にできるわけではありません。契約書の許諾事項を逸脱しないことはもちろん、モデルの人権に最大限配慮をして撮影をすべきです。モデルの権利に配慮することで、トラブルのリスクを引き下げやすくなります。
撮影モデルと交わす契約書の作成は伊藤海法律事務所にお任せください
撮影するモデルと取り交わす契約書の作成は、伊藤海法律事務所にお任せください。最後に、伊藤海法律事務所の主な特長を4つ紹介します。
- 芸能・エンタメ法務に特化している
- 知的財産権に強い
- 連絡手段が豊富である
- 英文契約書にも対応可能である
芸能・エンタメ法務に特化している
伊藤海法律事務所は、芸能・エンタメ法務に特化しています。業界内の慣例や用語、前提事項などを熟知しているため、コミュニケーションがスムーズです。
また、業界に関する判例や裁判例、トラブル事例などに日々アンテナを張っているため、机上の空論ではなく、より実態に即したリーガルサポートを実現しています。
知的財産権に強い
伊藤海法律事務所の代表・伊藤海は、弁護士のほかに弁理士資格も有しています。
弁理士は、知的財産の保護を専門とする国家資格です。そのため、芸能・エンタメ分野において不可欠な知的財産の処理についても的確なサポートが可能です。
連絡手段が豊富である
伊藤海法律事務所は、メールや電話のほか、LINEやChatwork、Slackなど多様な連絡ツールに対応しています。
また、一定の顧問契約を締結いただいた場合、法務グループのチャットに弁護士を追加いただくことも可能です。これにより、問題の初期段階から弁護士が関与できるほか、スピーディーな対応を実現しています。
英文契約書にも対応可能である
芸能・エンタメ分野においては、海外の企業やモデルなどと契約を締結すべき場合もあるでしょう。伊藤海法律事務所は英文の契約書にも対応しているため、海外との契約についても一貫したサポートが可能です。
まとめ
撮影するモデルと締結する契約書の概要や契約書に盛り込むべき内容、契約書に不備があった場合に生じ得るトラブル、弁護士にサポートを依頼するメリットなどを解説しました。
モデルの撮影にあたっては、モデルとの間で一定事項を盛り込んだ契約書を交わすべきでしょう。契約書に不備があれば契約内容について齟齬が生じてモデル側から撮影した動画・写真の使用について差止請求がなされたり、損害賠償請求をされたりするおそれがあるためです。また、モデル側に何らかの問題が生じた際に、契約解除や損害賠償請求などが困難となります。
モデル撮影の契約書を的確に作成したい場合には、弁護士にサポートを依頼するようにしてください。弁護士のサポートを受けることで、実態に即し、かつ自社にとって有利な契約書を作成しやすくなります。
伊藤海法律事務所は芸能・エンタメ法務に注力しており、モデル撮影の契約書の作成についても多くのサポート実績があります。撮影するモデル側とのトラブルに備えて契約書を整備したい際は、伊藤海法律事務所までお気軽にご相談ください。