AIの発展により、声の模倣が容易となりました。そのような中で、VTuberの声がAIによって無断で「複製」され、声の権利が侵害されるケースも発生しています。
では、日本において、声の権利はどのような法律で守られるのでしょうか?また、VTuberが声の権利を侵害された場合、どのように対処すればよいのでしょうか?今回は、VTuberの声の権利を守る対策や声の権利が侵害された場合の対処法などについて、弁護士がくわしく解説します。
なお、当事務所(伊藤海法律事務所)はカルチャー・エンターテイメント法務に特化しており、声の権利保護に力を入れています。VTuberとして活動する中で声の権利保護を図りたいとお考えの際や、声の権利が侵害されてお困りの際などには、伊藤海法律事務所までお気軽にお問い合わせください。
▼この記事のポイント
- VTuberの「声」の権利を直接保護する法律はないが、パブリシティ権の侵害や不正競争防止法違反として法的措置がとれる可能性がある
- VTuberの声の権利が侵害されたら、早期に弁護士に相談したうえで差止請求や損害賠償請求などを行うのがおすすめ
- VTuberの声の権利を守る対策としては、生成AIへの声の学習禁止条項を契約書に盛り込むことや、相談できる弁護士を見つけておくことなどが挙げられる
VTuberの「声」は直接法律で守られる?
2026年8月現在、日本では、VTuberなどの「声」の権利を直接的に保護する法律はありません。ただし、生成AIの発展に伴い、声の権利侵害は深刻化しています。
たとえば、VTuberの「声」が別のアバターの声として無断で使用されたり、実際には関与していない商品を広告するナレーションに無断で使われたりする事態が想定できるでしょう。
このような状況を受け、声の権利について定めた法改正がなされる可能性も否定できません。そのため、今後の情報に注意しておくことをおすすめします。
VTuberの声を保護できる可能性がある権利・法律
声の権利を直接的に保護する法律はないものの、VTuberの声の権利が侵害された場合にはパブリシティ権の侵害や不正競争防止法違反として対抗できる可能性があります。ここでは、それぞれの概要を解説します。
パブリシティ権
パブリシティ権とは、著名人が有する「顧客吸引力」から得られる経済的な価値を独占的に得られる権利です。顧客吸引力について平たくいえば、「この人がCMをしているなら買ってみよう」や、「この人が使っているサービスなら信頼できそうだ」などと顧客に感じさせる力です。
このような顧客吸引力があるからこそ、多くの企業が対価を支払って著名人を自社の広告に起用しています。そうであるにもかかわらず、著名人の肖像や氏名などが無断で使用されることがあります。
たとえば、ウェブ広告に「あの〇〇さんも大絶賛」と無断で氏名が表示されたり、著名人が自社サービスを勧めているように見える動画がAIで生成されてSNS広告として無断で掲載されたりする場合などがこれに該当します。
そして、このパブリシティ権の対象を「声」にまで広げようという動きが加速しています。近年では、声優の津田健次郎氏が自身の声をTikTok動画に無断で使用されたことを受け、パブリシティ権侵害であるとして提訴した事例が話題となっています。
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不正競争防止法
不正競争防止法とは、不正な競争を防止することで経済発展を健全化することを目的とする法律です。不正競争防止法では2条1項で「不正競争」について定義されています。
中でも、VTuberの声の不正利用は次の不正競争にあたる可能性があるでしょう。
| 号数 | 名称 | 概要 |
| 1号 | 周知表示混同惹起行為 | 他人の周知の商品等表示と同一・類似の商品等表示を使用等する行為 |
| 2号 | 著名表示冒用行為 | 他人の著名な商品等表示と同一・類似のものを自己の商品等表示として使用等する行為 |
| 20号 | 誤認惹起行為 | 商品・サービスの質や内容等を誤認させるような表示等をする行為 |
そのため、声の権利侵害の態様や状況によっては、不正競争防止法違反として対抗できる可能性もあります。
VTuberの声の権利を守る対策
VTuberの声は、アバターと並んでVTuberの「命」であるともいえるでしょう。その声を守るための主な対策としては、次のものが挙げられます。
- 相談できる弁護士を見つけておく
- 契約書に生成AIへの学習禁止条項を盛り込むことを検討する
- 声の権利が侵害されたら、早期に法的措置を講じる
相談できる弁護士を見つけておく
VTuberが声の権利を守るためには、声の権利保護に強い弁護士を見つけておくことをおすすめします。相談できる弁護士を見つけておくことで、声の権利が侵害された際に早期の対応が可能となります。また、契約書に設ける条項の検討など、予防策についてのサポートも受けられるでしょう。
伊藤海法律事務所は「声格権(音声人格権)」という新たな概念を提唱し、声の権利保護に取り組んでいます。声の権利について相談できる弁護士をお探しの際は、伊藤海法律事務所までお気軽にお問い合わせください。
契約書に生成AIへの学習禁止条項を盛り込むことを検討する
VTuberが契約に従って「声」を提供する際は、その契約書に「生成AIに声を学習させることを禁じる」旨の条項を盛り込むことをおすすめします。このような定めがなければ、「多少の修正などが容易にできるようにしたい」などの考えから、VTuberが提供した声を契約の相手方がAIに入力するかもしれません。
このような条項を設けることで、提供した声が無断でAIに入力される事態の抑止力となります。
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声の権利が侵害されたら早期に法的措置を講じる
声の権利が侵害された際に早期に法的措置を講じることも、以後の権利侵害の抑止力となります。
「声の権利」に対する意識は人によって大きく異なり、権利侵害であるとの認識さえしていない人も少なくありません。声の権利が侵害された際に早期に法的措置を講じることで声に対する権利意識が高まり、以後の侵害の抑止力となるでしょう。
VTuberの声の権利が侵害された場合の初期対応
VTuberの声の権利が侵害されたら、権利侵害の証拠を残したうえで早期に弁護士に相談することをおすすめします。ここでは、声の権利が侵害された場合における一般的な対応の流れを解説します。
- 権利侵害の証拠を残す
- 弁護士に相談する
- 差止請求をする
- 損害賠償請求をする
権利侵害の証拠を残す
VTuberの声の権利が侵害されていることに気付いたら、まずはその証拠を残しましょう。権利侵害の証拠を残す方法としては、スクリーンショットを撮影することや、再生画面を別のデバイスで撮影することなどが挙げられます。
弁護士に相談する
権利侵害の証拠を残したら、早期に弁護士に相談しましょう。「声の権利」に対する意識の高さは弁護士によって異なるため、声の権利保護に力を入れている事務所を選ぶことをおすすめします。
伊藤海法律事務所は声の権利保護に注力しており、権利侵害に対して差止請求や損害賠償請求などを行った実績も有しています。声の権利侵害でお困りのVTuber様は、伊藤海法律事務所までお気軽にご相談ください。
差止請求をする
弁護士へ相談した結果、声の権利侵害があると判断できる場合には、差止請求を行います。差止請求とは、権利侵害をやめるよう侵害者に対して求めるものです。
差止請求は、弁護士から内容証明郵便を送付して行うことが多いでしょう。
損害賠償請求をする
VTuberへの声の権利侵害によって損害が生じている場合には、差止請求と併せて損害賠償請求を行います。損害賠償請求とは、不法行為(声の権利侵害)によって被った損害を償えるだけの金銭の支払いを、侵害者に対して求めるものです。
差止請求と同じく損害賠償請求も、まずは弁護士からの内容証明郵便の送付によって行うことが一般的です。
声の権利保護でお悩みのVTuber様は伊藤海法律事務所にご相談ください
声の権利保護でお悩みのVTuber様や声の権利保護について相談できる弁護士をお探しのVTuber様は、伊藤海法律事務所までまずはお気軽にご連絡ください。ここでは、当事務所の主な特長を4つ紹介します。
- カルチャー・エンターテイメント法務に特化している
- 4種類の顧問プランを展開している
- 代表は弁理士でもあり、知財保護に強い
- 英文契約書にも対応している
カルチャー・エンターテイメント法務に特化している
伊藤海法律事務所は、カルチャー・エンターテイメント法務に特化しています。VTuberや声優などとして活動するクライアントも多いことから声の権利保護に力を入れており、豊富なサポート実績を誇っています。
4種類の顧問プランを展開している
伊藤海法律事務所は、顧問契約にも対応しています。声の権利侵害についてトラブルの「種」が生じた時点から早期に弁護士に相談したいとお考えの際は、顧問契約もご検討いただくとよいでしょう。
なお、当事務所ではフリーランスから上場企業までニーズに応じたサポートが提供できるよう、次の4種類の顧問プランを展開しています。
| プラン | 概要 |
| スタンダードプラン | フリーランスや個人事業主、比較的小規模な中小企業などを想定したプラン |
| リーガルプラン | 一般的な中小企業やメガベンチャーなどを想定したプラン |
| コーポレートプラン | 上場企業などを想定したプラン |
| 包括的法務受託 | 実質的な法務部として稼働するプラン |
そのため、希望するサポートのボリュームなどに応じた過不足のないサポートが提供できます。
代表は弁理士でもあり、知財保護に強い
伊藤海法律事務所の代表である伊藤海は、弁護士のほかに弁理士資格も有しています。弁理士は、知財の保護を専門とする国家資格です。
そのため、知財の保護から侵害時の対処まで、総合的なサポートの提供が可能です。
英文契約書にも対応している
VTuberが、海外の企業や個人と契約を締結すべき場合もあるでしょう。伊藤海法律事務所は英文契約書にも対応しており、海外との契約においても一貫したサポートを提供できます。
声の権利保護に関する伊藤海法律事務所の主な対応実績
伊藤海法律事務所は、声の権利保護に関して豊富なサポート実績を有しています。ここでは、当事務所の主な対応実績を4つ紹介します。
なお、ここで紹介するものは一例であり、困りごとの内容やご希望に応じた柔軟なサポートが提供できます。声の権利保護についてお困りの際は、伊藤海法律事務所までお気軽にご相談ください。
タレントの肖像権がAIによって侵害されたことを受けて差止請求をした事例
芸能事務所に所属するタレントの肖像権が、AIで作成されたコンテンツによって侵害されました。
そこで、タレントの所属事務所から依頼を受けた当事務所の弁護士が、そのコンテンツの使用の差止めを求めた実績があります。
声優の代理人として「声の無断学習禁止」や「無断二次利用禁止」を契約書に定めた事例
先ほど解説したように、契約書に「生成AIへの声の学習禁止条項」を設けることは、声の権利侵害の抑止力となります。しかし、「声の提供を受ける側」としては提供を受けた声をできるだけ自由に使用するため、このような条項の挿入に賛同しない場合もあるでしょう。
当事務所では、弁護士が声優の代理人として相手方と交渉し、契約書に「声の無断学習」や「無断での二次利用」を禁止する旨の条項を設けることに成功した実績があります。
VTuberの「声」を独自概念である「アバター・ライツ」に落とし込んだ事例
VTuberのキャラクターを構成する重要な要素としては、アバターと「声」があると考えられます。
当事務所ではかねてからアバターの権利である「アバター・ライツ」を独自に提唱していました。近年ではこれに「声」も含まれると考え、VTuberの権利保護を図っています。
「声格権」という独自概念を提唱して声の権利保護の強化に努めている
先ほど解説したように、声の権利を直接的に定める法律や権利などはありません。
そこで、当事務所では声のさらなる権利保護を図るために「声格権(音声人格権)」という新たな権利を提唱し、声の権利の強化に努めています。
VTuberの声の権利に関するよくある質問
最後に、VTuberの声の権利に関するよくある質問とその回答を2つ紹介します。
VTuberの声を生成AIに読み込ませることは法律違反?
VTuberの声を生成AIに読み込ませたからといって、直ちに法律違反となるわけではありません。ただし、これにより生成した音声を無断で商用利用したりSNS上に投稿したりすれば、パブリシティ権の侵害や不正競争防止法違反にあたる可能性が生じます。
また、そのVTuberが契約の相手方であり、契約書に生成AI学習禁止条項が設けられているにもかかわらず生成AIに読み込ませた場合には、契約違反にあたります。この場合には、AIに声を学習させた時点で損害賠償請求や契約解除などの対象となる可能性があるでしょう。
VTuberの声の権利が侵害された場合は誰に相談すればよい?
VTuberの声の権利が侵害された場合の相談先としては、声の権利保護に力を入れている弁護士が適任でしょう。
声の権利侵害でお困りのVTuber様は、伊藤海法律事務所までお気軽にご相談ください。
まとめ
VTuberの声の権利を保護できる可能性がある権利・法律を紹介するとともに、VTuberが声の権利を侵害された際の初期対応や声の権利を保護するための対策などを解説しました。
VTuberの声の権利について、直接規定する法令はありません。しかし、AIによりVTuberの声が無断で使用された場合には、パブリシティ権の侵害や不正競争防止法違反などとして対抗できる可能性があります。
VTuberが声の権利を侵害されたら、まずは弁護士に相談するのがおすすめです。声の権利保護に力を入れている弁護士に相談することで、具体的な状況に応じた対処法の検討が可能となります。
状況に応じて差止請求や損害賠償請求などの法的措置を講じることで、権利の回復や以後の権利侵害の抑止へとつながるでしょう。
伊藤海法律事務所はカルチャー・エンターテイメント法務に特化しており、「声格権(音声人格権)」という新たな権利を提唱するなど声の権利保護に力を入れています。声の権利保護や権利侵害でお困りのVTuber様は、伊藤海法律事務所までお気軽にご相談ください。



