「自分の声」が無断で使われる「声の権利侵害」が、深刻化しています。近年では、津田健次郎氏が「声の権利侵害」で提訴したことが記憶に新しい人も多いでしょう。
では、声のパブリシティ権とはどのような権利なのでしょうか?また、声のパブリシティ権が侵害された場合、どのような法的措置が検討できるのでしょうか?今回は、声のパブリシティ権について弁護士がくわしく解説します。
当事務所(伊藤海法律事務所)はカルチャー・エンターテイメント法務に特化しており、声の権利保護に力を入れています。声優の出演契約において音声の無断利用禁止条項を交渉によって獲得した事例など、声の権利保護に関するサポート事例も少なくありません。
声の権利保護をはかりたい場合や、声のパブリシティ権が侵害されてお困りの際などには、伊藤海法律事務所までお気軽にお問い合わせください。
▼この記事のポイント
- 生成AIの発展などにより、声の権利侵害が深刻化している
- 声の権利は、パブリシティ権によって保護できる可能性がある
- 声のパブリシティ権が侵害された場合、差止請求や損害賠償請求などが検討できる
- 声のパブリシティ権が侵害されている場合には、証拠を残したうえで早期に弁護士に相談するのがおすすめ
声のパブリシティ権の概要
自分の声が無断で使われ、話した覚えのない内容を話している音声が拡散される事態は、誰にとっても気分のよいものではないでしょう。なかでも、声優や俳優など自身の「声」自体が商品となり得る人にとっては、声の権利侵害は正当な報酬を得る機会を失うことにもつながります。
このような行為は、「パブリシティ権の侵害」として対応できる可能性があります。はじめに、声のパブリシティ権について解説します。
パブリシティ権とは?
パブリシティ権とは、タレントなどの肖像や氏名の有する「顧客吸引力」から生じる経済的価値を、独占的に利用する権利です。法令に明記されたものではなく、判例によって確立されました。
この「顧客吸引力」とは、「顧客を惹き付ける力」です。もう少し平たく言えば、消費者に「この人がCMに出ているなら、この商品を買おう」や「この人がPRしているサービスなら、信頼できそうだ」などと感じさせる力を指します。
このような顧客吸引力があるからこそ、多くの企業が対価を支払って、自社商品の広告などに好感度の高いタレントなどを起用しています。
しかし、著名人の肖像や氏名が無断で使用されることがあります。たとえば、インターネット上の広告に著名人の肖像が無断で使われたり、「あの〇〇も絶賛!」など無断で氏名を表示されたりするものがこれに該当します。
このような行為はパブリシティ権の侵害にあたる可能性が高く、タレントなどの側からの差止請求や損害賠償請求などの法的措置の対象となります。
声のパブリシティ権とは?
声のパブリシティ権とは、パブリシティ権による保護の範囲を「声」にまで拡大したものです。
冒頭で触れたように、声の権利侵害が深刻化しています。そして、声優や俳優などによっては「声」そのものが商品であり、声の無断利用は肖像や氏名の無断利用と同一視できる可能性が高いでしょう。
そこで、声の無断利用についても肖像などの無断利用と同様に、パブリシティ権の侵害として対応する流れが拡がっています。
なお、伊藤海法律事務所は声の人格権である「声格権」を新たに提唱するなど、声の権利保護に力を入れています。声の権利侵害でお困りの際は、伊藤海法律事務所までお気軽にご相談ください。
パブリシティ権と声のパブリシティ権に関する動向
パブリシティ権の基準は、「ピンク・レディー事件」で初めて示されました。そして、近年では津田健次郎氏が声の権利侵害で提訴したことを受け、「声」がパブリシティ権の保護対象となるか否かの判断が待たれているところです。ここでは、それぞれの概要を解説します。
パブリシティ権の意義がはじめて示された「ピンク・レディー事件の最高裁判決」
「ピンク・レディー事件(最高裁平成24年2月2日判決)」とは、ある雑誌の「ピンク・レディーdeダイエット」と称する特集記事において、ピンク・レディーのお2人の写真が無断で掲載されたものです。特集記事には、ピンク・レディーを被写体とする14枚の写真が掲載されていました。
これを受け、ピンク・レディー側が雑誌の出版社に対して損害賠償を求めて提訴しました。
本事件では最終的にパブリシティ権の侵害はないとして損害賠償請求は認められなかったものの、パブリシティ権の侵害に当たるケースが判示されています。これによると、次のケースにおいてパブリシティ権の侵害が成立し得ます。
- 肖像等それ自体を独立して鑑賞の対象となる商品等として使用する場合
- 商品等の差別化を図る目的で肖像等を商品等に付す場合
- 肖像等を商品等の広告として使用するなど、専ら肖像等の有する顧客吸引力の利用を目的とするといえる場合
パブリシティ権について最高裁が初めて侵害基準を明示したものであり、近年においても非常に重要な判例として位置づけられています。
津田健次郎氏が「声の権利侵害」で提訴
2026年、声優の津田健次郎氏が声の権利侵害により提訴に踏み切ったとのニュースが流れました。
津田健次郎氏は、アニメ「呪術廻戦」の七海建人役などで声優を務めています。その津田氏の声に似た音声を使用した複数の動画がTikTok上で公開されていました。
これを受け、津田氏側は2025年6月に投稿者の情報開示を求めてTikTok側から「2025年2月時点の接続記録」の開示を受けたものの、この時点でプロバイダ側での接続記録の保存期間が過ぎており、投稿者の特定には至っていません。そして、2025年11月、改めて動画の削除を求めてTikTokの運営会社を訴えました。
この件で、津田氏側は不正競争防止法違反やパブリシティ権侵害を主張しています。2026年7月時点で最終的な結論には至っておらず、裁判所による今後の判断に注目が集まっています。
声のパブリシティ権侵害が問題となっている背景
声のパブリシティ権侵害が問題視されている背景には、生成AIの発達で声の模倣が容易になっていることと、SNSの普及で生成物の拡散が容易になっていることがあると考えられます。それぞれ、概要を解説します。
- 生成AIの発達で声の模倣が容易になっている
- SNSの普及で生成物の拡散が容易になっている
生成AIの発達で声の模倣が容易になっている
生成AIが非常に発達しており、声の模倣が容易となっています。たとえば、ある人物の声を生成AIに学習させることで、実際には話していない台詞をその声(のようなもの)に「話させた」り、実際には歌っていない曲を「歌わせた」りできるでしょう。
従来、このようなことをしようとすれば、声を1音ずつ「切り貼り」するか、モノマネの上手い人に真似をしてもらうしかありませんでした。前者は、どうしても違和感が残ります。後者では、「量産」するのは難しいほか、いずれにしても「人」に依頼するのであれば「本家」に依頼しようという意識も働きやすかったことでしょう。いずれにしても、声の権利が侵害される場面は非常に限定的であるといえます。
これに対して、生成AIは違和感の少ない音声を短時間で大量に生成できます。これが、声の権利侵害が深刻化している要因の1つであるといえるでしょう。
SNSの普及で生成物の拡散が容易になっている
SNSの普及により生成物の拡散が容易となったことも、声の権利侵害が深刻化している背景の1つであるといえます。
違和感の少ない状態で「声」を生成できたとしても、これが一般ユーザーの耳に届く機会が少なければ、権利侵害は限定的なものとなります。従来、情報を多くの人の耳に届けるにはテレビCMやラジオCMを流すなど限られた方法によるしかありませんでした。
しかし、このような大手メディアで情報を流すには、多額の費用がかかることが一般的です。そのため、あえて多額の費用を支払って侵害コンテンツを大衆の耳に触れさせるメリットは、ほとんどなかったといえるでしょう。そもそも、このようなメディアは規制も厳しい傾向にあり、侵害コンテンツを流せる可能性も低かったといえます。
しかし、近年ではSNSの普及により、「バズり」さえすれば、少ない費用で多くの人にコンテンツを届けることが可能となっています。また、SNSでバズればたとえ侵害コンテンツであってもプラットフォームなどから収益を得られる可能性があり、この点も声の権利侵害を助長させているといえるでしょう。
声のパブリシティ権が侵害されている場合の初期対応
声のパブリシティ権が侵害されている可能性がある場合、まずは証拠を残したうえで弁護士に相談するのがおすすめです。ここでは、声の権利が侵害されている場合の初期対応について解説します。
- 権利侵害の証拠を残す
- カルチャー・エンターテイメント法務に強い弁護士に相談する
- 具体的な対応を検討する
権利侵害の証拠を残す
声の権利が侵害されている可能性がある場合、まずは証拠を残しましょう。証拠などの資料があることで、弁護士に相談する際に状況に応じた的確な所見が受けやすくなるためです。
カルチャー・エンターテイメント法務に強い弁護士に相談する
権利侵害の証拠を残したら、できるだけ早期に弁護士に相談しましょう。相談先には、カルチャー・エンターテイメント法務に強い事務所を選ぶのがおすすめです。
声の権利侵害でお困りの際は、伊藤海法律事務所までお早めにご相談ください。当事務所は声の権利侵害への対応に力を入れており、豊富なサポート実績を有しています。
具体的な対応を検討する
具体的な状況に応じて、弁護士とともに具体的な対応策を検討します。声のパブリシティ権侵害に対する具体的な法的措置については、次でくわしく解説します。
声のパブリシティ権が侵害された場合にとり得る法的措置
声のパブリシティ権が侵害されている場合、差止請求や損害賠償請求などの法的措置が検討できます。ここでは、それぞれの法的措置の概要を解説します。
差止請求
差止請求とは、権利侵害をやめるよう相手方に求めるものです。差止請求は、弁護士から内容証明郵便を送るなどして行うことが多いでしょう。
損害賠償請求
損害賠償請求とは、権利侵害によって生じた損害を金銭の支払いで償うよう相手方に対して求めるものです。
声のパブリシティ権が侵害された場合における損害賠償の適正額は、侵害行為の具体的な内容や状況によって異なります。そのため、まずは弁護士に相談したうえでそのケースにおける損害賠償請求の可否や想定される損害賠償の適正額について把握することから始めるとよいでしょう。
声のパブリシティ権侵害でお困りの際は伊藤海法律事務所までご相談ください
声のパブリシティ権侵害でお困りの際は、伊藤海法律事務所までお気軽にご相談ください。ここでは、当事務所の主な特長を4つ紹介します。
- カルチャー・エンターテイメント法務に特化している
- 代表は弁理士でもあり、知財保護に強い
- 顧問契約にも対応している
- 英文契約書にも対応している
カルチャー・エンターテイメント法務に特化している
伊藤海法律事務所は、カルチャー・エンターテイメント法務に特化しています。
また、「声格権(音声人格権)」という新たな概念を提唱し、日々声の権利保護に取り組んでいます。契約時の交渉で音声の無断利用禁止条項を獲得したなど豊富な実績を有しているため、解決の方向性を定めるためにも、まずはお気軽にご相談ください。
代表は弁理士でもあり、知財保護に強い
伊藤海法律事務所の代表は、弁護士のほかに弁理士資格も有しています。そのため、知財の保護から知的財産侵害時の対応に至るまで、一貫したリーガルサポートが提供できます。
顧問契約にも対応している
伊藤海法律事務所は、顧問契約にも対応しています。「日頃から弁護士に気軽に相談したい」とお考えの際は、顧問契約もご検討いただくことをおすすめします。
なお、当事務所では月額料金や料金内でのサポート内容が異なる4種類の顧問プランを展開しているため、フリーランスから上場企業まで過不足のないサポートが提供できます。
英文契約書にも対応している
伊藤海法律事務所は、英文契約書にも対応しています。そのため、声優などが海外の企業や個人と契約を締結すべき場面においても、一貫したサポートが提供できます。
声のパブリシティ権に関する伊藤海法律事務所の主な対応実績
伊藤海法律事務所は、声のパブリシティ権に関して豊富なサポート実績を有しています。ここでは、当事務所の主なサポート実績を4つ紹介します。
声優の出演契約で音声の無断利用禁止条項を獲得した事例
声優側としては、収録した音声が目的外の用途に無断で利用される事態は避けたいと考えることでしょう。
当事務所では、声優の出演契約締結にあたって、音声の無断利用を禁止する旨の条項を交渉により獲得した実績を有しています。
声優の出演契約において、新たな収益モデルを確立した事例
声の無断利用は避けたいと考える一方で、「正当な対価を得られ、信頼できる相手方が舵をとってくれるのであれば、継続的に音声を利用してもらうことは許容できる」と考える声優も少なくないでしょう。
当事務所では、声優の出演契約にあたって、「声のパブリシティ権の利用許諾権を相手方に付与する代わりに、永続的に対価を支払ってもらうこと」を提案し、新たな収益モデルを確立した実績を有しています。
声優養成学校において、声のパブリシティ権に関するセミナーを開催した事例
声の権利を守るためには、声優側も自身が持つ声の権利を正しく理解しておく必要があります。
そこで、当事務所では、声優養成学校で声のパブリシティ権に関するセミナーを開催した実績を有しています。
「声格権」の提唱
伊藤海法律事務所は、声の権利保護に力を入れています。
声の権利の確立を目指して当事務所では音声人格権ともいえる「声格権」を新たに提唱し、日々研究を重ねています。
声のパブリシティ権に関するよくある質問
最後に、声のパブリシティ権に関するよくある質問とその回答を2つ紹介します。
声のパブリシティ権は法律で明記された権利?
声のパブリシティ権は法律で明記されておらず、未だ有効な判例もありません。そのため、今後の展開が待たれるところです。
なお、パブリシティ権自体も法律で明記された権利ではなく、判例で確立されてきた権利です。
声のパブリシティ権が侵害されたら誰に相談すればよい?
声のパブリシティ権が侵害された際の相談先には、声の権利保護に力を入れている弁護士を選ぶのがおすすめです。
伊藤海法律事務所は、声の権利保護について豊富なサポート実績を有しています。お困りの際は、当事務所までお気軽にご相談ください。
まとめ
声のパブリシティ権について、概要や侵害時の対応などについて解説しました。
パブリシティ権とは、タレントなどが顧客吸引力から得られる経済的利益を独占的に利用する権利です。元は肖像や氏名を想定していたものの、近年ではこれを声にまで広げようという動きが加速しています。
生成AIの発達などにより声の権利侵害は深刻化しており、積極的に保護を図っていく必要があるでしょう。声の権利保護を図りたいとお考えの際は、弁護士に相談したうえで、状況に応じた対策を講じることをおすすめします。
伊藤海法律事務所はカルチャー・エンターテイメント法務に特化しており、声の権利保護や侵害時の対応などについて豊富なサポート実績を有しています。声の権利侵害を避ける対策を講じたいとお考えの際や、声のパブリシティ権が侵害されてお困りの際などには、伊藤海法律事務所までお気軽にご相談ください。



