生成AIを業務に取り入れる企業も増えています。もはや、生成AIを完全に避けて通ることは難しい状況にあるとさえいえるでしょう。

しかし、生成AIの利用にはリスクもあります。リスクを正しく認識していなければ、思わぬトラブルが生じるかもしれません。

では、生成AIの法的リスクにはどのようなものがあるのでしょうか?また、生成AIの法的リスクを避けるには、どのような対策を講じればよいのでしょうか?

今回は、生成AIの法的リスクを紹介するとともに、生成AIの法的リスクを避ける対策についても弁護士がくわしく解説します。

なお、当事務所(伊藤海法律事務所)はカルチャー・テクノロジー法務に特化しており、生成AIの法的リスクについて豊富なサポート実績を有しています。当事務所がサポートすることで法的リスクの回避につながったケースや、トラブルが生じたものの的確な対応により解決に至ったケースは少なくありません。

生成AIの法的リスクについて相談できる実績豊富な弁護士をお探しの際は、伊藤海法律事務所までまずはお気軽にご相談ください。

▼この記事のポイント

  • 生成AIの主な法的リスクには、著作権侵害のリスクや商標権侵害リスク、情報漏洩リスクなどがある
  • 生成AIの法的リスクを避けるには、著作権・商標権について正しく理解することや他者の権利に「ただ乗り」しようとしないこと、生成AIに関する社内ガイドラインを策定することなどの対策が有効
  • 生成AIの法的リスクを適切にコントロールするため、相談できる弁護士を見つけておくのがおすすめ

生成AIの主な法的リスク1:著作権侵害

生成AIを利用することで他者の著作権を侵害し、トラブルに発展する可能性があります。このリスクについて、解説します。

著作権とは?

著作権とは、著作物を保護する権利です。

著作権の対象となる「著作物」については、著作権法で「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう」と定義されています(著作権法2条1項1号)。これらのものを創作した時点で、登録などを経ることなく自動的に著作権が発生します。

なお、著作物に該当するために「芸術性の高さ」や「経済的価値の高さ」などは求められません。そのため、誰もが知るような漫画や小説、イラストなどはもちろん、一般個人が制作してSNSに投稿したイラストや企業のブログ記事などにも著作権は発生し得ます。

生成AIによる著作権侵害の例

生成AIによる著作権侵害の例としては、生成AIによって出力したイラストや文章などが他者の著作物に似通っているにもかかわらず、そのままこれを公表した場合などが挙げられます。

前提として、生成AIはインターネットに掲載されているさまざまな情報や自身が読み込ませた情報などを「学習」し、これを元に出力します。たとえば、インターネット上で見つけた「イラストA」を生成AIに読み込ませたうえで、「こんな感じのイラストを背景にして、これに次の文字を入れて自社のPRポスターにして」などと指示すれば、ある程度指示に従う形の出力がなされることでしょう。

しかし、出力されたポスターの背景がイラストAに酷似している場合、これを使用したポスターをそのまま使用すれば著作権侵害にあたる可能性が高くなります。

生成AIで著作権侵害をした場合に生じるリスク

生成AIで他者の著作権を侵害すると、権利者側から「差止請求」や「損害賠償請求」がなされる可能性が生じます。

リスク 概要 必要な対応
差止請求 侵害行為をやめるよう求めるもの 問題となっているコンテンツの公開・流通を停止するなどの措置を講じる必要が生じる
損害賠償請求 侵害行為によって生じた損害を金銭の支払いで償うよう求めるもの ・著作権侵害による刑事罰は、10年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金、またはこれらの併科(同119条1項)

・法人の業務として侵害行為がなされた場合には、法人も3億円以下の罰金刑に処される可能性がある(同124条1項)

差止請求がなされたにもかかわらず侵害行為を継続すれば、刑事罰の対象となる可能性も生じるため、差止請求がなされたら早期に弁護士に相談したうえで適切な対応をすべきでしょう。

また、適正な損害賠償請求額は侵害行為の内容やコンテンツの性質などによって異なります。損害賠償請求がなされたら、早期に弁護士に相談することをおすすめします。

なお、著作権侵害の事実がニュースやSNSで拡散された場合、企業イメージの失墜につながるおそれもあるでしょう。著作権侵害を疑われてお困りの際は、伊藤海法律事務所までお早めにご相談ください。

生成AIの主な法的リスク2:商標権侵害

生成AIを利用することで他者の商標権を侵害し、トラブルに発展する可能性があります。

商標権とは?

商標権とは、商標を保護する権利です。商標とは、商品・サービスについて使用する「文字、図形、記号、立体的形状、色彩、これらの結合、音」などです(商標法2条1項)。たとえば、商品・サービス名やロゴマーク、CMなどで流れるサウンドロゴなどがこれに該当します。

著作権とは異なり、商標権は使い始めることなどで自動的に発生するものではありません。特許庁に出願し、登録を受けることで商標権が発生します。

生成AIによる商標権侵害の例

生成AIによる商標権侵害の例としては、生成AIに出力させたロゴマークなどが他者の商標権に酷似するものが挙げられます。

実際にこれを使い始める前に、すでに類似の商標が同一・類似の商品・サービス区分で他者によって登録されていることに気付いて使用を取りやめれば、商標権侵害は成立しません。一方で、類似商標の存在に気付かないまま他者の商標と酷似した商標を使用すれば、商標権侵害に問われる可能性が生じます。

生成AIで商標権侵害をした場合に生じるリスク

商標権侵害をした場合、権利者から「差止請求」や「損害賠償請求」などがなされる可能性が生じます。

リスク 概要 必要な対応
差止請求 商標権侵害をやめるよう求めるもの すでに商品パッケージなどにそのロゴを掲載している場合には流通をとめるなどの対応が必要となる可能性があり、状況によっては多額のコストがかかるおそれがある
損害賠償請求 商標権侵害によって生じた損害を金銭の支払いによって償うよう求めるもの ・商標権侵害によって権利者のブランドイメージを毀損した場合などには、新聞への謝罪広告の掲載などの「信用回復措置」を求められる可能性がある

・商標権侵害の場合によっては刑事罰の対象となる場合もある

・商標権侵害による刑事罰は、10年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金、またはこれらの併科(同78条)

・法人の業務の一環として侵害が行われた場合には、これに加えて法人も3億円以下の罰金刑の対象となる(同82条1項)

商標権侵害により責任が追及されてお困りの際は、伊藤海法律事務所までお早めにご相談ください。当事務所の弁護士は弁理士資格も有しているため、事前の商標調査や商標出願の段階からのサポートも可能です。

生成AIの主な法的リスク3:情報漏洩

生成AIの利用方法を誤れば、自社の機密情報や顧客の個人情報が漏洩するおそれが生じます。ここでは、生成AIによる情報漏洩リスクについて解説します。

生成AIの活用で情報が漏洩するケース

生成AIの活用で情報が漏洩するケースとしては、入力内容が学習データとして外部にも共有される設定のまま生成AIに個人情報や機密情報を読み込ませるものが挙げられます。

先ほど解説したように、生成AIは「学習用データ」を元に出力します。そのため、外部共有される設定のままで個人情報などを入力すれば、別の機会にその情報を参照するプロンプトが入力された際に自社が入力させた機密情報などが出力されるかもしれません。

たとえば、自社が「山田A氏」の氏名や住所、電話番号、家族構成などを、設定を確認しないままAIに入力したとします。その後、社外のある人が「山田A氏のプロフィールは?」と生成AIに尋ねた際に、自社が入力した「山田A氏」に関する住所や家族構成、電話番号などの情報が出力されるおそれがあるということです。

同様に、自社が秘密裡に進めている研究内容を誤って生成AIに入力した場合、誰かが生成AIに自社の情報を尋ねた際に、機密であるはずの研究内容が出力される可能性もあるでしょう。

生成AIの活用で情報漏洩が生じた場合に生じるリスク

生成AIの活用によって顧客などの個人情報が漏洩した場合、その情報の対象者である顧客などから損害賠償請求がなされる可能性が生じます。対象者の数が多ければ、支払うべき賠償金の額も多くなることでしょう。

また、自社の機密情報が漏洩した場合には他社にその情報を参照され、競争優位性を失うおそれが生じます。特許出願を予定している技術であった場合、すでに公知となったことで「新規性」要件を満たさないと判断され、特許が受けられなくなる可能性もあるでしょう。

生成AIの活用で法的リスクを避ける主な対策

生成AIの活用にあたって法的リスクを避ける対策としては、著作権・商標権について正しく理解することや他者の権利に「ただ乗り」しようとしないこと、公開前に似た人物・イラストがないか検索にかけることなどが挙げられます。

ここでは、主な対策の概要を6つ解説します。

  • 著作権・商標権について正しく理解する
  • 他者の権利に「ただ乗り」しようとしない
  • 公開前に似た人物・イラストがないか検索にかける
  • 生成AIに関する社内ガイドラインを策定する
  • 取引先との契約書に生成AIに関する条項を設ける
  • 生成AIについて相談できる弁護士を見つけておく

著作権・商標権について正しく理解する

生成AIを使用する際は、著作権や商標権について正しく理解しておくべきでしょう。特に、著作権については誤解も少なくありません。

これらについて正しく理解することで、意図せず権利侵害をする事態を回避しやすくなります。

他者の権利に「ただ乗り」しようとしない

生成AIを利用すれば、「既存のキャラクターに似たキャラクター」や「実在の著名人に似たイラスト」などを容易に生成できるでしょう。

しかし、このような他者の権利への「ただ乗り」を試みれば、著作権侵害に該当したりトラブルに発展したりする可能性が高くなります。そのため、生成AIを業務で利用するにあたって、他者の権利にただ乗りしようとすることはおすすめできません。

公開前に似た人物・イラストがないか検索にかける

生成AIによって出力されたイラストや動画などを公開しようとする際は、似た人物やイラストがないか公開前に検索にかけるべきでしょう。生成AIによって出力されたイラストや動画などが、実在の人物や他者が権利を有するイラストに偶然似てしまう場合もあるためです。

前提として、著作権侵害の有無は、「類似性(表現上の本質的な特徴が似ているかどうか)」と「依拠性(元の著作物にアクセスし、これを参照して作成されたか)」の双方から判断されることが一般的です。そのため、本当に「偶然の一致(類似)」であれば依拠性がないため、本来であれば著作権侵害は成立しません。

しかし、最終的には「依拠性がなく、著作権侵害は成立しない」と判断されたとしても、著作権侵害を疑われていることが明るみに出た時点で企業イメージが低下するおそれがあります。また、誰もが知るキャラクターに類似しているのであれば、「似たイラストがあるとは知らなかったから依拠性はない」という主張は認められない可能性が高いでしょう。

企業としては、最終的に著作権侵害にあたると判断されるか否かにかかわらず、リスクヘッジとして、公開前に似たイラストや人物がないか検索にかけることをおすすめします。

生成AIに関する社内ガイドラインを策定する

業務に生成AIを使用することを認めるのであれば、利用にあたってのガイドラインを作成することをおすすめします。ガイドラインなどがないまま生成AIの業務利用を認めれば各々が自分の判断で生成AIを使うこととなり、判断を誤りトラブルに発展するおそれがあるでしょう。

社内ガイドラインを整備することで社内におけるルールが明確となり、誤った利用による法的リスクを回避しやすくなります。

なお、伊藤海法律事務所は生成AIに関する社内ガイドラインの作成についても豊富なサポート実績を有しています。生成AI利用による法的リスクを引き下げたいとお考えの際は、伊藤海法律事務所までご相談ください。

取引先との契約書に生成AIに関する条項を設ける

自社用のコンテンツや取引先に納入するためのコンテンツの一部の制作を、別の企業やフリーランスなどに委託する場合もあるでしょう。その際は、契約書に生成AIの利用に関する条項を盛り込むことをおすすめします。

コンテンツの制作にあたって生成AIの利用を一切禁止するのであればその旨を、生成AIの利用自体は可能であるものの一定の制限を加えるのであればその旨を、明確に盛り込むことで外注先の生成AIの使用をコントロールしやすくなります。

生成AIについて相談できる弁護士を見つけておく

生成AIに関する法的リスクを適切にコントロールするためには、生成AIについて相談できる弁護士を見つけておくことをおすすめします。生成AIについて疑問や困りごとが生じた際に弁護士に早めに相談することで、問題の早期解決や法的リスクの回避につながります。

伊藤海法律事務所は、カルチャー・テクノロジー法務に特化しており、生成AIの法的リスクに関するご相談やサポートについて豊富な実績を有しています。生成AIにくわしい弁護士をお探しの際は、伊藤海法律事務所までお気軽にご相談ください。

生成AIの法的リスクについて相談できる弁護士なら伊藤海法律事務所へお問い合わせください

生成AIの法的リスクについて相談できる弁護士をお探しの際は、伊藤海法律事務所へお問い合わせください。ここでは、当事務所の主な特長を4つ紹介します。

  • カルチャー・テクノロジー法務に特化している
  • 代表は弁理士であり、知財に強い
  • 4種類の顧問契約プランを展開している
  • 英文契約書に対応している

カルチャー・テクノロジー法務に特化している

伊藤海法律事務所はカルチャー・テクノロジー法務に特化しており、生成AIに関する法務にも精通しています。生成AIに関する法的リスクを熟知しているため、状況に応じた的確なサポートが提供できます。

代表は弁理士であり、知財に強い

伊藤海法律事務所の代表である伊藤海は、弁護士のほかに弁理士資格も有しています。そのため、権利侵害時の対応のみならず、ご希望に応じて新たな商標を使い始める前に行う商標調査や商標出願などについてのサポートも提供できます。

4種類の顧問契約プランを展開している

伊藤海法律事務所は、個人事業主様から上場企業様まで過不足のないサポートが提供できるよう、月額料金や料金内でのサポート内容が異なる4種類の顧問プランを展開しています。

想定されるご依頼やご相談の量に応じたプランを選択できるため、顧問料が無駄になりづらいといえます。

英文契約書に対応している

伊藤海法律事務所は、英文契約書にも対応しています。そのため、海外の個人や企業と契約を締結する場面においても、一貫したサポートが提供できます。

生成AIに関する伊藤海法律事務所の主な対応実績

伊藤海法律事務所は、生成AIに関して豊富なサポート実績を有しています。ここでは、当事務所の主なサポート実績を4つ紹介します。

生成AI社内導入マニュアルを策定した事例

生成AIを社内に導入する際は、マニュアルを制定すべきでしょう。マニュアルがなければ個々の従業員が独自の判断で生成AIを活用することとなり、法的リスクを抱えるリスクが高くなるためです。

当事務所は、生成AIの社内導入マニュアルを策定した実績を多数有しています。

生成AIにより作成されたコンテンツについて、知的財産権侵害の有無をチェックした事例

生成AIにより策定したコンテンツが他者の知的財産権を侵害している場合、著作権侵害や商標権侵害などとなり大きなトラブルに発展するおそれがあります。

そのような事態を避けるため、当事務所では、生成AIによって作成されたコンテンツが他者の知的財産権を侵害していないか否かをチェックした実績を多数有しています。

クライアントの自社開発生成AIアプリの利用規約を作成した事例

生成AIアプリをリリースする際は、その利用規約を作成すべきでしょう。当事務所では、クライアントが自社開発した生成AIアプリについて、利用規約を作成した実績を有しています。

クライアントの営業に同席し、自社開発の生成AIアプリが法的に問題ない旨を補足説明した事例

新たにアプリケーションなどを業務に導入するにあたって、そのアプリが法的に問題ないか否かは気になるところでしょう。

当事務所のクライアントが、生成AIアプリを自社開発しました。当事務所は顧問弁護士としてその営業活動に同席し、法的に問題ない旨の補足説明をした実績を有しています。

生成AIの法的リスクに関するよくある質問

最後に、生成AIの法的リスクに関するよくある質問とその回答を2つ紹介します。

生成AIのリスクの1つである「ハルシネーション」とは?

ハルシネーションとは、生成AIが、事実とは異なる情報や架空のデータを提示してしまう現象です。もっともらしいデータが出力されることもあり、一見すると事実のように感じるかもしれません。

特に重要な内容や外部に出す文章であれば、生成AIの出力結果をそのまま信じるのではなく、必ず情報のソースを確認すべきでしょう。

生成AIの法的リスクは経営陣が理解しておけばよい?

生成AIの法的リスクは経営陣のみならず、実際に業務で生成AIを使用する従業員も理解しておくべきでしょう。

社内に生成AIの法的リスクやルールを浸透させるため、必要に応じて社内研修などを実施することをおすすめします。

まとめ

生成AIの法的リスクやリスクを回避する対策などについて解説しました。

生成AIに関する法的リスクには、著作権侵害のリスクや商標権侵害リスク、情報漏洩リスクなどが挙げられます。これらのリスクを回避するには、著作権・商標権について正しく理解することや生成AIに関する社内ガイドラインを策定すること、取引先との契約書に生成AIに関する条項を設けることなどが検討できます。

生成AIを業務に取り入れようとする際は、生成AIにくわしい弁護士に相談したうえで、自社に合った対策を講じるとよいでしょう。

伊藤海法律事務所はカルチャー・テクノロジー法務に特化しており、生成AIの法的リスクを適切にコントロールするためのサポートを提供しています。生成AIの法的リスクについて相談できる弁護士をお探しの際は、伊藤海法律事務所までお気軽にお問い合わせください。

お気軽にお問い合わせください。