生成AIが発達しており、一見しただけではAIによって生成されたものであるのかそうでないのか見分けがつきづらいものも増えています。
では、日本や海外では、AIで生成された旨の表示義務などはあるのでしょうか?また、AIによる生成物であることの表示義務があることには、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか?今回は、生成AIの表示義務について弁護士がくわしく解説します。
当事務所(伊藤海法律事務所)はカルチャー・エンターテイメント法務に特化しており、生成AIによる権利侵害について豊富なサポート実績を有しています。また、生成AIの活用により第三者の権利を侵害しないよう、社内マニュアルを策定したり権利侵害の有無をチェックしたりするなどのサポートも行っています。
生成AIによる権利侵害でお困りの際や、生成AIで他者の権利を侵害する事態を避けたいとお考えの際などには、伊藤海法律事務所までお気軽にお問い合わせください。
▼この記事のポイント
- 2026年7月時点において、AIによる生成物であることの表示義務は日本にはない
- 生成AIの表示義務があることには、ディープフェイクによる詐欺被害などの混乱の抑止につながることや、生成AIによる権利侵害の抑止力となることなどのメリットがある
- EUや米カリフォルニア州、中国、韓国などでは、AI生成物であることの表示義務がある
- 生成AIの表示義務がなかったとしても、企業が自主的にAIによる生成物である旨を表示することには、企業の信頼性が向上するなどのメリットがある
2026年7月時点で日本では生成AIであることの表示義務はない
2026年7月現在、日本にはAIによる生成物であることを表示すべき義務はありません。業界独自のガイドラインなど、自主的な規制に委ねられている状況にあります。
ただし、すべての国においてAIによる生成物であることの表示義務がないわけではありません。そのため、コンテンツが海外でも表示される可能性があるのであれば、海外の規制に抵触する事態を避けるためにも、AIによる生成物であることの表示を検討するとよいでしょう。
生成AIの表示義務があることのメリット
先ほど解説したように、2026年7月現在、日本には生成AIの表示を義務付ける法律はありません。しかし、生成AIの表示義務があることには、多くのメリットがあります。ここでは、主なメリットを2つ解説します。
- ディープフェイクによる詐欺被害や混乱の抑止につながる
- 生成AIによる権利侵害の抑止力となる
ディープフェイクによる詐欺被害や混乱の抑止につながる
冒頭で解説したように、生成AIが発達したことでディープフェイクが氾濫しており、詐欺被害につながるケースもあるほどです。
たとえば、実際には関与していないにもかかわらず、ある著名人が特定の投資商品を勧めているように見える動画がAIによって生成され、これを信じた人が詐欺被害に遭う事態などが想定されます。また、災害発生時などにAIによって生成された虚偽の動画などがSNS上などで拡散され、混乱を招くおそれもあるでしょう。
これらの行為は、刑法上の詐欺罪(刑法246条)や偽計業務妨害罪(同233条)の罪に問われる可能性があります。しかし、これらの罪に問えるのは原則として実際に被害が発生してからであり、投稿しただけで罪に問うのは困難です。
AIによる生成物であることの表示義務がある場合には、AI生成物であることを表示せずにこのような投稿をした時点で罪に問える可能性が生じ、詐欺被害や混乱の抑止力としての効果が期待できます。
生成AIによる権利侵害の抑止力となる
生成AIによる権利侵害が深刻化しています。先ほど解説したように、ある著名人が特定の投資商品を勧めているように見える動画が生成される場合があるほか、本人の名誉を害するような言動をしている動画が生成されて拡散される場合なども散見されます。
生成AIであることの表示義務がある場合、これを見た人が「本人が実際にした言動だ」と誤認する事態を防ぎやすくなるでしょう。
生成AIの表示義務があることのデメリット・リスク
生成AIの表示義務があることは、企業にとってのデメリットともなり得ます。ここでは、生成AIの表示義務があることのデメリットとリスクを2つ紹介します。
- ブランド価値の毀損につながる可能性がある
- 運用コストが増加する
ブランド価値の毀損につながる可能性がある
生成AIの表示義務がある場合、企業がPRに使用する動画やイラストがAIによって生成したものである場合、これが一目瞭然となります。なかにはAIによる生成物にあまりよいイメージを抱かない人もおり、場合によってはブランド価値の毀損につながる可能性があるでしょう。
運用コストが増加する
生成AIの表示義務がある場合、当然ながら企業はこれを遵守する必要が生じます。
そのため、これに対応するための業務フローの増加を招く可能性があるほか、社内チェック体制の整備などが必要となるケースもあるでしょう。その結果、運用コストが増加する可能性があります。
企業が自主的に生成AIであることを表示するメリット
先ほど解説したように、2026年7月現在において、日本にはAIによる生成物であることの表示を義務付ける法律はありません。しかし、企業が自主的に生成AIであることを表示することは可能であり、これには企業の信頼性が向上するなどのメリットがあります。
ここでは、企業が自主的にAIによる生成物であることを表示する主なメリットを2つ解説します。
- 企業の信頼性が向上する
- 海外の法に違反する可能性を低減できる
企業の信頼性が向上する
企業が自社のコンテンツに生成AIであることを自主的に表示することで、企業への信頼性が向上する可能性があります。
AIによる生成物はSNS上などに溢れています。なかには実際の映像・写真であるのかAIによる生成物であるのかの見分けがつきづらいものも増えており、この判断に疲弊しているユーザーも少なくないでしょう。
そのような中で、生成AIを使用したコンテンツに企業が自主的にAI生成物である旨を表示することで、誠実な企業であるとの印象を与えられる可能性があります。
また、コンテンツの制作などを手掛ける企業であれば、AI生成物であることを積極的に表示することで、自社の技術力や企画力の高さをアピールできる可能性もあるでしょう。
海外の法に違反する可能性を低減できる
日本にはAIによる生成物である旨の表示義務はない一方で、生成AIであることの表示義務を設けている国も少なくありません。
コンテンツに国境はなく、特にSNSなどで「バズ」れば、海外のユーザーにコンテンツが届く可能性があるでしょう。企業が自主的にAIによる生成物であることを表示することで、仮にそのコンテンツが海外で視聴される事態となっても、違法状態となるリスクを回避できます。
生成AIの表示義務に関する各国の規制
EUや中国など日本以外の多くの国では、AIを使って生成されたものである旨の表示義務が設けられています。ここでは、生成AIの表示義務に関する各国の主な規制を紹介します。
EU
EUでは2024年8月1日に「AI Act」が発効されており、AIによる生成物であることを明確に表示することが義務付けられています。
また、EUではAI生成物をリスクの大きさによって4段階に分類しており、分類ごとに異なる規制がなされています。EUでは生成AIについて特に厳格な規制がされているため、EU域内でAIシステムを提供・利用する場合やAIで出力したコンテンツをEU内に流通させる場合には、規制内容を理解したうえで対応する必要があります。
カリフォルニア州
アメリカ・カリフォルニア州では、2025年9月29日に「フロンティア人工知能透明性法」に署名がなされました。これにより、生成AIを使って生成されたコンテンツについてその旨を表示する義務が課されています。
中国
中国では、2025年9月1日から「人工知能生成合成内容識別弁法」が施行されています。これにより、生成AIで作成されたコンテンツにユーザーが認識できる形でAI生成物であることを表示するほか、その旨を示す「デジタル透かし」をファイルに埋め込むことも義務付けられています。
韓国
韓国では、2026年1月22日のAI基本法制定に伴い、AI生成物である旨の表示が義務化されました。実物と見分けのつきにくいディープフェイクについては、より明確な方法での表示が義務付けられています。
生成AIに関して相談できる弁護士をお探しなら伊藤海法律事務所へお問い合わせください
生成AIに関して相談できる弁護士をお探しの際は、伊藤海法律事務所までご相談ください。ここでは、当事務所の主な特長を4つ紹介します。
- カルチャー・エンターテイメント法務に特化している
- 代表は弁理士でもあり、知財保護に強い
- ニーズに合わせて4種類の顧問プランを展開している
- 英文契約書にも対応している
カルチャー・エンターテイメント法務に特化している
伊藤海法律事務所は、カルチャー・エンターテイメント法務に特化しています。生成AIに関するサポートにも力を入れており、生成AIを使って制作されたコンテンツの知的財産侵害をチェックした事例や生成AIの社内導入マニュアルを策定した事例、生成AI音楽ビジネスを展開するクライアントのJASRACからの対応窓口を務めた事例など、豊富な実績を有しています。
状況やご希望に応じた柔軟な対応の提案も可能であるため、まずはお気軽にご相談ください。
代表は弁理士でもあり、知財保護に強い
伊藤海法律事務所の代表である伊藤海は、弁護士のほかに弁理士資格も有しています。そのため、知財の保護から知財侵害時の対応に至るまで、一貫したサポートが可能です。
ニーズに合わせて4種類の顧問プランを展開している
「日頃から弁護士に気軽に相談したい」「トラブル発生時のみならず、トラブルの予防策についても相談したい」などとお考えの際は、顧問契約の締結もおすすめです。
伊藤海法律事務所は、フリーランスから上場企業まで過不足のないサポートを提供できるよう、月額料金や料金内でのサポート内容が異なる4種類の顧問プランを展開しています。
英文契約書にも対応している
伊藤海法律事務所は、英文契約書にも対応しています。そのため、生成AIに関して海外の企業や個人と契約を締結すべき場面においても、一貫したリーガルサポートが提供できます。
伊藤海法律事務所の生成AIに関する主な対応実績
伊藤海法律事務所は、生成AIの活用に関する豊富なサポート実績を有しています。ここでは、当事務所による主なサポート事例を4つ紹介します。
なお、ここで紹介するのは一例であり、このほかにも状況に応じたサポートの提案が可能です。生成AIの法務に関して何らかの困りごとが生じている際は、伊藤海法律事務所までまずはお気軽にご相談ください。
生成AIの社内導入マニュアルを策定した事例
生成AIを業務に導入する際は、導入マニュアルを策定すべきでしょう。マニュアルがなければ個々の従業員が独自にAI使用の可否や表示の有無などを判断することとなり、社内のコントロールが難しくなるためです。
当事務所では、生成AIを導入するにあたって社内向けのマニュアルを策定した実績を多数有しています。
生成AIを使って制作されたコンテンツの知的財産侵害の有無をチェックした事例
生成AIを使って制作した音楽やアートなどのコンテンツが、既存の他者の著作物の知的財産を侵害している可能性はゼロではありません。たとえ意識的な模倣ではなかったとしても、既存の作品に酷似したコンテンツを公表すれば、企業イメージの失墜につながるおそれもあります。
当事務所では、生成AIを使って制作されたコンテンツについて、知的財産権侵害の有無をチェックした実績を多数有しています。
音楽生成AIを活用し、生成AI音楽ビジネスを展開するクライアントのJASRACからの対応窓口を務めた事例
クライアントが、音楽生成AIである「Suno」を利用した生成AI音楽ビジネスを展開しています。これに関して、他者の著作権侵害の疑いがあるなどとして、音楽著作権管理団体であるJASRACから問い合わせが入ることがあります。
当事務所では、このクライアントのJASRACからの問い合わせへの常設窓口となり、対応した実績を有しています。
生成AIベンチャーのCLOに就任した事例
弁護士は顧問となり外部からサポートするのみならず、CLO(最高法務責任者)として内部からサポートするケースもあります。
当事務所の代表である伊藤海は生成AIベンチャーのCLOに就任しており、生成AI開発や利用の最前線に身を置いています。
参考:株式会社Daisy、経営体制の強化に伴う新任役員の就任を発表(PR TIMES)
生成AIの表示義務に関するよくある質問
最後に、生成AIの表示義務に関するよくある質問とその回答を2つ紹介します。
生成AIであることさえ表示すれば、生成AIによる肖像権侵害は成立しない?
AIによる生成物であることを表示したからといって、肖像権侵害が成立しなくなるわけではありません。
そのため、AI生成物であることを表示するとしても、他者の肖像権を侵害するようなコンテンツを公開しないように注意しましょう。
生成AIであることさえ表示すれば、生成AIによる著作権侵害は成立しない?
AIによる生成物であることを表示したからといって、著作権侵害が成立しなくなるわけではありません。
そのため、AIによる生成物であることを表示する場合であっても、他者の著作権を侵害するようなコンテンツの公開は避けるべきでしょう。
まとめ
生成AIであることの表示義務について解説しました。
2026年7月現在において、日本ではAIによる生成物であることの表示義務はありません。一方で、EUや中国、韓国などではすでにAI生成物であることの表示を義務付ける法律が施行されています。
コンテンツに国境はなく、海外にコンテンツが流れる可能性もあるでしょう。そのため、海外の法規制に抵触しないよう、企業が自主的にAI生成物であることの表示をすることの検討をおすすめします。
また、企業が自主的にAI生成物であることの表示をすることは誠実な企業であるとの印象につながり、企業イメージを向上させる可能性もあるでしょう。
伊藤海法律事務所はカルチャー・エンターテイメント法務に特化しており、生成AIに関して豊富なサポート実績を有しています。「生成AIに関して社内マニュアルを策定したい」、「AIで生成したコンテンツが他者の知的財産権を侵害していないかどうかチェックしてほしい」など生成AIについてお困りの際は、伊藤海法律事務所までお気軽にご相談ください。



