研究ノート

不正競争防止法の改正で「声」はどこまで守られるか ‐ 経産省小委員会における二つの方向性と、改正後も残る空白

2026-10-20T19:40:12+09:002026年10月20日|

研究ノート No.3 公開日 2026年10月20日(最終更新 2026年10月20日) 伊藤海(弁護士・弁理士、伊藤海法律事務所) 【要旨】 経済産業省の産業構造審議会不正競争防止小委員会は、2026年10月13日の第31回会合で、生成AI等による肖像や声の無断使用に不正競争防止法で対応するための二つの方向性(案)を示した。方向性①は商品等表示の例示に「肖像」「音声」を加えるもの、方向性②は無断使用を不正競争とする新しい類型を設けるものである。 現行の不正競争防止法で声を守れる場面は、周知性・商品等表示としての使用・混同・請求主体という四つの壁のために限られており、改正は必要である。例示の追加(方向性①)ではこの壁が残るため、新しい類型の創設(方向性②)を基本とすべきである。ただし、その価値は要件の組み立て方で決まる。

声の権利はどの法律で守るか ‐ デジタルレプリカ型・不正競争防止法型・声格権型、三つの立法モデルの比較

2026-10-20T19:39:09+09:002026年10月20日|

研究ノート No.2 公開日 2026年10月20日(最終更新 2026年10月20) 伊藤海(弁護士・弁理士、伊藤海法律事務所) 【要旨】 2026年、声の保護をめぐる議論は「法律を作るか」から「どの型の法律にするか」へ移った。法務省の報告書(8月7日)、東京地裁の判決(9月30日)、経済産業省の小委員会が示した二つの方向性(10月13日)、日本俳優連合のガイドライン(10月15日)が、その流れを作っている。 世界の立法は三つの型に分かれる。米国のデジタルレプリカ型、韓国と日本(経済産業省)の不正競争防止法型、そして人格権と財産権を分けて並立させる「声格権」型である。

「声格権の保護に関する法律」試案(2026年10月版)の骨子 ‐ 判例法の到達点と限界から立法へ

2026-10-11T11:09:31+09:002026年10月11日|

研究ノート No.1 2026年10月11日 伊藤海法律事務所 弁護士・弁理士 伊藤 海 1 序論 ‐ 判例法が示した到達点と限界 2026年9月30日、東京地方裁判所は、声優が生成AIで自身の声を模倣したナレーション付き動画の削除を動画投稿サイトの運営会社に求めた事件で、「人の声は、人の肖像と同様に個人の人格の象徴である」とし、実演家の声等の無断使用が「専らその声の有する顧客吸引力の利用を目的とする」ときはパブリシティ権の侵害に当たるとの一般論を示した(東京地判令和8年9月30日・令和7年(ワ)第70635号。公表裁判例として初めての判断とみられる)。他方、同判決は、対象の投稿が口頭弁論終結時までに削除されていたことを理由に請求を棄却し、声の類似性、出所を偽る表示の効果、運営者の削除義務については判断を示さなかった。

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