VTuberは、アバターをまとって活動します。そのため、アバターの著作権をはじめとするさまざまな権利を守らなければなりません。同時に、他者の権利を侵害しないための対策も必要となるでしょう。
今回は、VTuberに関係する主な権利を解説するとともに、VTuberが権利関係のトラブルを避けるために講じるべき主な対策についても紹介します。
当事務所(伊藤海法律事務所)はカルチャー・エンターテイメント法務に特化しており、VTuberの権利保護や権利侵害時の対応などについて豊富なサポート実績を有しています。VTuberとして活動する中で権利保護をはかりたい場合や権利に関するトラブルを避けたいとお考えの際などには、伊藤海法律事務所までお気軽にご相談ください。
▼この記事のポイント
- VTuberに関係する主な権利には、著作権と商標権、パブリシティ権が挙げられる
- VTuberが権利に関するトラブルを避ける対策としては、それぞれの権利を正しく理正しく理解することや他者の権利に「ただ乗り」しようとしないこと、権利の帰属について契約書で明確にすることなどが挙げられる
- 権利に関してトラブルが生じたら、早期に弁護士に相談するのがおすすめ
VTuberの権利1:著作権
VTuberが知っておくべき権利の1つ目は、著作権です。著作権について、概要と権利の帰属者を解説します。
権利の概要
著作権とは、著作物を保護する権利です。第三者が無断で著作物を利用している場合には、利用をやめるよう請求できます。
著作権は、登録などは要さず、著作物が創作された時点で自動的に発生します。著作物とは、「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」です(著作権法2条1項1号)。
VTuberのアバターのイラストや3Dモデルなどは著作物に該当し、著作権の保護対象となる可能性が高いでしょう。
権利の帰属者
原則として、著作権はその著作物を創作した著作者(いわゆる「ママパパ」)に帰属します。VTuberが対価を支払って「ママパパ」にアバターの制作を依頼したのだとしても、自動的にVTuberが著作権者となるわけではありません。
VTuberが著作権を得たいのであれば、著作権譲渡について「ママパパ」と合意をする必要があります。
なお、VTuberが「ママパパ」から著作権の譲渡を受けることでVTuberがアバターなどの「著作権者」となるものの、その場合であっても「著作者」は「ママパパ」のままです。著作者には、無断で著作物を改変されない権利である「同一性保持権」などの「著作者人格権」があり、これは譲渡できません。
そのため、著作権の譲渡を受ける際は、著作者人格権を行使しない旨を約する「著作者人格権の不行使特約」を盛り込むことなども検討する必要があるでしょう。
VTuberの権利2:商標権
VTuberが知っておきたい権利の2つ目は、商標権です。これについて、概要と権利の帰属者を解説します。
権利の概要
商標権とは、自社の商品・サービスを他社のものと区別するために使うマークである「商標」を、独占的に使える権利です。
商標権は自動的に発生するものではなく、特許庁に出願をして登録を受けることで発生するものです。VTuberの名前(名称)も「商標」であるといえ、商標登録を受けることが検討できます。
ただし、どのようなネーミングであっても商標登録ができるわけではありません。すでに登録を受けている他者の商標と同一・類似する商標は登録が受けられないほか、「山田」などありふれた名称では登録が受けられない可能性があります。
なお、伊藤海法律事務所の代表・伊藤海は、弁護士のほかに弁理士資格も有しており、商標登録出願についてのサポートも可能です。VTuberの名称について商標登録をご希望の際も、伊藤海法律事務所までお気軽にご相談ください。
権利の帰属者
商標権の権利者は、特許庁へ出願して商標登録を受けた個人または法人です。VTuber自身が出願すればVTuberが権利者となり、所属する事務所が出願すれば事務所が権利者となります。
関係のない第三者に無断で出願される事態を避けるため、ある程度継続しての活動を検討しているのであれば、積極的に出願を検討するとよいでしょう。
VTuberの権利3:パブリシティ権
VTuberは、パブリシティ権についても理解しておく必要があるでしょう。これについて、概要を解説します。
権利の概要
パブリシティ権とは、著名人が有する「顧客吸引力」から生み出される経済的価値を、本人が独占排他的に利用できる権利です。
顧客吸引力について平たくいえば、見た人に「あの人がCMしているなら買ってみよう」「この人が褒めているサービスなら使ってみよう」などと思わせる力です。この顧客吸引力があるからこそ、企業は対価を支払って著名人を自社のCMなどに起用しています。
そうであるにもかかわらず、広告などに無断で肖像や名称が使用されてしまえば、正当な対価を得る機会を逸してしまうでしょう。そのため、他者の顧客吸引力に「ただ乗り」する行為はパブリシティ権の侵害となり、差止請求や損害賠償請求などの対象となります。
パブリシティ権の対象の代表格は芸能人などの著名人であるものの、著名なVTuberなどもパブリシティ権の保護対象となり得ます。
権利の帰属者
パブリシティ権の帰属者は、顧客吸引力を持つ「本人」です。VTuberであれば、原則として、その「中の人」がパブリシティ権の帰属者となるでしょう。
VTuberの権利関係のトラブルを避ける対策
VTuberが権利関係のトラブルを避ける対策としては、次のものなどが挙げられます。
- それぞれの権利を正しく理解する
- 他者の権利に「ただ乗り」しようとしない
- 権利の帰属について契約書で明確にする
- 理解できない書面に署名押印しない
- トラブル発生時には早期に対処する
それぞれの権利を正しく理解する
VTuberが権利関係のトラブルを防ぐには、まずそれぞれの権利について正しく理解する必要があります。たとえば、下の表の左の考えはすべて誤っています。正しくは、右のように理解すべきでしょう。
| 誤った理解 | 正しい理解 |
| 「インターネット上に掲載されて誰でも無料で閲覧できるコンテンツには、著作権はない」 | インターネット上で公開されていることや無料で見られることは、著作権が発生しない理由にはならない |
| 「著作権の譲渡を受けたら、これを改変するのも自由である」 | 著作権の譲渡を受けても著作者人格権は著作者に残るため、著作者の意図に反する改変をすれば著作者人格権の侵害にあたる可能性がある |
| 「有名ではない商品・サービスの商標には商標権が発生しているはずはない」 | 有名か否かにかかわらず、商標登録を受けていれば商標権が発生している |
権利について誤解があれば、意図せず他者の権利を侵害して大きなトラブルに発展するかもしれません。このような事態を避けるため、まずは主要な権利について正しい理解を持っておく必要があります。
他者の権利に「ただ乗り」しようとしない
権利に関するトラブルを避けるため、他者の権利に「ただ乗り」するのは避けるべきでしょう。「人気のある人やコンテンツにあやかろう」などと考えれば、パブリシティ権や著作権など他者の権利を侵害する可能性が高くなるためです。
権利の帰属について契約書で明確にする
権利に関するトラブルを避けるため、権利の帰属について契約書で明確にすべきでしょう。権利の帰属先があいまいであると、権利の帰属先について齟齬が生じ、トラブルに発展するおそれがあるためです。
特に、著作権の帰属先については、誤解している人も少なくありません。そのため、たとえばVTuberが「ママパパ」にアバターや3Dモデルなどの制作を委託するのであれば、その著作権の譲渡が受けられるか否かやその譲渡対価なども含めて制作委託段階から交渉し、合意内容を契約書に落とし込んでおくことをおすすめします。
理解できない書面に署名押印しない
権利関係のトラブルを避けるため、理解できない書面への署名や押印はするべきではありません。仮にその書面に「VTuberが有するアバターの権利をX(契約の相手方)に無償で譲渡する」などと書かれていれば、署名押印をすることでこれに合意したことになってしまうためです。
いち消費者の立場であれば、消費者が「不意打ち」のように不利となる条項は消費者契約法違反を理由に無効とできる可能性があります。
しかし、VTuberとしての活動に伴う契約であれば、消費者契約法は適用されない可能性が高いでしょう。契約締結は原則として「自己責任」となるため、少しでも不明な点がある書面への署名や押印は避けるべきです。
契約内容に不明な点がある場合には、締結前に弁護士に相談し、内容を理解したうえで締結するか交渉するかを検討するとよいでしょう。お困りの際は、伊藤海法律事務所までご相談ください。
トラブル発生時には早期に対処する
万が一権利関係のトラブルが生じたら、早めに対処すべきでしょう。トラブルへの対応が後手に回れば、損失が拡大したり対応がより難しくなったりする可能性があるためです。
このような事態を避けるため、VTuberとして活動する中で権利に関する何らかのトラブルが生じたら、早期に弁護士に相談をして対処方法を検討することをおすすめします。
権利関係のトラブルが発生してお困りのVTuber様は、伊藤海法律事務所までお早めにご相談ください。
VTuberの権利について相談できる弁護士をお探しの際は伊藤海法律事務所にご連絡ください
権利について相談できる弁護士をお探しのVTuber様やVTuber事務所様は、伊藤海法律事務所までお気軽にご相談ください。ここでは、当事務所の主な特長を3つ紹介します。
- カルチャー・エンターテイメント法務に特化している
- 顧問契約も可能である
- 英文契約書にも対応している
カルチャー・エンターテイメント法務に特化している
伊藤海法律事務所はカルチャー・エンターテイメント法務に特化しており、これらの業界の取引慣習や権利の重要性などを熟知しています。
また、代表である伊藤海は弁護士のほかに弁理士資格も有しており、知財の保護や処理、侵害時の対応にも強みを有しています。そのため、確かな知識と豊富な実績に基づいた的確なサポートを提供できます。
顧問契約も可能である
伊藤海法律事務所は、顧問契約にも対応しています。顧問契約をいただいたクライアント様にはより優先的な対応が可能となり、メールや電話のほか、LINEやSlack、Chatworkなどでのコンタクトも可能となります。
「日頃から弁護士に気軽に相談したい」とお考えの際は、顧問契約もご検討いただくとよいでしょう。
英文契約書にも対応している
VTuberとして活動する中で、海外の企業や個人と契約を締結すべき場合もあるでしょう。伊藤海法律事務所は英文契約書にも対応しており、海外との契約についても一貫したサポートを提供できます。
VTuberの権利に関する伊藤海法律事務所の主な対応実績
伊藤海法律事務所は、VTuberの権利に関して豊富なサポート実績を有しています。ここでは、当事務所の主なサポート事例を4つ紹介します。
なお、ここで紹介するのは一例であり、実際には状況や困りごとの内容、ご希望に応じた柔軟なサポートの提案が可能です。解決へ向けた方向性を定めるため、お困りの際は伊藤海法律事務所までお気軽にご相談ください。
中の人とママパパで1つの権利を共有する特殊スキーム(アバター・ライツ)を設計した事例
著作権などの権利は、複数人で共有することも可能です。とはいえ、権利を共有する際は慎重にスキームを設計しなければ、トラブルの原因となりかねません。
伊藤海法律事務所では、VTuber事務所と協力して、中の人とママパパで1つの権利を共有する特殊スキーム(アバター・ライツ)を設計した実績を有しています。
クライアントの楽曲についてVTuberにより違法に「歌ってみた」がされていたため差止請求をした事例
VTuberが「歌ってみた」や「踊ってみた」などの動画を投稿する場合、その楽曲や振り付けの著作権を侵害しないか慎重に検証すべきでしょう。
伊藤海法律事務所では、当事務所のクライアントであるミュージシャンの楽曲があるプラットフォームで某VTuberによって違法に「歌ってみた」がされていたことを受け、差止請求を行った実績を有しています。このケースでは、後に和解にて解決に至っています。
事務所による競業避止義務や移籍後の芸名使用禁止条項の撤廃に成功した事例
VTuberが事務所に所属する際は、事務所とマネジメント契約を締結するのが一般的です。この契約書は事務所側が用意することから、競業避止義務や移籍後の芸名使用禁止条項などVTuber側に不利となる条項が盛り込まれていることも多いでしょう。
仮にこのまま契約を締結すれば、VTuberが将来退所する際に当面の間VTuberとして活動できなくなったり、「転生」せざるを得なくなったりする可能性があります。
伊藤海法律事務所では、VTuber側から依頼を受けて事務所側と交渉し、競業避止義務や移籍後の芸名使用禁止条項の撤廃に成功した実績を有しています。
有名VTuberを新事務所に迎え入れて「転生」による垂直立ち上げを成功させた事例
すでに活動実績のあるVTuberを事務所に迎え入れる際は、権利関係を慎重に処理しなければなりません。権利処理に問題があればVTuberの活動に制約が入り、事務所が想定したように収益を上げられない可能性があるためです。
伊藤海法律事務所では、有名VTuberを新事務所に迎え入れるにあたって権利関係を的確に処理し、「転生」による垂直立ち上げを成功させた実績を有しています。
VTuberの権利に関するよくある質問
最後に、VTuberの権利に関するよくある質問とその回答を3つ紹介します。
VTuberが権利を侵害された際の初期対応は?
VTuberが権利を侵害されたら、まずはスクリーンショットの撮影などで権利侵害の証拠を残し、早めに弁護士に相談するとよいでしょう。権利が侵害されてお困りの際は、伊藤海法律事務所までご相談ください。
VTuberのキャラクターには肖像権がある?
VTuberのキャラクター(アバター)に、肖像権はありません。肖像権の対象となるのは、自然人だけであるためです。VTuberのキャラクターのイラストや3Dモデルは肖像権ではなく、一般的に、著作権による保護対象となります。
VTuberの権利は売却できる?
VTuberが有する著作権などの権利は、売却できます。また、権利は売却せず、ライセンスすることも可能です。
著作権の譲渡やライセンスの契約内容に不備があればトラブルの原因となり得るため、弁護士のサポートを受けることをおすすめします。
まとめ
VTuberに関する主な権利を紹介するとともに、VTuberが権利に関するトラブルを避ける対策についても解説しました。
VTuberに関係する主な権利としては、著作権と商標権、パブリシティ権が挙げられます。権利について正しく理解し、理解不足から他者の権利を侵害しないよう注意しましょう。
また、権利関係を明確にするため、権利の帰属について契約書で明確にすることをおすすめします。
伊藤海法律事務所はカルチャー・エンターテイメント法務に特化しており、VTuber様やVTuber事務所様への豊富なサポート実績を有しています。VTuberの権利を保護したい場合や権利に関する契約書を作成したい場合、権利が侵害されてお困りの際などには、伊藤海法律事務所までお気軽にご相談ください。



