2024年8月1日、EUでAI法が発効しました。この法律による規制対象は、EU域内です。

しかし、コンテンツの流通に厳格な「国境」はなく、日本で制作されたコンテンツであってもこれがEU域内で流通する可能性があるでしょう。そのため、日本国内で事業を営む場合であっても、EUのAI法について、少なくとも概要程度は理解しておく必要があります。

では、EUのAI法とはどのような法律なのでしょうか?また、EUでのAI法施行に伴い、日本企業はどのような対策を講じればよいのでしょうか?今回は、EUで施行されたAI法の概要やこれに対して日本企業が講じるべき対策などについて、弁護士がくわしく解説します。

なお、当事務所(伊藤海法律事務所)はカルチャー・エンターテイメント法務に特化しており、日本企業が日本国内で生成したAIコンテンツをEU域内で広告として利用するにあたってEUのAI法に関する助言をした実績なども有しています。コンテンツの生成や流通に携わる事業者様は、伊藤海法律事務所までまずはお気軽にご相談ください。

▼この記事のポイント

  • AI法の施行により、EU域内では、一定条件を満たした場合にAIによる生成物であることの表示が義務付けられる
  • コンテンツがEU域内で流通する可能性がある場合には、日本企業であってもEUのAI法に則った対応が必要となる
  • 2026年8月現在において日本には生成AIであることの表示を義務付ける法律はないが、企業が自主的に生成AIであることを表示するメリットは大きい

EUのAI法とは?

EUのAI法とは、EU域内におけるAIモデルやAIシステムを規制する法律です。

この法律の適用対象者は、EU域内でAIシステムを提供・導入するすべての者です。EU域内に拠点のない日本企業が日本で生成したコンテンツであったとしても、EU域内で流通する場合には規制対象となる可能性があります。

伊藤海法律事務所はAIに関する法務に特化しており、EUのAI法を踏まえた助言・サポートの提供も可能です。EUのAI法への対応に不安がある事業者様は、伊藤海法律事務所までお気軽にご相談ください。

EUでのAI法の施行日はいつ?

EUのAI法は2024年8月1日に発効し、以後段階的に施行されています。施行のスケジュールは、次のとおりです。

施行日 内容
2025年2月2日 禁止されるAI利用行為に関する規制
2025年8月2日 GPAIモデル(汎用AIモデル)に関する規制(ただし、既存のGPAIモデルの提供者は2027年8月2日まで猶予)
2026年8月2日 透明性に関する規制(AIとの対話であることの明示、ディープフェイク等のAI生成コンテンツの表示など)
2027年8月2日 既存のGPAIモデルの提供者に関する規制
2027年12月2日 「附属書III」に記載された単独型ハイリスクAIシステムに関する規制
2028年8月2日 「附属書I」に記載された製品組込み型ハイリスクAIシステムに関する規制

2026年8月現在、禁止されるAI利用行為・GPAIモデル・透明性に関する規制が施行されています。そのため、自社がEUのAI法への対応が必要か否かの確認や具体的な対応が未了である事業者様は、早期に弁護士に相談して自社の対応を確認するとよいでしょう。

EUのAI法への対応でお困りの際は、伊藤海法律事務所までご相談ください。当事務所は、AI法への対応のご相談や具体的な対応サポートなどについて豊富な実績を有しています。

EUのAI法によるリスクから見たAIの4つの分類と主な規制内容

EUのAI法ではAIをリスクの視点から4つに分類し、それぞれに対して異なる規制をしています。それぞれ、概要と主な規制内容を解説します。

  • 許容できないリスク
  • ハイリスク
  • 透明性のリスク
  • 最小リスク

許容できないリスク

基本的人権や民主主義の根幹を脅かすAIは、「許容できないリスク」に分類されます。たとえば、個人を社会的に格付けするシステムや本人の同意なく感情を読み取るシステムなどは、これに分類される可能性が高いでしょう。

ここに分類されるAIの開発や提供、使用はすべて禁止されます。

ハイリスク

社会的な影響が大きい用途で利用されるAIは、「ハイリスク(高リスク)」に分類されます。たとえば、生体認証システムや人材雇用において応募者をスクリーニングするシステム、重要なインフラを管理するシステムなどはこれに該当する可能性が高いでしょう。

ここに分類されるAIシステムの開発や使用などが、禁止されるわけではありません。しかし、リスク管理体制の整備や人的監督の確保、品質マネジメントなど、非常に多くの義務が課されます。

透明性のリスク

ユーザーへの影響は限定的であるものの、誤解・誤用のリスクがあるAIは「透明性のリスク(限定的なリスク)」に分類されます。たとえば、ディープフェイクの生成ツールやチャットボットなどがこれに該当します。汎用性のある多くのAIシステムは、これに該当する可能性が高いでしょう。

ここに分類されるAIには、AIであることを明示する義務などが課されます。明示がなければ、ユーザーがAIによる生成物を実際の映像であると誤認したり、チャットボットを人間であると誤解したりするおそれがあるためです。

最小リスク

ここまでに紹介した3つに該当しないAIは、「最小リスク」に分類されます。たとえば、AI翻訳ツールやスパムフィルターなどがこれに該当するものと考えられます。

EUのAI法では、ここに分類されるAIに対して特に義務は課されません。ただし、一定の行動規範を遵守することが推奨されます。

EUでのAI法施行により日本企業が講じるべき対策の流れ

EUでAI法が施行されたことを受け、日本企業は自社の業務フローを見直したうえで必要な対策を講じる必要があります。ここでは、日本企業による対応の流れを紹介します。

  1. 自社がコンテンツ作成にAIを使う分野・フローを特定する
  2. そのコンテンツがEUに流れる可能性の有無を検証する
  3. EUに流れる可能性がある場合、EUのAI法への具体的な対応方法を弁護士に相談する
  4. 具体的な対策を講じる

なお、実際にどのように対応すべきか判断に迷うことも多いでしょう。的確な対策を講じるため、EUのAI法への対応でお困りの際は、伊藤海法律事務所までお気軽にご相談ください。

1.自社がコンテンツ作成にAIを使う分野・フローを特定する

はじめに、自社がコンテンツ作成にAIを使う分野とフローを特定します。

「自社でどのような分野・フローにAIが使用されているかわからない」という場合には、この機会に整理しておくとよいでしょう。EU域内にコンテンツが流通するか否かにかかわらず、個々の従業員が自由にAIを使っている状況では、的確なリスクコントロールが難しくなりやすいためです。

2.そのコンテンツがEUに流れる可能性の有無を検証する

次に、各分野・フローによって生成されたAIコンテンツがEU域内に流れる可能性の有無を検証します。EU域内でコンテンツが流通する可能性がゼロなのであれば、EUのAI法を意識する必要はありません。

なお、コンテンツをSNSに投稿する場合、リポストの機能などによって意図せずEU域内にまで「拡散」される可能性があります。そのため、「本当にEU域内にコンテンツが流通する可能性がないか」は慎重に検証する必要があるでしょう。

3.EUに流れる可能性がある場合、EUのAI法への具体的な対応方法を弁護士に相談する

コンテンツがEU域内に流れる可能性がある場合は、EUのAI法に対応する必要が生じます。そのため、必要に応じて弁護士のサポートを受け、講じるべき具体的な対策を把握しましょう。

AIに関する法務にくわしい弁護士をお探しの際は、伊藤海法律事務所までお気軽にご相談ください。当事務所はカルチャー・エンターテイメント法務に特化しており、EUのAI法適用に関するサポート実績も豊富に有しています。

4.具体的な対策を講じる

講じるべき具体的な対策を把握したら、実際に必要な対策を講じます。

また、今後も同様のコンテンツ流通が見込まれる場合には、社内の対応フローや規程を整備しておくとよいでしょう。

AIで生成されたコンテンツであることを日本で表示するメリット

EUでAI法が施行されたのに対し、2026年8月現在、日本ではAI生成物であることの表示を義務付ける法律などはありません。しかし、コンテンツを日本国内だけに流通させる場合であっても、自主的にAI生成物であることを表示することも検討するとよいでしょう。

ここでは、AIによって生成されたコンテンツであることを企業が自主的に表示する主なメリットを2つ解説します。

  • EUにコンテンツが流れた際にAI法に違反する事態を避けられる
  • ユーザーからの信頼が向上する

EUにコンテンツが流れた際にAI法に違反する事態を避けられる

先ほど解説したように、コンテンツがSNSでの「拡散」などにより意図せずEU域内で流れる可能性はゼロではありません。その場合であっても、企業が自主的にAI生成物であることを表示していれば、EUのAI法に違反せずに済む可能性があります。

ユーザーからの信頼が向上する

近年のインターネットはAI生成物で溢れており、ユーザーは常に「AIであるかどうか」の判断に迫られています。このような環境に疲弊しているユーザーも、少なくないでしょう。

このような状況下で、企業が自主的にAI生成物であることを表示することは、企業のイメージ向上につながる可能性が期待できます。

EUのAI法への対応は伊藤海法律事務所にお任せください

EUのAI法への対応でお困りの事業者様は、伊藤海法律事務所までご相談ください。ここでは、当事務所の主な特長を4つ紹介します。

  • カルチャー・エンターテイメント法務に特化している
  • 知財保護に強い
  • 英文契約書にも対応している
  • 顧問契約にも対応している

カルチャー・エンターテイメント法務に特化している

伊藤海法律事務所はカルチャー・エンターテイメント法務に特化しています。生成AIに関しても、AI生成コンテンツで第三者の権利を侵害しないよう社内体制を整備した事例やEUのAI法の適用がある旨を助言した事例など多様なサポート実績を有しており、状況に応じた的確かつ柔軟なサポートを提供できます。

知財保護に強い

伊藤海法律事務所の代表である伊藤海は、弁護士のほかに弁理士資格も有しています。そのため、知財に強く、知財の保護から侵害時の対応に至るまで総合的なサポートを提供できます。

英文契約書にも対応している

コンテンツを生成したりライセンスしたりするにあたっては、海外の企業や個人と契約を締結すべき場面もあるでしょう。伊藤海法律事務所は英文契約書にも対応しており、海外との契約についてのサポートも可能です。

顧問契約にも対応している

日頃から弁護士に気軽に相談したいとご希望の際は、顧問契約の締結も検討するとよいでしょう。伊藤海法律事務所は、顧問契約にも対応しています。

なお、当事務所ではフリーランスから上場企業まで過不足のないサポートを提供できるよう、月額の顧問料や顧問料に含まれるサポート内容の異なる4種類の顧問プランを展開しています。

伊藤海法律事務所のAIコンテンツに関する主な対応実績

伊藤海法律事務所は、AIコンテンツに関して豊富なサポート実績を有しています。ここでは、当事務所による主なサポート事例を3つ紹介します。

なお、ここで紹介するものは一例であり、困りごとの内容やご要望、状況に応じた柔軟なサポート内容の提案が可能です。お困りの際は、伊藤海法律事務所までお気軽にご相談ください。

AI生成コンテンツで第三者の権利を侵害しないよう社内体制を整備した事例

コンテンツの生成にAIを利用している場合、出力結果が意図せず既存の著作物や実在の人物に類似する可能性があります。また、個々の従業員が独自の判断でAIを活用している場合、従業員の理解不足から著作権侵害や肖像権侵害をする可能性もあるでしょう。

伊藤海法律事務所では、AIによって生成されたコンテンツが第三者の権利を侵害しないよう、社内体制や社内規程を整備した実績があります。

タレントの肖像権を侵害するAIコンテンツの使用を差し止めた事例

AIによって、実在するタレントなどに酷似した画像が生成されることがあります。

伊藤海法律事務所では、生成AIによりタレントが肖像権を侵害されたことを受け、弁護士が所属事務所の代理人としてそのコンテンツの使用差止めを求めた実績があります。

EUのAI法の適用がある旨を助言した事例

先ほど解説したように、日本国内で日本企業が生成したコンテンツであっても、これがEU域内に流通する場合にはEUのAI法による規制を受けることとなります。しかし、この点を認識していない事業者も少なくありません。

伊藤海法律事務所では、EU域内で広告として利用されるAIコンテンツについて、日本国内で生成したコンテンツであってもEUのAI法が適用される旨を助言し、法律違反を回避した実績があります。

EUのAI法に関するよくある質問

最後に、EUのAI法に関するよくある質問とその回答を2つ紹介します。

日本ではAIに関する法規制はある?

2026年8月現在、日本ではAIを直接的に規制する法律はありません。ただし、AIを自由に利用してよいわけではなく、AIを利用しない場合と同様に著作権法や個人情報保護法などの法律が適用されます。

また、AIによる著作権侵害や肖像権・パブリシティ権侵害、詐欺被害などが社会問題となっており、日本でも近い将来規制がなされる可能性はあるでしょう。

EUのAI法に関しては誰に相談すればよい?

EUのAI法への対応は、AIに関する法務対応に力を入れている弁護士に相談するとよいでしょう。お困りの際は、伊藤海法律事務所までご相談ください。

まとめ

EUで施行されたAI法の概要や日本企業がEUのAI法に対応する流れなどについて解説しました。

EUのAI法とは、2024年8月1日にEU域内で発効した、AIモデルやAIシステムを規制する法律です。AIをリスクの大きさに応じて4つに分類し、それぞれに対して異なる規制をしています。

EUのAI法の対象となるのはEU域内でコンテンツを流通させたりAIを開発したりする場合だけであり、日本企業が日本国内だけで流通するコンテンツを生成する場合は対象外です。しかし、EU域内でAIコンテンツが流通する可能性があるのであれば、日本企業も規制対象となり得ます。

企業としてはまず、自社でAIを活用する分野や業務フローを特定し、EU域内で流通する可能性の有無を検証する必要があるでしょう。EU域内でコンテンツが流通する可能性がある場合には、リスクの程度に応じた対策を講じる必要があります。

伊藤海法律事務所はカルチャー・エンターテイメント法務に特化しており、AIに関する法務について豊富なサポート実績を有しています。EUのAI法への対応でお困りの事業者様は、伊藤海法律事務所までまずはお気軽にご相談ください。

お気軽にお問い合わせください。