生成AIに入力するプロンプトを創意工夫することで、より独自性のあるアウトプットがなされやすくなります。相当程度工夫されたプロンプトは、それ自体に価値があるものといえるでしょう。
では、プロンプトに著作権はあるのでしょうか?また、プロンプトの著作権が侵害される事態に備え、企業はどのような対策を講じればよいのでしょうか?
今回は、著作物の要件やプロンプトが著作権の対象となり得るか否か、プロンプトの著作権侵害に備えて講じたい対策、プロンプトの著作権が侵害された場合にとり得る措置などについて弁護士がくわしく解説します。
なお、当事務所(伊藤海法律事務所)はカルチャー・テクノロジー法務に特化しており、プロンプトの著作権侵害に関するご相談にも対応しています。プロンプトの著作権保護や侵害時の対応について相談できる弁護士をお探しの際などには、伊藤海法律事務所までお気軽にご相談ください。
著作権の保護対象となる「著作物」とは?
プロンプトが著作権の保護対象となるには、そのプロンプトが著作物に該当する必要があります。
著作権法において、著作物は「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう」と定義されています(著作権法2条1項1号)。これを分解し、文化庁が公表している「令和7年度著作権テキスト」を参照しつつ、著作物の4つの要件を解説します。
- 思想または感情が含まれること
- 創作性があること
- 表現されたものであること
- 文芸、学術、美術または音楽の範囲に属するものであること
思想または感情が含まれること
1つ目の要件は、思想または感情が含まれることです。
たとえば、「東京タワーの高さ:333メートル」のような単なる事実やデータには思想または感情が含まれていないため、この要件を満たしません。
創作性があること
2つ目は、創作性があることです。創作が加わっていない模倣品や誰が表現しても同じような表現になるものには創作性があると言えず、著作物に該当しません。
プロンプトには、ありふれた表現のものも少なくないでしょう。そのため、プロンプトが著作物にあたるか否かの判断では、創作性の有無が重要な分かれ目となります。
表現されたものであること
3つ目は、表現されたものであることです。
たとえ独創性の高い内容であっても、表現されておらずアイデア段階に過ぎないのであれば、著作物には該当しません。
文芸、学術、美術または音楽の範囲に属するものであること
4つ目は、文芸、学術、美術または音楽の範囲に属するものであることです。
ただし、これはあくまでも「工業製品を除く」程度の意味合いであり、必ずしもこれらに限定されるわけではありません。ここで例示されているもの以外にも、プログラムや地図、建築図面などにも著作権があると解されています。
生成AIのプロンプトに著作権はある?
生成AIのプロンプトに著作権が発生するか否かは、ケースバイケースです。
先ほど解説したように、著作権の保護対象となる著作物には、一定の要件があります。プロンプトが思想または感情を含まない場合や、創作性があるとまでは言えない場合などには著作物としての要件を満たさず、著作権は発生しません。
一方で、それ自体が相当程度工夫されたものであり、著作物としての要件を満たす場合には、プロンプトも通常の文章などと同じく著作権の保護対象となり得ます。
このことは、文化審議会著作権分科会法制度小委員会の資料「AI と著作権に関する考え方について」に次の記述があり、これが参考となるでしょう。
- AI生成物を生成するに当たって、創作的表現といえるものを具体的に示す詳細な指示は、創作的寄与があると評価される可能性を高めると考えられる。他方で、長大な指示であったとしても、創作的表現に至らないアイデアを示すにとどまる指示は、創作的寄与の判断に影響しないと考えられる。
ただし、どの程度創意工夫がされたプロンプトであれば著作権の保護対象となるかについて、判例が出そろっているとは言い難い状況にあります。また、文化庁の資料からも分かるように、プロンプトが長ければ著作権が発生するというものでもありません。
そのため、プロンプトに著作権が発生するか否かの判断に迷う場合においては、個別事情を踏まえて弁護士などにご相談ください。
伊藤海法律事務所はカルチャー・テクノロジー法務に特化しており、生成AI関連の困りごとについて豊富なご相談対応実績を有しています。生成AIのプロンプトの著作権でお困りの際は、伊藤海法律事務所までまずはお気軽にご相談ください。
生成AIのプロンプトに著作権がある場合、侵害時にとり得る主な法的措置
生成AIのプロンプトに著作権がある場合、これが侵害された際には法的措置をとることが検討できます。では、プロンプトの著作権が侵害された場合、どのような法的措置がとり得るのでしょうか?とることができる主な法的措置は、次の2つです。
- 差止請求
- 損害賠償請求
なお、実際にプロンプトの著作権が侵害された際は、まず弁護士にご相談ください。弁護士に相談することで、そのケースにおける具体的な法的措置の検討が可能となるためです。
伊藤海法律事務所はカルチャー・テクノロジー法務に特化しており、ご相談いただくことで状況に応じた的確な対応を提案できます。プロンプトの著作権侵害でお困りの際は、伊藤海法律事務所までお早めにご相談ください。
差止請求
プロンプトの著作権が侵害された場合、差止請求が検討できます。
差止請求とは、著作権侵害をやめるよう相手方に対して求めるものです。一般的には、弁護士から内容証明郵便などを送って差止請求をすることが多いでしょう。
なお、内容証明郵便で差止請求を行った後は、相手方が「著作権侵害であるとは知らなかった」との言い逃れをしづらくなります。そのため、差止請求をしてもなお相手方が侵害行為を続ける場合には、刑事告訴などさらなる法的措置も選択肢に入ります。
損害賠償請求
プロンプトの著作権が侵害され、これにより損害が生じている場合には、相手方への損害賠償請求が検討できます。
損害賠償請求とは、相手方の不法行為(ここでは、プロンプトの著作権侵害)によって生じた損害を、金銭の支払いで償うよう相手方に求めるものです。
損害賠償請求も差止請求と同じく、弁護士から内容証明郵便を送って行うことが一般的です。相手方が賠償金の支払いに応じない場合には、必要に応じて裁判上での請求(訴訟)などへと移行します。
生成AIのプロンプトに著作権があるか否かの考え方
生成AIのプロンプトに著作権があるか否かは、どのような視点で判断されるのでしょうか?ここでは、主な判断基準を紹介します。
- 「思想または感情」が含まれているか
- 創作性があるか
- 人間によって制作されたか
なお、これらの基準を踏まえても、プロンプトに著作権があるか否か明確に判断するのは容易ではないでしょう。
そのため、実際の場面でプロンプトに著作権があるか判断に迷う際は、伊藤海法律事務所までご相談ください。当事務所はカルチャー・テクノロジー法務に特化しており、生成AIや著作権に関するお困りごとについて豊富な解決実績を有しています。
「思想または感情」が含まれているか
1つ目は、「思想または感情」が含まれているか否かです。
先ほど解説したように、単なる事実の記述は著作物に該当しません。そのため、たとえばプロンプトとして入力したものが単なる事実やデータであれば、そのプロンプトに著作権が発生する可能性は低いでしょう。
創作性があるか
2つ目は、創作性があるか否かです。プロンプトがありふれた表現である場合には創作性が認められず、著作権は発生しません。
特に、プロンプトが「人物の絵を出力して」など短いものであれば、創作性が認められる可能性は低いでしょう。ただし、先ほど解説したように、プロンプトが長いからといって必ずしも創作性が認められるわけでもありません。
人間によって制作されたか
3つ目は、人間によって制作されたか否かです。
著作物は「思想または感情」を表現したものである必要があることから、人間以外(AIや動物など)が「主体」として制作したものには著作権は発生しません。要するに、創作物を創作する主体はあくまでも人間であって、生成AIのプロンプトは、人間による創作をあくまでも「補助するツール」に過ぎなければなりません。前述したように「人物の絵を出力して」などと一任してはだめです。どちらが主体か、という話です。
生成AIのプロンプトに著作権がある場合、著作者は誰?
生成AIのプロンプトに著作権がある場合、その著作者は原則としてプロンプトを考案した人です。同時に、そのプロンプトを考案した人がプロンプトの著作権を取得します。
先ほど解説したように、生成AI自体が著作者となることはありません。また、その生成AIを開発した企業が著作者となることもないと解されています。
なお、著作権には「職務著作」との概念があり、企業の従業員が職務の一環として著作物(プロンプト)を考案したなど一定の要件を満たす場合には、従業員本人ではなくその人が所属する企業に著作権が帰属することとなります(著作権法15条)。
生成AIのプロンプトの著作権侵害に備えて企業が講じたい主な対策
プロンプトの著作権侵害に備えて、企業はどのような対策を講じればよいのでしょうか?主な対策には、次の4つが挙げられます。
- プロンプトと生成物をセットで管理する
- 第三者にプロンプトを提供する場合、契約書で利用範囲を明確にする
- 社内教育を実施する
- 相談できる弁護士を見つけておく
プロンプトと生成物をセットで管理する
プロンプトの著作権侵害に備え、プロンプトと生成物をセットで管理するとよいでしょう。
前提として、他者が入力したプロンプトを知る機会はほとんどありません。成果物とセットで管理することで、似た成果物が公表された際にプロンプトが盗用された可能性に気付きやすくなります。
第三者にプロンプトを提供する場合、契約書で利用範囲を明確にする
事業内容によっては、プロンプト自体を成果物の1つとして他社に納品する場合もあるでしょう。その際には、イラストなどを納品する場合と同様に、納品したプロンプトの利用範囲について契約書に明記することをおすすめします。
利用範囲を契約書に明記することでプロンプトの予期せぬ流用の抑止力となるほか、万が一流用(著作権侵害)が発覚した際には契約違反を根拠として法的措置をとりやすくなります。
社内教育を実施する
著作権侵害は自社が被害に遭うケースばかりではありません。認識不足や誤解などから、自社の従業員が他者の著作権を侵害することもあります。
従業員が著作権侵害をしてトラブルに発展した場合、「従業員が勝手にやったことであり、会社は関係ない」との主張が通る可能性は低いでしょう。このような事態に備え、著作権などについての社内研修の実施をおすすめします。
伊藤海法律事務所は、社内研修の講師の実績も豊富です。生成AIや著作権に関する社内研修の講師をお探しの際は、伊藤海法律事務所までお気軽にご相談ください。
相談できる弁護士を見つけておく
プロンプトの著作権侵害へ備えた対策としては、相談できる弁護士を見つけておくことも重要です。気軽に相談できる弁護士を見つけておくことで、プロンプトや著作権に関して問題の「種」が生じた際に早期の相談が可能となり、問題が大きくなる前に解決策を講じやすくなるでしょう。
伊藤海法律事務所はカルチャー・エンタメ・テクノロジー法務に特化しており、顧問契約も可能です。生成AIや著作権について日頃から気軽に相談できる弁護士をお探しの際は、伊藤海法律事務所までお気軽にお問い合わせください。
生成AIのプロンプトの著作権について相談できる弁護士をお探しなら伊藤海法律事務所へご相談ください
生成AIのプロンプトの著作権について相談できる弁護士をお探しの際は、伊藤海法律事務所までご相談ください。ここでは、当事務所の主な特長を4つ紹介します。
- カルチャー・テクノロジー法務に特化している
- 代表は弁護士のほか、弁理士資格も有している
- 顧問契約にも対応している
- 英文契約書にも対応している
カルチャー・テクノロジー法務に特化している
伊藤海法律事務所はカルチャー・テクノロジー法務に特化しており、生成AIに関するお困りごとについて豊富な解決実績を有しています。生成AIに関する法令やガイドライン、判例などにも常にアンテナを立てているため、最新情報をもとにした的確なリーガルサポートが提供できます。
代表は弁護士のほか、弁理士資格も有している
伊藤海法律事務所の代表である伊藤海は、弁護士のみならず弁理士資格も有しています。そのため、著作権などの知的財産の保護から侵害時の対応に至るまで、トータルでのサポートが提供できます。
顧問契約にも対応している
伊藤海法律事務所は、顧問契約にも対応しています。顧問契約には「スタンダードプラン」や「コーポレートプラン」など4つのプランを設けているため、フリーランスから上場企業に至るまで過不足のないサポートが提供できます。
また、顧問契約をいただいた際にはLINEやメール、Chatwork、Slackなどさまざまな手段で弁護士へのコンタクトが可能となるほか、弁護士を法務部のグループチャットに追加いただくことも可能となり、より早期段階からの問題へのアプローチが可能となります。
英文契約書にも対応している
伊藤海法律事務所は日本国内のみならず、英文契約書にも対応しています。そのため、海外の企業や個人と契約を締結するべき場面などにおいても、一貫したリーガルサポートが提供できます。
生成AIのプロンプトの著作権に関するよくある質問
最後に、生成AIのプロンプトの著作権に関するよくある質問とその回答を2つ紹介します。
プロンプトの著作権を侵害されている可能性が生じた場合、まずすべきことは?
プロンプトの著作権を侵害されている可能性が生じた場合にまずすべきことは、著作権侵害と思われる事象の証拠を残したうえで弁護士に相談することです。
弁護士に相談することで、具体的な状況における著作権侵害の有無や、とり得る法的措置などが把握できます。
相談先には、著作権など知的財産の保護に強い弁護士を選択するとよいでしょう。お困りの際は、伊藤海法律事務所までご相談ください。
プロンプトをもとに出力されたイラストには著作権が発生する?
プロンプトをもとに出力されたイラストに著作権が発生するか否かは、プロンプト自体への著作権発生の有無と同じく、状況によって異なります。
そのイラストを出力するにあたってユーザーが簡単な指示を出しただけであれば、出力されたイラストに著作権は発生しないでしょう。そのイラストは、人の思想または感情が反映されているとは言い難いためです。
一方で、プロンプトを相当程度工夫して出力された場合には、 人間がAIをIllustratorなどのソフトウェアのように道具として利用した場合と異なるものではありません。そのため、この場合には出力したイラストに著作権が発生する可能性が高いでしょう。
まとめ
プロンプトに著作権が発生するか否かやプロンプトの著作権が侵害された場合にとり得る法的措置、プロンプトの著作権侵害に備えて企業が講じたい対策などについて解説しました。
著作物としての要件を満たす場合、プロンプトにも著作権が発生します。プロンプトの著作権侵害に備え、企業はプロンプトと成果物をセットで管理することや契約書にプロンプトの利用範囲を定める条項を設けるなどの対策を講じるとよいでしょう。
また、生成AIや著作権について相談できる弁護士を見つけておくことで、トラブルの種が生まれた際に早期の相談や対処が可能となります。
伊藤海法律事務所はカルチャー・エンタメ・テクノロジー法務に特化しており、生成AIと著作権についても豊富なサポート実績を有しています。プロンプトの著作権について相談できる弁護士をお探しの際は、伊藤海法律事務所までお気軽にご連絡ください。



