新規事業を始める際は、できるだけ早期にリーガルチェックを受けることをおすすめします。

新規事業についてリーガルチェックを受けない場合、どのようなリスクが生じるのでしょうか?また、新規事業のリーガルチェックを成功させるためには、どのようなポイントを踏まえればよいのでしょうか?

今回は、新規事業についてリーガルチェックが必要となる理由やリーガルチェックの進め方、新規事業のリーガルチェックを成功させるポイントなどについて、弁護士がくわしく解説します。

新規事業のリーガルチェックとは

新規事業のリーガルチェックとは、自社が新たに展開しようとするビジネスについて法的な問題がないかどうかをあらかじめ確認することです。新規事業のリーガルチェックは自社の法務部門などが行う場合もあれば、外部の弁護士に依頼して行う場合もあります。

新規事業に取り組む場合、革新的なアイデアや採算性など「攻め」の面に目が行きがちでしょう。しかし、リーガルチェックを疎かにしてしまうと、せっかくコストをかけて展開しようとしたビジネスに「待った」がかかる事態となったり、撤退を余儀なくされたりするリスクが生じます。結果的に、投じたコストや時間を無駄にする事態となりかねません。

そのため、特に「他にはない」新たなビジネスを展開しようとする際は、リーガルチェックが必須といえるでしょう。他者が同様のビジネスを展開していない場合、単にアイデアを思いついていないだけである可能性もある一方で、法的なリスクがハードルとなっている可能性もゼロではありません。

新規事業のリーガルチェックをしないとどうなる?リーガルチェックが必要な理由

新規事業のリーガルチェックは、なぜ必要なのでしょうか?ここでは、新規事業についてリーガルチェックを行わなかった場合に生じ得る主なデメリットについて解説します。

  • 事業の継続が困難となるおそれが生じる
  • 罰則の適用対象となるおそれが生じる
  • 損害賠償請求がされるおそれが生じる
  • 企業の社会的信用が低下するおそれが生じる

事業の継続が困難となるおそれが生じる

新規事業についてリーガルチェックを行わないと、事業を展開してしまってから法的な問題が露見して事業継続が困難となるリスクが生じます。周到に準備を重ね、コストを投じてリリースしたにもかかわらずその事業から撤退すべきとなれば、多額の損失を抱えてしまいかねません。

あらかじめリーガルチェックを行い問題に気付くことができれば、損失を最小限に抑えやすくなります。また、あらかじめビジネスモデルを微調整することで、問題をクリアできる可能性もあるでしょう。

罰則の適用対象となるおそれが生じる

新規事業についてリーガルチェックを行わないと、法令に抵触し罰則の適用対象となるリスクが生じます。

違反の内容によっては責任者が逮捕されたり長期にわたってその分野のビジネスへの参入ができなくなったりするなど、多大な影響が及ぶ可能性もあります。特に、金融商品取引法や建設業法、風俗営業法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)、宅建業法、産業廃棄物処理法、弁護士法など各業法による規制がされているビジネスではこのようなリスクが高くなるため注意が必要です。

新規事業を展開しようとする際には、そのビジネスを展開するうえで関連しそうな法令を洗い出し、遵守すべき規定や必要な許認可、許認可の要件などを確認すべきでしょう。

損害賠償請求がされるおそれが生じる

新規事業についてのリーガルチェックを行わないと、ビジネスの展開後にクレームが多発したり、他者の権利を侵害して損害賠償請求がされたりするリスクが生じます。

また、ユーザーが利用料を前払いなどした後に法的な問題が発覚してビジネスの継続が難しくなった場合には返金対応も必要となり、資金繰りができず企業の存続が危ぶまれる事態となるおそれもあるでしょう。

企業の社会的信用が低下するおそれが生じる

新規事業についてのリーガルチェックを怠ると、企業の社会的信用が低下するおそれが生じます。

法令などに違反して罰則が適用された場合、信用の低下は避けられないでしょう。また、ビジネスの規模が大きな場合には社会問題にまで発展し、厳しい責任を追及される可能性もあります。

新規事業のリーガルチェックをする主な視点

新規事業のリーガルチェックは、どのような視点で行えばよいのでしょうか?ここでは、ビジネスに関するリーガルチェックの主な視点を4つ紹介します。

  • 新規事業に違法性はないか
  • 新規事業で取得すべき許認可はないか
  • 知的財産の保護について検討できているか
  • 新規事業が違法に使われるリスクはないか

新規事業に違法性はないか

1つ目は、「新規事業に違法性はないか」という視点です。新規事業に関連しそうな法令を洗い出し、違法性の有無の点から検証しましょう。必要に応じて、関係省庁に問い合わせる場合もあります。

なお、明らかに違法(黒)であるものは、当然ながら行うべきではありません。この場合にはその新規事業の展開事態を諦めるか、法令に抵触しないようビジネスの内容に修正を加える必要が生じます。

一方で、グレーである場合には抵触するおそれのある法令や罰則の内容、社会的な影響などを加味し、慎重な経営判断が必要です。ただし、ビジネスを長期的に展開したいと考えているのであればやはりグレーのまま無理に展開することは避け、できるだけ白に近づけるよう尽力するべきでしょう。

新規事業で取得すべき許認可はないか

2つ目は、「新規事業を展開するにあたって、取得すべき許認可はないか」という視点です。

許認可が必要なビジネスは、少なくありません。不動産売買の仲介をしたい場合は宅建業、中古品などを売買したい場合は古物営業、会社から出る廃棄物を運びたい場合は産業廃棄物収集運搬業など、展開するビジネスに応じてさまざまな許認可が必要となります。

また、一見許可が不要に思えても許可がいるケースなども存在し、許可の要否を自社だけで正確に判断することは容易ではありません。新規事業を展開する際は、必要な許認可を見落とさないよう注意が必要です。

知的財産の保護について検討できているか

3つ目は、「知的財産の保護について検討できているか」という視点です。

新規事業を展開する場合、そのビジネスが適法であり収益性が高ければ高いほど、他社に模倣される可能性が高くなります。これまでにないビジネスとして当初は優位性を保てても、開発コストをかけていない他社に簡単に模倣されてしまえば、いずれ競争力を失う事態となりかねません。

そのような事態を避けるため、新規事業を展開する際は、知的財産保護の視点からもビジネスを検証することをおすすめします。

そのビジネスモデルが「発明」ともいえる斬新なものである場合、特許権の取得も検討できます。また、特許の取得が難しくても、少なくともロゴやブランド名などについての商標登録は検討すべきでしょう。

さらに、海外展開を予定している場合には、海外におけるブランド保護も検討しなければなりません。

新規事業が違法に使われるリスクはないか

4つ目は、「新規事業が違法に使われるリスクはないか」という視点です。

中でも、プラットフォームビジネスなどユーザー同士を結ぶビジネスを展開する際は、この点に特に注意すべきでしょう。事業自体が違法ではなかったとしても、展開するサービスが違法な目的で使われるおそれが高いとなれば、社会的な信用を維持することは困難となるためです。また、状況によっては自社も責任を問われるおそれが生じます。

新規事業のリーガルチェックの進め方

新規事業のリーガルチェックは、どのような手順で進めればよいのでしょうか?ここでは、一般的な進め方について解説します。

  • リーガルチェックを行う者を選定する
  • ビジネスモデルやスキームを法的視点で検証する
  • 法的リスクや課題を抽出する
  • 関係省庁などへの質問やリサーチをする
  • 新規事業のリーガルチェックができる制度を活用する
  • 具体的な解決策や回避策を検討する

リーガルチェックを行う者を選定する

はじめに、新規事業のリーガルチェックを行う者を選定します。自社の法務部門で行うのか、外部の弁護士へ依頼するのかなどです。また、弁護士へ依頼するのであれば、どの弁護士に依頼するかについても検討しましょう。

新規事業リーガルチェックの依頼先には、スタートアップ法務などにくわしい弁護士を選定することをおすすめします。

ビジネスモデルやスキームを法的視点で検証する

次に、ビジネスモデルやスキームを法的な視点から検証します。関連しそうな法令を漏れなく洗い出したうえで、各法令に照らして検証しましょう。

法的リスクや課題を抽出する

検証の結果として、法的リスクや法的な課題を抽出します。明らかに違法である場合には、この時点で解決策や回避先の検討に入ります。

しかし、実際には判断に迷うものや、解釈次第で適法にも違法にもなるものが多いでしょう。その場合には、次のステップへ進みます。

関係省庁などへの質問やリサーチをする

判断に迷う場合には、関係する省庁に質問をしたり、過去の事例をリサーチしたりします。質問すべき省庁は法令などによって異なるため、確認先を誤らないようご注意ください。

また、管轄によって判断が異なる場合もあるため、管轄を確認したうえでの確認をおすすめします。

新規事業のリーガルチェックができる制度を活用する

関係省庁に確認しようにもそもそも関係省庁に確信が持てない場合や、関係省庁から明確な回答が得られない場合もあるでしょう。その際は、新規事業のリーガルチェックができる公的制度の活用を検討します。新規事業のリーガルチェックに活用できる主な制度を2つ紹介します。

  • 法令適用事前確認手続(ノーアクションレター制度)
  • グレーゾーン解消制度

法令適用事前確認手続(ノーアクションレター制度)

法令適用事前確認手続(ノーアクションレター制度)とは、新規事業で予定している具体的な行為が法令に抵触するか否かを、所管の行政機関にあらかじめ確認できる制度です。行政機関からの回答は公表され、他の企業も参照できます。

グレーゾーン解消制度

グレーゾーン解消制度とは、新規事業の具体的な事業計画が各規制の適用対象であるか否かをあらかじめ確認できる制度です。この制度は、新規事業産業競争力強化法に基づいて創設されました。

具体的な解決策や回避策を検討する

新規事業のリーガルチェックの結果何らかの問題が発覚したら、具体的な解決策や回避策を検討します。解決や回避の具体的な方法はビジネスの内容や問題の内容などによって異なるため、弁護士のサポートを受けて検討するとよいでしょう。

新規事業のリーガルチェックを成功させるポイント

新規事業のリーガルチェックを成功させるには、どのようなポイントを踏まえればよいのでしょうか?ここでは、主なポイントを3つ解説します。

  • その分野に強い弁護士にサポートを依頼する
  • 余裕を持ったスケジュールで取り組む
  • 早期の段階でリーガルチェックをする

その分野に強い弁護士にサポートを依頼する

1つ目は、その分野に強い弁護士にサポートを受けることです。

弁護士は法律の専門家であるものの、すべての事業分野に精通しているわけではありません。展開しようとするビジネスの分野に知見を有する弁護士へ相談することで、より具体的かつ有用なアドバイスを受けやすくなります。

また、新規事業のサポートに積極的な弁護士を選定して依頼するとよいでしょう。

余裕を持ったスケジュールで取り組む

2つ目は、余裕を持ったスケジュールでリーガルチェックに取り組むことです。

 

新規事業のリーガルチェックは、たとえ弁護士であってもその場ですぐに回答できるとは限りません。斬新でこれまでに例のないビジネスであればあるほど、法令の調査や関係省庁などの照会に時間を要します。この点を理解したうえで、新規事業のリーガルチェックは余裕のあるスケジュールで依頼すべきでしょう。

スケジュールに余裕がなければ弁護士から依頼を断られたり、チェックが漏れたりするおそれが生じます。

なお、弁護士に優先的な対応を受けたい場合には、顧問契約の締結も検討するとよいでしょう。顧問契約の内容は弁護士によって異なるものの、顧問先は優先的に対応する弁護士が多いためです。

早期の段階でリーガルチェックをする

3つ目は、早期の段階でリーガルチェックをすることです。

アイデア段階など早期からリーガルチェックを受けたり弁護士も交えてビジネスモデルを詰めたりすることで、早期の方向転換が可能となります。また、無駄な投資をする事態を最小限に抑えられるでしょう。

一方で、すでにビジネスの全容が固まり必要な物件も契約し備品などの発注なども済ませてから新規事業のリーガルチェックを受けた場合には、チェック段階で法的な問題が発覚して事業の継続が難しくなった際に、これらの投資が無駄となるおそれが高くなります。

新規事業のリーガルチェックは伊藤海法律事務所へお任せください

新規事業のリーガルチェックは、伊藤海法律事務所へお任せください。最後に、伊藤海法律事務所の主な特長を3つ紹介します。

代表の伊藤海は弁護士のほか弁理士資格も有している

伊藤海法律事務所の代表である伊藤海は、弁護士のほか弁理士資格も有しています。弁理士とは、知的財産保護を専門とする国家資格です。

そのため、法律の観点はもちろんのこと、知的財産保護の観点からも新規事業のチェックやアドバイスが可能です。

スタートアップ法務やテクノロジー法務、エンタメ法務に特に強みを有している

伊藤海法律事務所は、スタートアップ法務やテクノロジー法務、エンタメ法務に特に強みを有しています。

弁護士について、「正論や机上の空論ばかりで、現場のことを何もわかっていない」というマイナスイメージを持っている経営者の方もいることでしょう。当事務所の代表・伊藤は、音楽やアート事業、ブロックチェーンを始めとしたWeb3ビジネスに当事者として精力的に携わっているため、法的観点のみならず、現場の目線も取り入れた形での上質な助言が可能であることが最大の強みです。

海外展開を含めたリーガルサポートが可能である

近年では、新規事業について海外を含めた展開を検討しているケースも少なくありません。しかし、海外での事業展開について相談できる弁護士は、まだ多くない印象です。

伊藤海法律事務所は国内のみならず、海外展開を含めたリーガルチェックや知財戦略に強みを有しています。また、海外との契約締結についてのサポートも可能です。

まとめ

新規事業にリーガルチェックが必要な理由やリーガルチェックの主な視点、新規事業のリーガルチェックをする流れなどを解説しました。

新規性の高いビジネスであればあるほど、リーガルチェックの重要性が高くなります。十分なリーガルチェックを経ないまま新規事業を展開してしまうと、途中で違法性が発覚して大幅な方向転換を余儀なくされたり、罰則の対象となったりするおそれが生じます。また、不安を抱えた状態で新規事業を展開すれば、エンジンがかかりきらないことでしょう。

弁護士へ依頼して新規事業のリーガルチェックを受けることで不測のトラブルを避けやすくなり、安心してビジネスを展開しやすくなります。

伊藤海法律事務所ではスタートアップ法務やテクノロジー法務、エンタメ法務に特に強みを有しており、新規事業のリーガルチェックに積極的に取り組んでいます。新規事業の展開へ向けてリーガルチェックをご希望の際は、伊藤海法律事務所までお気軽にご相談ください。

知的財産の保護や契約書の作成・チェックなど新規事業の展開に必要なサポートについても、総合的な対応が可能です。

お気軽にお問い合わせください。