オンラインサロンを運営する際は、規約の作成が必須といえます。

では、オンラインサロンの規約の作成は、どのようなポイントを踏まえて行うとよいのでしょうか?今回は、オンラインサロンの規約作成について、弁護士が詳しく解説します。

オンラインサロンとは

オンラインサロンとは、インターネット上で展開される会員制コミュニティです。月額会費制であることが多く、会員となることでサロン内の記事を閲覧したり、他のサロン会員と交流したりすることが可能となります。

オンラインサロンには、芸能人やアーティストなどの著名人のファンが集まる「ファンクラブ型」や主催者や会員が知識やノウハウをシェアする「スキルシェア型」などさまざまな形態があり、形態ごとに会員が有する権利やオンラインサロンに参加する目的などが異なります。

オンラインサロン開設時に規約が必須である理由

オンラインサロンを開設する際は、規約の策定が必須といえます。ここでは、オンラインサロンに規約が必須である主な理由を3つ解説します。

  • 会費など契約内容を明確にする必要があるから
  • トラブルの抑止力となるから
  • トラブル発生時の対応がしやすくなるから

会費など契約内容を明確にする必要があるから

規約を定めることで、オンラインサロンの運営者と会員それぞれの「権利」と「義務」が明確になります。

たとえば、オンラインサロンは有料であることが多く、会員は所定の期日までに所定の会費を納めなければなりません。期日までに会費を納めなければ、会員としての権利を失うことになるでしょう。

一方、サロンの運営者は会員に対してオンライン上のコンテンツを閲覧する権限を付与したり、オンラインコミュニティに参加する権限を付与したりする義務を負うこととなります。他にも、サロンによってはオンラインサロンの主催者が運営するセミナーに特別料金で参加できることとしたり、イベントチケットを優先的に購入できるとしたりするなど、会員の有する権利はオンラインサロンによってさまざまです。

しかし、このような契約は民法上の典型契約ではなく、規約がなければ双方がともにどのような権利を有し、義務を負うのかがわかりません。また、義務に違反した場合の措置なども不明確です。

そこで、規約を策定することで、双方が有する権利義務や違反時の措置などを明確にすることが可能となります。

トラブルの抑止力となるから

オンラインサロンの規約は、トラブルの抑止力としての効果も期待できます。

オンラインサロンの規約では、サロンにおける禁止事項を定めることが一般的です。そのうえで、禁止事項に違反した会員を強制的に退会させるとするなど、違反時の対応についても記載することが多いでしょう。

これにより、そのオンラインサロンにおける禁止事項が明確となり、「そのサロン運営者がしてほしくない行為」についての抑止力となります。

トラブル発生時の対応がしやすくなるから

オンラインサロンに規約があることで、トラブル発生時の対応がしやすくなります。

後ほど改めて解説しますが、法令は「違法ではないものの迷惑」な行為について対処することはできません。たとえば、ビジネスノウハウをシェアするオンラインサロン内でさまざまな会員をデートに誘う行為は、運営者や他の会員にとって迷惑でしょう。場合によっては会の秩序が乱れ、会員の退会が相次いでしまうかもしれません。

しかし、これだけで直ちに違法ということは難しく、強制的に退会させることが問題ないのかどうか、疑問の残るところです。また、誹謗中傷など違法でありそうな行為であってもサロン運営者が違法であるかどうかの判断をすることは難しいうえ、仮に違法であっても、それをもって直ちに退会措置をとることが適切であるかどうかは別の問題です。

オンラインサロンの規約を定め、その規約で禁止事項を列挙したうえで禁止行為に違反した場合は退会処分とする旨を明記しておくことで、トラブル発生時の対応が容易となります。

オンラインサロンの規約作成時のポイント

オンラインサロンの規約を作成する際は、どのような点に注意するとよいのでしょうか?ここでは、オンラインサロンの規約を作成するポイントを5つ解説します。

  • 自身が運営するサロンの内容に合ったものを作成する
  • 自身が内容を理解しておく
  • 法令を遵守する内容とする
  • 会員に一方的に不利となる内容は避ける
  • 定型約款の要件を満たすように設計する

自身が運営するサロンの内容に合ったものを作成する

1つ目は、自身が運営するオンラインサロンの内容に合った規約とすることです。

インターネット上で検索すると、他のオンラインサロンの規約が多く見つかることでしょう。しかし、これらを参考とする程度であればよいものの、「コピペ」をしてそのまま使用することは避けるべきです。なぜなら、オンラインサロンにはそれぞれ異なる特徴があり、他のオンラインサロンの規約が自身のオンラインサロンに合っているとは限らないためです。

場合によっては、規約に記載されているサービス(サロン運営社側の義務)が履行されていないとして、トラブルの原因となる可能性もあります。

自身が内容を理解しておく

2つ目は、運営者側が規約の内容を十分に理解しておくことです。

他のサービスの「コピペ」で作った規約の場合、運営者側が内容をよく理解していないことがあります。しかし、規約はそのオンラインサロンのルールであり、内容を理解していなければ適切に運営することは困難です。また、トラブル発生時の対応も後手に回りやすいでしょう。

そのため、自身が運営するオンラインサロンの規約については、運営者側が十分理解しておくことが必要です。

法令を遵守する内容とする

3つ目は、法令を遵守する内容とすることです。

オンラインサロンの内容や規約の内容が「他にない、独創的なもの」であると感じたら、それが違法でないかどうかあらかじめ弁護士へご相談ください。他にないのは、他者が思いついていないからではなく、法令のハードルが理由である可能性があるためです。

たとえば、法律相談は弁護士の独占業務であり、弁護士でない者が法律相談を受ける内容のオンラインサロンは、弁護士法に違反する可能性が高いといえます。

会員に一方的に不利となる内容は避ける

4つ目は、オンラインサロン会員が一方的に不利となる内容を避けることです。なぜなら、会員が一方的に不利となる条項は、消費者契約法の規定によって無効となる可能性が高いためです。

たとえば、「いかなる場合であっても、サロン運営社は一切損害賠償責任を負わない」などの条項は、無効となる可能性が高いでしょう。また、「サロン上に投稿された著作物の著作権はすべてサロン運営社に帰属することとする」などの規定は会員の反感を買いやすく、SNSなどで「炎上」するおそれがあります。

運営社側に有利な規約としたいとの考えは理解できるものの、極端な規約を作ってしまえば無効となったり、トラブルの原因となったりしてしまいかねません。そのため、あらかじめ弁護士へ相談したうえで、運営者と会員とのバランスがとれた規約を作成すると良いでしょう。

定型約款の要件を満たすように設計する

5つ目は、定型約款の要件を満たすように画面設計を行うことです。定型約款とは、不特定多数の者と行う取引で用いる契約条項を指します。

契約は本来、当事者双方が内容を確認したうえで、必要に応じて条項の修正などの交渉をしたうえで締結するものです。しかし、オンラインサロンの規約など相手方が不特定多数である場合、個々に契約内容を交渉することは現実的ではありません。

そこで、オンラインサロンなど特定の者が不特定多数の者と行う取引においては、主催者があらかじめ用意した定型約款を契約内容とすることについて相手方(会員となろうとする者)の合意を得ることで、定型約款に定めた個々の条項についても合意したことともみなすことが可能です。

一方、規約を定めていても単にホームページに掲載しているだけでは、会員がこれを契約内容とすることに合意したものとはいえません。そのため、会員が申込みをする際にオンラインサロンの規約を画面に表示させ、これを契約内容とすることについて同意する旨のチェックボックスを設けるなど、画面設計に注意を払う必要があります。

オンラインサロンの規約づくりは禁止事項の設定が重要

オンラインサロンの規約づくりでは、禁止事項の設定が非常に重要となります。その理由と、オンラインサロンの規約に定めるべき禁止事項の例は、それぞれ次のとおりです。

禁止事項の設定が重要である理由

禁止事項の設定が重要である最大の理由は、規約に禁止事項を定めておくことで、そのオンラインサロンにとって好ましくない行為が明確になるからです。禁止事項を定めたうえで、その禁止事項に違反した会員について強制的に退会させることができる旨の規定などを設けておくことで、実際に禁止事項を行う会員が現れた際の対応がスムーズとなります。

また、会員が退会処分を受けたくないと考えることで、禁止事項についての抑止力となる効果も期待できます。なお、オンラインサロンで禁止事項を定めていなければ、民法などの法令に従って処分を検討することとなります。

しかし、たとえば他者への殺害予告などは法令に照らしても違法行為である一方で、サロン内で異性との出会いを求める行為やサロン内でしきりに自身のビジネスを宣伝する行為などは、運営者や他の会員にとって迷惑ではあるものの、必ずしも法令違反ではないでしょう。

オンラインサロンの規約に禁止事項を定めていなければ、このような「違法ではないが迷惑」な行為についての対処が困難となります。

オンラインサロンの規約に定める禁止事項の例

オンラインサロンの規約に定めることが多い禁止事項の例には、次のものなどが挙げられます。

  • 法令や公序良俗に反する行為、犯罪に結びつく行為、これらの行為を助長、幇助、勧誘する行為
  • オンラインサロン内の情報を転載する行為、引用する行為
  • 他者の著作権を侵害する行為
  • 運営者の承諾を得ずに自己や第三者の商品やサービスを広告したり勧誘したりする行為
  • 反社会勢力に対して、利益や便宜を提供する行為
  • サーバーに、過度の負担を与える一連の行為
  • スパムメール・チェーンメール等の勧誘を目的とする行為
  • 差別に繋がる民族、宗教、人種、性別又は年齢等に関する表現行為
  • 他の会員又は第三者になりすましてオンラインサロンを利用する行為
  • 宗教や政治活動への勧誘目的でオンラインサロンを利用する行為

ただし、オンラインサロンの規約に定める禁止事項について正解はなく、運営するオンラインサロンの性質に従って判断するほかありません。

たとえば、そもそもそのオンラインサロンが会員のビジネスを拡大することを目的としたものであるのであれば、会員が自身のビジネスを勧誘することを禁止事項とする必要はないでしょう。規約の内容が実態に即していなければ、会員が混乱してしまいかねません。

そのため、オンラインサロンの規約を作成する際は、弁護士などの専門家へ相談しつつ、そのオンラインサロンの内容や目的に合った内容とすると良いでしょう。

オンラインサロンの規約作成を弁護士に依頼するメリット

オンラインサロンの規約作成は、弁護士にご依頼ください。最後に、オンラインサロンの規約作成を弁護士に依頼する主なメリットを4つ解説します。

  • 法的に問題のない規約が作成できる
  • 会員に安心感を与えられる
  • 時間と労力を削減できる
  • トラブル発生時の対応がスムーズとなる

法的に問題のない規約が作成できる

自社で規約を作成すると、法的なリスクのある内容の規約を作成してしまう可能性があります。

法的リスクのある規約をリスクに気付かないまま運用してしまうと、いざトラブルが生じた際にある条項が無効となり想定した対応ができなかったり、スムーズな対応ができずトラブルが拡大したりするおそれがあります。また、SNSで炎上するリスクなどもあるでしょう。

一方、規約の作成を弁護士に依頼することで、法的に問題のない規約の作成が可能となります。

会員に安心感を与えられる

他のオンラインサロンの規約を「コピペ」して自社で作った規約は、整合性が取れない部分があったり、用語が統一されていなかったりすることが少なくありません。

一方、弁護士が作成した規約は法的に問題がないうえ、全体的に統一感があります。また、サロンのルールについて会員が知りたいことについても、規約内で説明されていることが多いといえます。そのため、会員に対して安心感を与えやすいでしょう。

時間と労力を削減できる

オンラインサロンの規約を自社で作成しようとすれば、多大な時間と労力を要します。オンラインサロンの立ち上げ時は規約の策定以外にも決めるべきことや検討すべきこと、準備すべきことが少なくないでしょう。

そのような中で規約の作成までを自社で行おうとすると、規約の完成がサロン開設予定日に間に合わなかったり、片手間で作成した結果問題のある規約を作ってしまったりする事態となりかねません。

弁護士へ依頼することで、自社でかける手間や時間を最小限に抑えつつオンラインサロンの規約を作ることが可能となります。

トラブル発生時の対応がスムーズとなる

オンラインサロンの規約が真価を発揮するのは、サロン内でトラブルが発生したときです。トラブル発生時の対応を規約できちんと定めておくことで、問題が起きた際の対応がスムーズとなります。

しかし、サロン運営にあたって起きる可能性があるトラブルを想定し、そのトラブルに対処するための条項を盛り込んだ規約を自分で作成することは、容易ではないでしょう。規約の作成を弁護士へ依頼することでさまざまなトラブルを想定した規約の作成が可能となり、トラブル発生時にスムーズに対処しやすくなります。

また、規約作成にあたって弁護士のサポートを受けておくことで弁護士とのつながりができることから、万が一トラブルが発生した際の相談がスムーズとなりやすいこともメリットです。

まとめ

オンラインサロンの規約について解説しました。

オンラインサロンの開設にあたっては、規約の策定が必須といえます。なぜなら、規約がなければ運営者と会員との権利義務があいまいになりやすいほか、トラブル発生時の対応が困難となりやすいためです。適切な規約を作成することでトラブル発生時の抑止力となるほか、トラブルが発生した際の対応もスムーズとなるでしょう。

しかし、オンラインサロンの規約を自社で作成することは、容易ではありません。無理に自社で作成すれば、法的に問題のある規約を作ってしまったり、炎上してしまったりする可能性があります。規約の作成をご検討の際は、弁護士のサポートを受けると良いでしょう。

伊藤海法律事務所ではオンラインサロンの運営サポートに力を入れており、多くのサポート実績があります。オンラインサロンの規約作りでお困りの際や、オンラインサロンの運営にあたって相談できる弁護士をお探しの際は、伊藤海法律事務所までお気軽にご連絡ください。