ボイスクローン(音声クローン)の生成が容易となり、うまく利用できれば業務効率化につながったり、新たなサービス開発ができたりする可能性があります。ただし、ボイスクローンを企業が生成したり利用したりする際は、トラブルを避ける対策を講じる必要があるでしょう。
では、日本にボイスクローンを直接規制する法律はあるのでしょうか?また、企業がボイスクローンを生成・利用する際は、どのような点に注意すればよいのでしょうか?
今回は、ボイスクローン(音声クローン)に関する法規制や企業がボイスクローンを生成・利用する際の注意点、ボイスクローンに関するトラブルを避ける対策などについて弁護士がくわしく解説します。
なお、当事務所(伊藤海法律事務所)はカルチャー・テクノロジー法務に特化しており、ボイスクローンなどAIに関する法務やAIに関するトラブル対応に力を入れています。ボイスクローンの導入に興味があるものの法務面での不安を感じている事業者様は、伊藤海法律事務所までお気軽にご相談ください。
▼この記事のポイント
- 2026年8月現在、日本にはボイスクローンを直接規制する法律は存在しない
- 企業がボイスクローンを生成・利用する際は、声の「持ち主」である本人から許諾を得ることやライセンスの範囲や条件を明確にすることなどに注意する
- 企業がボイスクローンに関するトラブルを避ける対策としては、ボイスクローンの目的を明確にすることやプラットフォームのルールを確認することなどが挙げられる
ボイスクローン(音声クローン)とは?
ボイスクローンとは、AIを活用し、本人の声とそっくりな音声を生成する技術です。声の質だけではなく、抑揚の付け方や話す速度などを真似ることも可能であり、少し聞いただけではクローンであると分からないことも多いでしょう。
ボイスクローンの用途は、非常に多様です。たとえば、次の用途などが挙げられます。
- ボイスクローンに動画のナレーションをさせる
- ホームページに問い合わせ用のボイスチャットを設置する
- 自分の声を外国語に翻訳する
- 病気などで発声が難しくなった人の声を「再生」する
ただし、ボイスクローンは詐欺などに悪用されるケースもあります。たとえば、身内や上司の声などがクローン化され、電話で虚偽の送金を指示される詐欺などが想定されます。このような詐欺があることを知っておくことで、被害の抑止につながるでしょう。
ボイスクローン(音声クローン)を直接規制する法律はある?
2026年8月現在において、日本にはボイスクローンを直接規制する法律はありません。しかし、著名人の声を無断でクローン化して公表するなどすれば、パブリシティ権の侵害にあたり法的措置の対象となる可能性があります。
ここでは、ボイスクローンに関する法規制について、順を追って解説します。
2026年8月現在、日本ではボイスクローンを直接規制する法律はない
先ほど解説したように、2026年8月現在、ボイスクローンを直接規制する法律は日本にありません。つまり、ボイスクローンを生成したりこれを活用したりしても、これ自体が直ちに違法になることはないということです。
著名人の声の無断でのクローン化は、パブリシティ権の侵害や不正競争防止法違反にあたる可能性がある
ボイスクローンの生成や活用が直ちに違法になるわけではないとはいえ、「ボイスクローンを使って」犯罪行為や権利侵害をすれば、罪に問われたり法的措置をとられたりする可能性があります。
これは、「スマートフォンを持つこと自体は違法ではないものの、このスマートフォンを使って詐欺電話を掛けることは犯罪であるし、スマートフォンのカメラで無断で撮影した他者の個人情報を無断でインターネット上に掲載すれば損害賠償請求の対象となり得る」のと同様のイメージです。
たとえば、ボイスクローンを使って詐欺を働いて財物をだまし取る行為は、詐欺罪(刑法246条)にあたる可能性が高いでしょう。
また、声優など著名人の声を無断でクローン化してこれをSNSなどに投稿したり広告に使用したりすれば、パブリシティ権の侵害や不正競争防止法違反にあたる可能性があります。
パブリシティ権とは、著名人が有する「顧客吸引力」から得られる経済的な価値を独占的に利用する権利です。著名人の声の無断でのクローン化は、このパブリシティ権の侵害にあたる可能性があります。
また、不正競争防止法とは、不正な競争を防止し、国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする法律です。著名人の音声を利用して収益を得ようとすることなどは、不正競争防止法による次の「不正競争」にあたる可能性があります。
- 周知表示混同惹起行為
- 著名表示冒用行為
- 誤認惹起行為
これらに該当する場合には、差止請求や損害賠償請求などの対象となる可能性があります。
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企業がボイスクローンを生成・利用する際の注意点
企業がボイスクローンを生成・利用する際は、次の点などに注意が必要です。
- 声の「持ち主」である本人から許諾を得る
- ライセンスの範囲や条件を明確にする
- 他者を欺く目的で利用しない
- 国や地域、プラットフォームごとに法律やルールが異なる可能性があることを知っておく
ここでは、それぞれの注意点について解説します。
なお、伊藤海法律事務所はカルチャー・テクノロジー法務に特化しており、これらの業界に携わる企業様への豊富なサポート実績を有しています。ボイスクローンを活用したいものの法務面への不安を感じている際には、伊藤海法律事務所までお気軽にご相談ください。
声の「持ち主」である本人から許諾を得る
ボイスクローンを生成しようとする際は、必ず声の「持ち主」本人から許諾を得ておきましょう。他者の声を無断でクローン化してしまうと、トラブルや法的措置の原因となりかねないためです。
また、許諾は書面で得ておくことをおすすめします。たとえば、従業員などから口頭で許諾を得る場合、その従業員が退職時にボイスクローンの利用をやめるよう求めるなどしてトラブルに発展するおそれがあるためです。
ライセンスの範囲や条件を明確にする
声のクローン化について許諾を得る際は、ライセンスの範囲やその条件を明確にしておくべきでしょう。その音声を「どのような目的で、いつまで使えるか」を明確にしておくことで、後のトラブル予防につながります。
他者を欺く目的で利用しない
当然ながら、ボイスクローンを他者を欺く目的で利用してはなりません。このような行為をすれば詐欺罪などの犯罪にあたる可能性があるほか、企業イメージの低下も避けられないでしょう。
また、「だまして金銭を奪おう」とまでの意図はなく、「声優(や、その声優が演じているキャラクター)が意外なことを言っている(ように見える)動画を配信したらバズるかもしれない」という意図であっても、他者を欺く目的での利用は避けるべきです。このような利用をすると、声優側からパブリシティ権の侵害などを理由に法的措置がとられる可能性があります。
実際に、声優の津田健次郎氏の声(のようなもの)がナレーションをする動画が無断でTikTok上に投稿されたことを受け、津田氏側が提訴する事件なども発生しています。
国や地域、プラットフォームごとに法律やルールが異なる可能性があることを知っておく
ボイスクローンを生成したり活用したりするにあたっては、国や地域により異なる法規制がされている可能性があることに注意すべきでしょう。
たとえば、EU域内にコンテンツが流通する場合には、AIによって生成した音声であることを明示しなければなりません。このように、国や地域によって一定の制約があったり義務が課されたりする可能性があるため、国外にコンテンツを流す場合には事前の確認が必要です。
また、コンテンツを掲載するプラットフォーム(TikTok、Instagram、X、YouTubeなど)によっても、独自の表示義務などが課されている可能性があります。そのため、コンテンツを掲載する前に、プラットフォームのガイドラインやポリシーも確認しておく必要があるでしょう。
ボイスクローンに関して企業がトラブルを避ける対策
企業がボイスクローンに関するトラブルを避けるためには、次の対策を講じることをおすすめします。
- ボイスクローンの目的を明確にする
- コンテンツを流通させる地域の法律・プラットフォームのルールを確認する
- 許諾の得られない相手の声を利用しない
- 弁護士のサポートを受ける
ここでは、それぞれの対策について概要を解説します。
ボイスクローンの目的を明確にする
ボイスクローンに関するトラブルを避けるには、まずボイスクローンを生成・活用する目的を明確にすることをおすすめします。明確な目的がないままに「声」を集めようとする場合、明確な同意を得ることさえ難しいためです。
そのため、まずは「何のためにボイスクローンを生成・活用するのか」を明確にすることから始めましょう。
コンテンツを流通させる地域の法律・プラットフォームのルールを確認する
ボイスクローンによるトラブルを避けるには、コンテンツを流通させる地域の法律やプラットフォームのガイドラインなどを確認することも必要です。
先ほど解説したように、国や地域によってはボイスクローンを規制している可能性があるほか、プラットフォームによっても独自のガイドラインを定めている可能性があるためです。
これらを知らないままコンテンツを流通させれば、海外の法令に違反して罰則の対象となったり、プラットフォームからペナルティを受けたりするかもしれません。
許諾の得られない相手の声を利用しない
トラブルを避けるため、許諾の得られていない相手の声を無断でクローン化することは避けるべきでしょう。たとえ「社内用であり、公開しない」という認識であっても、その後これが公開される事態となれば、大きなトラブルに発展するおそれがあるためです。
そのため、声をクローン化する際には、本人の許諾の獲得を徹底することをおすすめします。
弁護士のサポートを受ける
ボイスクローンに関する思わぬトラブルを避けるため、ボイスクローンをビジネスに取り入れようとする際は弁護士に相談することをおすすめします。弁護士とともにビジネスモデルを慎重に検討することで、思わぬ法律違反や権利侵害を回避しやすくなるでしょう。
伊藤海法律事務所は、ボイスクローンなどのAIに関して豊富なサポート実績を有しています。ボイスクローンの法務について相談できる弁護士をお探しの際は、伊藤海法律事務所までお気軽にご連絡ください。
ボイスクローンについて相談できる弁護士なら伊藤海法律事務所へご相談ください
ボイスクローンについてサポートが受けられる弁護士をお探しの際は、伊藤海法律事務所までご相談ください。ここでは、当事務所の主な特長を4つ紹介します。
- カルチャー・テクノロジー法務に特化している
- 代表は弁理士でもあり、知財保護のサポートも可能である
- 4種類の顧問プランを展開している
- 英文契約書にも対応している
カルチャー・テクノロジー法務に特化している
伊藤海法律事務所は、カルチャー・テクノロジー法務に特化しています。ビジネスモデルの構築や声の権利が侵害された際の法的措置、社内規程の整備など豊富なサポート実績を有しており、状況やご希望に応じた柔軟なサポートを提供できます。
代表は弁理士でもあり、知財保護のサポートも可能である
伊藤海法律事務所の代表である伊藤海は、弁護士のほかに弁理士資格も有しています。弁理士は、知財保護を専門とする国家資格です。
そのため、ボイスクローンに関する知財の保護から知財侵害時の対応に至るまで、総合的なサポートが可能です。
4種類の顧問プランを展開している
伊藤海法律事務所は、顧問料や顧問料に含まれるサポート内容の異なる4種類の顧問プランを展開しています。
| プラン | 概要 |
| スタンダードプラン | 個人事業主やフリーランス、比較的小規模な中小企業などを想定したプラン |
| リーガルプラン | 一般的な中小企業からメガベンチャーなどを想定したプラン |
| コーポレートプラン | 上場企業などを想定したプラン |
| 包括的法務受託 | 実質的な法務部として稼働するプラン |
そのため、自社の規模・ステージや弁護士に希望する稼働内容などに適したプランを選択できます。
英文契約書にも対応している
ボイスクローンをビジネスに取り入れるにあたって、海外の企業や個人と契約を締結すべき場合もあるでしょう。伊藤海法律事務所は英文契約書にも対応しており、海外との契約についても一貫したサポートを提供できます。
ボイスクローンの法律に関するよくある質問
最後に、ボイスクローンの法律に関するよくある質問とその回答を2つ紹介します。
誰でも無料で聴ける音声であれば無断でクローン化してもよい?
無料で聴ける音声であるからといって、無断でクローン化してよいわけではありません。仮にインターネット上などで「声」が無料で聴ける状態になっていても、無断で声をクローン化することが許諾されているわけではないためです。
インターネット上で公開されている「声」を無断でクローン化して公開すれば、パブリシティ権の侵害などにあたる可能性があります。
自身の声が無断でクローン化されている可能性がある場合、どうすればよい?
自分の声が無断でクローン化されていることに気付いたら、早期に弁護士に相談するとよいでしょう。そのうえで、状況に応じて差止請求や損害賠償請求などの法的措置を講じます。
相談先には、AIに関する法務や声の権利保護に強い事務所を選ぶのがおすすめです。お困りの際は、伊藤海法律事務所までご相談ください。
まとめ
ボイスクローン(音声クローン)の概要やボイスクローンに関する法律、企業がボイスクローンを活用する際の注意点などについて解説しました。
2026年8月現在、日本にはボイスクローンの生成や利用を直接規制する法律はありません。しかし、ボイスクローンの用途によっては詐欺罪などの犯罪に該当したり、パブリシティ権などの権利侵害にあたったりする可能性があります。
企業がボイスクローンを活用しようとする際はボイスクローンの目的を明確にしたうえで、「声」の提供者からの許諾を徹底するなどの対策を講じるとよいでしょう。弁護士のサポートを受けることで、ボイスクローンの用途や目的に応じた的確な対策を講じることが可能となります。
伊藤海法律事務所はカルチャー・テクノロジー法務に特化しており、ボイスクローンなどAI関連の法務について豊富なサポート実績を有しています。ボイスクローンをビジネスに取り入れたいものの、法務面での不安を感じている事業者様は、伊藤海法律事務所までまずはお気軽にご相談ください。



