タレントに公演や映画、広告などに出演してもらう際は、出演契約書の締結が必要です。的確な契約書を締結しておくことで二次利用などがスムーズとなるほか、トラブルの予防にもつながります。

では、タレント出演契約書には、どのような条項を設ければ良いのでしょうか?また、タレント出演契約書は、どのような点に注意して作成すれば良いのでしょうか?今回は、タレント出演契約書の概要やタレント出演契約書を締結すべき場面、タレント出演契約書に盛り込むべき主な条項、作成のポイントなどについて、弁護士がくわしく解説します。

なお、当事務所(伊藤海法律事務所)は芸能・エンタメ法務に特化しており、タレント出演契約書の作成やレビューについても豊富なサポート実績を有しています。タレント出演契約書について相談できる弁護士をお探しの際は、伊藤海法律事務所までお気軽にご連絡ください。

タレント出演契約書とは?

タレント出演契約書とは、タレント等に舞台や映画、広告などへ出演してもらう際に締結する契約です。出演してもらう作品などを明確にするとともに、報酬額や著作権の取り扱いなどについて定めます。

一般的には、民法上の請負契約に該当することが多いでしょう。請負契約とは、「当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる」契約です(民法632条)。

タレント出演契約書の締結が必要となるのは、タレント等に出演してもらう際です。ここでは、主な場面を4つ解説します。

  • タレント等を広告に起用する際
  • タレント等を映画・テレビ番組に出演させる際
  • タレント等を舞台に出演させる際
  • タレント等をイベント等に登壇させる際

タレント等を広告に起用する際

タレント等を広告に起用する際は、出演契約書の締結が必要です。広告の出稿先(テレビCM、web広告、紙媒体のポスター、店頭POP、自社ホームページなど)を明確にしたうえで、掲載期間も明記しましょう。

タレント等を映画・テレビ番組に出演させる際

タレント等を映画やテレビに出演させる際には、出演契約書の締結が必要です。出演するテレビ・映画のタイトルや放映時間、役柄がある場合にはその役柄名、撮影期間などを明確に定めます。特に、テレビドラマや映画への出演では撮影期間が長期に及ぶことも多いため、タレント等の髪型の変更などに制約を加える必要がある場合には、契約書でその旨を明記しておくべきでしょう。

タレント等を舞台に出演させる際

タレント等を舞台に出演させる際には、出演契約書の締結が必要です。出演する公演のタイトルや役柄名などのほか、リハーサルなどによる拘束時間も明記します。

また、舞台をその後DVD化して販売したりテレビで放映したりする予定がある場合はその旨を明記したうえで、著作権など知財面の取り扱いについても記載しておくべきでしょう。

タレント等をイベント等に登壇させる際

タレント等をイベントに登壇させる際は、出演契約書の締結が必要です。イベントの日時やリハーサルがある場合はその日時などを明確に定めておきましょう。

このように、タレント等と出演契約書を締結すべき場面は少なくありません。また、契約書に記載すべき内容や注意点も、出演先などによって異なります。

そのため、弁護士へ相談したうえで、状況に合った的確な契約書を締結すべきでしょう。お困りの際は、伊藤海法律事務所までお気軽にご相談ください。

タレント出演契約書に設けるべき主な条項

タレント出演契約書には、どのような条項を設ける必要があるのでしょうか?ここでは、タレント出演契約書に設けるべき主な条項とポイントを解説します。

  • 出演の対象となる舞台・メディア等の情報
  • 付属業務がある場合は、その情報
  • 報酬
  • 諸経費の負担
  • 著作権・実演家の権利の取り扱い
  • 秘密保持
  • 契約解除・損害賠償

なお、ここで紹介する条項は一例であり、実際には状況や契約の目的に応じて必要な条項を検討していくこととなります。タレント出演契約書の作成でお困りの際は、伊藤海法律事務所までご相談ください。

出演の対象となる舞台・メディア等の情報

タレント出演契約書には、出演の対象となる舞台やメディアの情報を明記します。

たとえば、舞台であれば公演日時と公演タイトル、そのタレント等の役柄などです。DVD化などを予定している場合には、その旨も明記します。一方で、映画であれば作品タイトルや公開日、撮影場所、撮影期間などを記載することが多いでしょう。

なお、契約締結時点でタイトルなどが未定である場合もあります。その場合には、契約書には「未定」と記載したうえで、最終決定のタイミングや決定後の通知方法などを記載します。

付属業務がある場合は、その情報

タレント等の出演にあたっては、リハーサルや舞台稽古、ポスター撮影、メイキングフィルム撮影協力、舞台挨拶、プロモーションのための番組出演などの付属業務が生じる場合があります。

その場合には、想定される付属業務の内容や日数、その付属業務の報酬が出演契約の報酬に含まれているか否かなどを明記しましょう。

報酬

タレント出演契約書には、タレント等に支払う報酬額と支払時期を明記します。

出演契約の報酬は、固定額であることが一般的です。ただし、「一式」として全体の報酬額を定める場合のほか、稼働日数に応じて「1日当たり」とする場合や、「1ヶ月あたり」「1週あたり」として定める場合などもあります。報酬額について齟齬が生じないよう、明確に記載しましょう。

また、付属業務のうち基本の報酬額に含まれないものがある場合にはその旨を明記したうえで、付属業務の報酬額やその支払時期も記載します。

諸経費の負担

タレント等の出演にあたっては、交通費や宿泊費などの諸経費が生じます。契約書では、これらの諸経費の負担(発注者の負担とするか、タレント等の負担とするか)を定めます。

また、発注者の負担とする場合は、領収証などの提出を条件とすることも多いでしょう。その場合には、「いつからいつまでに提出された領収証分の経費を、いつまでに支払うか」についても明記します。

著作権・実演家の権利の取り扱い

タレント等の出演契約書でもっとも重要な条項は、この著作権や実演家の権利の取り扱いに関する条項であるといっても過言ではないでしょう。この条項に問題があれば、想定した用途で作品を活用できない可能性が生じるためです。

タレント等の出演にあたってタレント等が権利を有する著作物を演じる場合には、適切な範囲でその利用許諾や権利の譲渡などを行います。

また、タレント等が自己の著作物を演じる場合のほか、発注者側が用意した台本を演じる場合であっても、タレント等には実演家の権利が発生します。実演家の権利は著作隣接権の1つであり、自分の実演について実演家の名誉や声望を害する改変をされない権利である「同一性保持権」や、自分の実演を録音・録画する権利である「録音権・録画権」、自分の実演を放送・有線放送する権利である「放送権・有線放送権」などを有します。つまり、この権利について的確に処理をしなければ、タレント等の実演を録音・録画したり、テレビ放映したりすることができないということです。

そこで、タレント出演契約書では、実演の録音・録画をすることや放送・有線放送をすることなど、出演作の用途に応じて必要な許諾を受ける条項を盛り込みます。また、作品化にあたって必要となる公正な改変がタレント等の側から「名誉や声望を害する改変」であると主張されてトラブルになる事態を避けるため、作品の態様や用途に応じた必要な改変を許諾する旨の条項も盛り込んでおくべきでしょう。

秘密保持

タレント出演契約書では、秘密保持条項を設けます。これは、業務の遂行によって知り得た相手方の秘密を漏洩させないための条項です。

秘密保持義務はタレント等が発注者に対して負うだけではなく、発注者もタレント等に対して負う義務とすることが多いでしょう。発注者としては、情報解禁日より前に作品の情報が洩れることや、いわゆる「ネタバレ」をされる事態を避けたいと思います。

一方で、撮影が長期にわたる場合にはタレント等と発注者側がともに過ごす時間が長くなりやすく、その中でタレント等の秘密(宗教や、プライベートな習慣など)を知る機会もあるかもしれません。そこで、トラブルを防止するため、双方ともに守秘義務を負う条項を設けることが一般的です。

なお、すべての情報についていつまでも守秘義務を負うことは現実的ではないことから、守秘義務の対象を明確にするために、一定の情報については守秘義務が解除される旨を記載することが多いでしょう。一定の情報とは、たとえば「開示を受けた時に既に公知であった情報」や、「開示を受けた後で公知となった情報」などです。

契約解除・損害賠償

タレント出演契約書では、契約解除の具体的な方法について定めます。たとえば、「相手方が本契約に違反した場合、相手方にその是正を求めてから〇日以内に是正されない場合には、本契約を解除することができる」などです。このように定めておくことで、万が一トラブルが発生した際の対応がスムーズとなります。

併せて、相手方の契約違反によって契約を解除した場合であっても、損害賠償請求ができる旨も定めておくと良いでしょう。また、損害賠償の予定額を定める場合もあります。

ただし、先ほど解説したように、タレント出演契約書に設けるべき条項は契約の目的や状況などによって変動します。そのため、実際に締結しようとする契約書の作成は、弁護士のサポートを受けて行うのがおすすめです。お困りの際は、伊藤海法律事務所までお気軽にご相談ください。

タレント出演契約書の主なポイント

タレント出演契約書の作成・締結にあたっては、どのような点に注意する必要があるのでしょうか?ここでは、主なポイントを3つ解説します。

  • 業務範囲を明確にする
  • 未成年者の場合には親権者の同意を得る
  • 知財の取り扱いを明確にする

業務範囲を明確にする

1つ目は、業務範囲を明確にすることです。「いつどのような公演や撮影などに出演してもらうのか」、「役柄はどのようなものであるのか」のほか、「リハーサルはいつ行うのか」など、タレント等の協力が必要となる業務を漏れなく記載しておきましょう。

未成年者の場合には親権者の同意を得る

2つ目は、タレント等が未成年である場合には、親権者の同意を得ることです。

親権者の同意のないまま契約を締結すれば、後から親権者から契約が取り消されるなどのトラブルに発展するかもしれません。そのため、タレント等が未成年である場合は契約書に親権者の署名押印欄を設け、事前に同意を取り付けておきましょう。

知財の取り扱いを明確にする

3つ目は、知財の取り扱いを明確にすることです。

タレント等が出演する番組や公演の内容によるものの、タレント等が歌う楽曲やダンスの振り付けなどの著作権は、タレント等の側に帰属するのが一般的です。また、たとえば主催者側が用意した台本をタレント等が演じる場合であっても、タレント等は実演家の権利を有します。これらの権利を適切に処理しておかなければ、たとえば公演のDVD化やネット配信などにあたって障害となり、予定した二次利用が困難となるかもしれません。

そのため、想定している二次利用の内容に応じて、出演契約書内で著作権などの知財を的確に処理しておく必要があります。

タレント出演契約書に関するよくある質問

続いて、タレント出演契約書に関するよくある質問とその回答を2つ紹介します。

タレント出演契約書はひな型をそのまま使ってもよい?

タレント出演契約書の作成にあたって、ひな型をそのまま使うことはおすすめできません。なぜなら、ひな型はあくまでもあるケースを前提とした一例でしかなく、自社が締結しようとする実際の契約実態に合致している保証はないためです。

とはいえ、ひな型を作り変えるにも法令や契約への正しい理解が必要であり、これを自社だけで的確に行うのは容易ではないでしょう。そのため、タレント出演契約書は、弁護士のサポートを受けて作成することをおすすめします。お困りの際は、伊藤海法律事務所までお気軽にご相談ください。

タレント出演契約書に印紙は必要?

タレント出演契約書は「請負に関する契約書」に該当する場合が多く、この場合には契約書に記載された金額に応じて印紙税の課税対象となります。また、「継続的取引の基本となる契約書」に当たる場合には、一律4,000円の印紙税がかかります。契約書の内容によって印紙税法上の取り扱いが異なることとなるため、事前に確認しておくと良いでしょう。

なお、印紙税は紙の契約書を課税対象とすることから、電子契約である場合は印紙税はかかりません。

タレント出演契約書に関するご相談は伊藤海法律事務所にお任せください

タレント出演契約書に関するご相談は、伊藤海法律事務所にお任せください。最後に、当事務所の主な特長を3つ紹介します。

  • 芸能・エンタメ法務に特化している
  • 代表は弁理士でもあり、知財に強い
  • 英文契約書にも対応している

芸能・エンタメ法務に特化している

芸能業界では特殊な取引慣習なども少なくないため、より的確なリーガルサポートを受けるには、業界事情にくわしい弁護士へご相談ください。伊藤海法律事務所は芸能・エンタメ法務に特化しており、タレント等と締結する出演契約書についても豊富なサポート実績を有しているため、安心してお任せいただけます。

代表は弁理士でもあり、知財に強い

先ほど解説したように、タレント出演契約書では、知財の取り扱いに特に注意が必要です。契約締結段階で知財の適切な処理ができていなければ二次利用などが困難となり、想定した展開ができなくなるかもしれません。

伊藤海法律事務所の代表弁護士である伊藤海は、弁護士のほかに弁理士資格も有しています。そのため、知財の的確な保護や処理が実現できます。

英文契約書にも対応している

タレント等に出演依頼をする企業では、海外の企業や個人と契約を締結すべき場面もあるでしょう。伊藤海法律事務所は英文の契約書にも対応しているため、海外との契約締結に際しても一貫したサポートが実現できます。

まとめ

タレント出演契約書について、概要や締結すべき場面、設けるべき主な条項、作成のポイントなどを解説しました。

タレント出演契約書とは、タレント等に広告や舞台、テレビ番組、映画などに出演してもらう際に締結すべき契約です。契約書には、出演する舞台などを特定できる情報や報酬額、リハーサルなどの付属業務がある場合はその内容、著作権の取り扱いなどについて定めます。的確な出演契約書を交わすことで二次利用などがスムーズとなるほか、トラブルの抑止につながります。

とはいえ、自社だけで的確な出演契約書を作成することが難しい場合もあるでしょう。その際は、弁護士のサポートを受けることをおすすめします。

伊藤海法律事務所は芸能・エンターテイメント法務に特化しており、タレント等と取り交わす出演契約書の作成やレビューについても豊富なサポート実績を有しています。タレント出演契約書についてお悩みの際は、伊藤海法律事務所までまずはお気軽にご相談ください。

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