キャラクタービジネスを展開する中で避けて通れない契約の1つに、「キャラクターライセンス契約」があります。キャラクターライセンス契約を的確に締結しなければ、トラブルの原因ともなりかねません。

では、キャラクターライセンス契約とはどのような契約なのでしょうか?またキャラクターライセンス契約には、どのような条項を設ける必要があるのでしょうか?今回は、キャラクターライセンス契約の概要や主な契約条項、キャラクターライセンス契約の作り方などについて弁護士がくわしく解説します。

なお、当事務所(伊藤海法律事務所)はカルチャー・エンターテイメント法務に強みを有しており、キャラクターライセンス契約についても豊富なサポート実績を有しています。キャラクターライセンス契約の締結について相談できる弁護士をお探しの際は、伊藤海法律事務所までお気軽にご相談ください。

キャラクターライセンス契約とは?

キャラクターライセンス契約とは、キャラクターの知的財産権を有する者(「ライセンサー」といいます)が、他者(「ライセンシー」といいます)に対し、一定の範囲でキャラクターの使用を認める契約のことです。

キャラクターライセンス契約におけるライセンサーの主な目的は、ライセンス契約により収入を得ることにあります。一方で、ライセンシーの主な目的は、キャラクターの知名度を活かして自社の知名度を向上させたり、そのキャラクターを用いた自社製品の売上を伸ばしたりすることにあるでしょう。

キャラクターライセンス契約は物品の売買などとは異なり、直接的には目に見えないもの(キャラクターの著作権や商標権)を対象とします。また、契約期間が長期にわたることも少なくありません。そのため、無用なトラブルを避けるためにも、契約書は必須であるといえます。

キャラクターライセンス契約で知っておくべき「著作権」と「著作者人格権」の基本

キャラクターライセンス契約を締結しようとする場合、前提として「著作権」と「著作者人格権」について理解しておく必要があります。ここでは、キャラクターライセンス契約の観点から、それぞれの概要について解説します。

キャラクターの著作権とは?

著作権とは、著作物を保護する権利です。著作物とは「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう」とされています(著作権法2条1項1号)。

著作物は「創作的に表現」されたものであり、キャラクターの設定そのもの(例:未来から来た青色のネコ型のロボットという設定)は著作物ではありません。しかし、キャラクターを描いたイラストや漫画のコマ割りなどは著作権の保護対象となるため、キャラクターを自社製品などに印字するには著作権者によるライセンス(許諾)が必要です。

著作権は1つの権利ではなく、「権利の束」と表現されます。たとえば、著作物を有形的に複製する権利である「複製権」や著作物の複製物などを公衆へ譲渡する権利である「譲渡権」、平面のイラストをぬいぐるみにするなど著作物を翻案する「翻案権」などです。これらの中から想定するキャラクタービジネスの展開において必要な権利を選定し、ライセンスを受けることとなります。

なお、キャラクターそのものは著作権の保護対象ではないことから、キャラクターの権利をより強く保護するために、キャラクターの名称について商標登録をすることも少なくありません。商標とは自社の製品やサービスを表す名称やロゴマークなどであり、特許庁に出願して登録を受けることで商標権が獲得できます。

そのため、キャラクターライセンス契約にあたっては、著作権のみならず、商標権についても実施許諾を得ておくべきでしょう。

著作者人格権とは?

著作者人格権とは、著作者の人格的な利益を保護する権利です。著作者人格権には、主に次の3つの権利があります。

  • 公表権:未公表の自分の著作物を公表するか否か、公表するとすればいつどのような方法で公表するかを決める権利
  • 氏名表示権:自分の著作物を公表する際、著作者名を表示するか否か、表示するとすれば実名・変名のいずれを表示するかを決める権利
  • 同一性保持権:自分の著作物の内容や題号を意に反して改変されない権利

先ほど解説した著作権は譲渡可能であり、著作物を創作した「著作者」がA氏であってもその後B社に著作権が譲渡されているのであれば、「著作権者」はB社です。一方で、著作者人格権は「著作者」に一身専属的に帰属するものであり、譲渡できません。つまり、著作権がB社に譲渡されているとしても、著作者人格権を有しているのはA氏のままということです。

キャラクターライセンス契約を締結する場合には、この著作者人格権にも配慮する必要があります。

キャラクターの著作権を侵害するとどうなる?

キャラクターの著作権を侵害すると、権利者からの差止請求や損害賠償請求の対象となります。差止請求の対象となり、いったん流通させた製品の回収や廃棄が必要となれば、多額の損失が生じかねないでしょう。

また、意図的な侵害の場合には、刑事罰も適用されます。著作権侵害の刑事罰は、10年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金またはこれらの併科です(同119条)。また、法人の業務の一環で著作権侵害がされた場合には、法人も3億円以下の罰金刑の対象となります(同124条1項)。

著作権侵害のリスクは非常に大きいため、万が一にも侵害行為にあたらないよう、的確な権利処理をしておきましょう。ライセンス契約の締結でお困りの際は、伊藤海法律事務所までご相談ください。

キャラクターライセンス契約に設けるべき主な条項とおポイント

キャラクターライセンス契約には、どのような条項を設ける必要があるのでしょうか?ここでは、キャラクターライセンス契約に設けるべき主な条項とそれぞれのポイントを解説します。

  • キャラクターの使用許諾範囲
  • 独占・非独占の別
  • ライセンス料
  • 事前承認
  • 著作者人格権の取り扱い
  • キャラクターの改変・二次利用
  • ライセンシーの遵守事項
  • キャラクターの使用許諾期間・更新

キャラクターの使用許諾範囲

キャラクターライセンス契約を締結する場合であってもキャラクターの使用を無制限に許諾することは稀であり、地域や用途などを限定することが多いでしょう。そのため、キャラクターの使用許諾範囲を定めます。

ライセンサーとしては予期せぬ形でキャラクターが使用されてイメージが低下する事態を避けるため、許諾範囲は可能な限り限定したいと考えることが一般的です。一方で、ライセンシーとしては用途のバッファーを設けるため、ある程度広く許諾を受けたいと考えることが多いでしょう。そのため、交渉によってこの溝を埋め、交渉の結果を契約書に反映させる必要があります。

独占・非独占の別

キャラクターライセンス契約には、そのキャラクターについて重ねて他者にライセンスしないことを確約する「独占」の場合と、重ねて他者にライセンスする可能性がある「非独占」の場合とがあります。また、国や地域を限定して独占とする場合もあります。

この点に齟齬が生じれば大きなトラブルに発展しかねません。そのため、ライセンス契約書では、独占・非独占について明確に定めます。

ライセンス料

ライセンス契約書では、ライセンス料の額や算定方法、算定の基準となる期間などを定めます。ライセンス料の算定にあたって齟齬が生じないよう、この点は特に明確に記載しましょう。

ライセンス料は、定額とする場合のほか、そのキャラクターを用いた商品の売上に一定のパーセンテージを乗じて算定する場合、ライセンサーがそのキャラクターを用いて制作した商品の数量に一定額を乗じて算定する場合などがあります。

事前承認

キャラクターライセンス契約では、ライセンシーがライセンス対象であるキャラクターを冠した商品やチラシなどを世に出す前に、ライセンサーの承認を得るべきとすることがあります。事前承認を必要とする場合には、その旨を契約書に明記します。

著作者人格権の取り扱い

著作権者が著作者でもある場合、キャラクターライセンス契約では、著作者人格権の取り扱いについても定めることが一般的です。著作者人格権自体はライセンスをしたり譲渡をしたりすることはできないため、「本契約に定めた範囲での利用である限り、ライセンサーは著作者人格権を行使しない」など、著作者人格権を制限する条項を検討します。

キャラクターの改変・二次利用

キャラクターライセンス契約では、キャラクターの改変の可否や二次利用(再許諾)の可否についても定めます。これらを一切認めないとする場合もある一方で、一定の範囲や一定の手続きを踏んだうえで改変や二次利用を認める場合もあります。

ライセンシーの遵守事項

キャラクターライセンス契約において、ライセンサーとしては「絶対に守ってほしいこと」や「絶対にやってほしくないこと」などがあるでしょう。これを、文書化して契約条項として定めます。

また、違反時に契約解除ができる旨や損害賠償請求ができる旨、損害賠償請求の予定額などを定めることで違反の抑止力となるほか、万が一違反が生じた際の解除などがスムーズとなります。

キャラクターの使用許諾期間・更新

キャラクターライセンス契約では、許諾期間と更新の有無、更新の方法などについて定めます。

更新には、更新することを原則としたうえでいずれかから所定の方法で契約終了の意思表示があった場合に終了させる方法のほか、更新しないことを原則としたうえで所定の時期までに更新について合意ができた場合にのみ更新する方法などがあります。

キャラクターライセンス契約の作り方

キャラクターライセンス契約の作成には、ひな型をもとに自社で作成する方法と、弁護士に作成を依頼する方法があります。ここでは、それぞれの方法の概要や注意点を解説します。

ひな型をもとに自社で作成する方法

キャラクターライセンス契約書のひな型は、インターネットや書籍を探せば見つかることでしょう。しかし、ひな型をそのまま活用することはおすすめできません。なぜなら、ひな型はあくまでも一般的なケースを前提とした一例でしかなく、自社が締結しようとする契約実態に即している保証はないためです。

内容を十分に理解できないままひな型をそのまま流用してしまうと、契約書の記載と実態とに齟齬が生じて、トラブルの原因になるおそれが生じます。

また、ひな型を実態に合うように作り変えることも容易ではありません。ひな型を無理に自社で作り変えれば、無効となる条項が生じたり条項間の辻褄が合わなくなったりするおそれがあるためです。そのため、ひな型を自社で作り変えるのは、社内に法律や契約のプロフェッショナルがいる場合に限ることをおすすめします。

弁護士に依頼して作成する方法

キャラクターライセンス契約は、弁護士に依頼して作成するのがおすすめです。弁護士に依頼することで、契約実態に即した的確な契約書の作成が可能となるためです。

また、契約書の「正解」は1つではありません。ライセンシー側とライセンサー側とで、望ましい条項は異なることが一般的です。

弁護士に依頼する場合には、依頼者である自社にとって望ましい条項や、トラブル発生時に自社がスムーズに解決しやすくなる条項などを盛り込みやすくなります。

キャラクターライセンス契約の締結でお困りの際は、伊藤海法律事務所までご相談ください。当事務所の代表である伊藤海は弁護士のほか弁理士資格も有しており、キャラクターライセンス契約について専門性の高いリーガルサポートを提供します。

キャラクターライセンス契約に関するよくある質問

続いて、キャラクターライセンス契約に関するよくある質問とその回答を2つ紹介します。

キャラクターライセンス契約は著作権の譲渡?

キャラクターライセンス契約は、キャラクターの著作権譲渡契約ではありません。キャラクターライセンス契約はキャラクターに関する知財についてライセンシーに一定範囲での使用を許諾する契約であり、著作権はライセンサーに残ったままです。

キャラクターの著作権などの譲渡を受けたい場合には、キャラクターライセンス契約ではなく、著作権譲渡契約などを締結する必要があります。両者を混同しないよう、ご注意ください。

キャラクターライセンス契約は途中で解除できる?

キャラクターライセンス契約を契約期間の途中で解除できるか否かは、契約書の内容によって異なります。また、契約解除に際して損害賠償請求が可能であるか否かも、契約条項によって左右されます。

たとえば、ライセンサーが「ライセンシーがキャラクターを許諾範囲外で使用した場合には即刻契約を解除したい。その場合に生じた損害は、当社からライセンシーに請求したい」と考えるのであれば、その旨を契約条項として盛り込む必要があるということです。

同様に、ライセンシーが「想定よりもキャラクターライセンスによる売り上げが上がらなかったら、期間の中途でも契約を解除したい。その場合に、損害賠償請求はされたくない」と考えるのであれば、そのような内容の条項を契約書に盛り込めるよう、ライセンサーと交渉する必要があります。

キャラクターライセンス契約の条項を検討する際は、このように「契約の出口」についても検討しておく必要があるでしょう。

キャラクターライセンス契約は伊藤海法律事務所へご相談ください

キャラクターライセンス契約は、伊藤海法律事務所までご相談ください。最後に、当事務所の主な特長を4つ紹介します。

  • カルチャー・エンターテイメント法務に特化している
  • 連絡手段が多様にある
  • 多様な顧問プランを設けている
  • 英文契約書にも対応している

カルチャー・エンターテイメント法務に特化している

伊藤海法律事務所の代表である伊藤海は弁護士のほか弁理士資格も有しており、カルチャー・エンターテイメント法務に特化しています。

漫画家やデザイナー、イラストレーター、ゲーム制作会社、メーカー、アパレル会社などこの分野に携わるクライアント様が多く、的確なキャラクターライセンス契約の締結をサポートします。

連絡手段が多様にある

伊藤海法律事務所にご依頼いただく場合、電話や対面などのほか、LINEやChatwork、Slackなどによる連絡も可能となります。また、顧問契約を締結いただいた場合には、法務部のグループチャットに弁護士を追加できます。

これにより、自社が慣れているツールでのやり取りが可能となるほか、弁護士によるスピーディーなレスポンスも可能となります。

多様な顧問プランを設けている

伊藤海法律事務所は、次の4種類の顧問プランを設けています。

  • スタンダードプラン:比較的小規模な中小企業や創業間もないベンチャー、スモールビジネス、フリーランス、個人事業主等を想定したプラン
  • リーガルプラン:一般的な中小企業やメガベンチャー等を想定したプラン
  • コーポレートプラン:上場企業等を想定したプラン
  • 包括的法務受託:弁護士が実質的な法務部として稼働するプラン

そのため、自社の規模や成長ステージ、ニーズに合った無駄のないプランが選択できます。

英文契約書にも対応している

キャラクタービジネスを展開する企業は、海外の企業や個人と契約を締結する機会もあるでしょう。伊藤海法律事務所は英文契約書にも対応しているため、海外との契約であっても一貫したサポートが可能です。

まとめ

キャラクターライセンス契約の概要やキャラクターライセンス契約に設けるべき条項、キャラクターライセンス契約の作り方などを解説しました。

キャラクターライセンス契約を締結する際は、必ず契約書を取り交わすべきです。契約書には、キャラクターの使用許諾範囲や独占・非独占の別、ライセンス料などを定めましょう。契約実態に即した的確な契約書を作成するには法令や契約に関する知識と経験が必要となるため、弁護士に依頼することをおすすめします。

伊藤海法律事務所はカルチャー・エンターテイメント法務に特化しており、キャラクターライセンス契約のサポート実績も豊富です。キャラクターライセンス契約について相談できる弁護士をお探しの際は、伊藤海法律事務所までお気軽にお問い合わせください。

お気軽にお問い合わせください。