アニメの制作には、さまざまなプレイヤーが関与します。トラブルを未然に防ぎ、かつトラブル発生時にスムーズな解決をはかるためには、各プレイヤーとの間で契約を締結しておくべきでしょう。

では、アニメ制作には、主にどのようなプレイヤーが関与するのでしょうか?また、アニメ制作に関する契約について弁護士にサポートを受けることには、どのようなメリットがあるのでしょうか?今回は、アニメ制作にまつわる契約について、弁護士がくわしく解説します。

なお、当事務所(伊藤海法律事務所)はカルチャー・エンターテインメント法務に特化しており、アニメ制作にまつわる契約締結についても豊富なサポート実績を有しています。アニメ制作に関する契約書の作成やレビューなどについて相談できる弁護士をお探しの際は、伊藤海法律事務所までお気軽にお問い合わせください。

アニメ制作の主な方式

アニメの制作には、主に「広告収入方式」と「制作委員会方式」の2つがあります。はじめにそれぞれ概要を解説します。

広告収入方式

広告収入方式とは、テレビ局とアニメ制作会社が中心となってアニメ制作をする方式です。

アニメの制作はアニメ制作会社が行い、アニメ制作会社はライセンス料(放映権料)の支払いと引き換えに、テレビ局にアニメの放映を許諾します。テレビ局は広告代理店から広告収入を得て、広告代理店は広告主(スポンサー)から広告費を受け取ります。

アニメの制作費を広告収入で賄うことになるため、スポンサーの意向が反映されやすい(スポンサーに配慮した内容となりやすい)といえます。

制作委員会方式

制作委員会方式とは、複数の出資者から構成された「制作委員会」が中心となってアニメ制作をする方式です。制作委員会への出資者としては、テレビ局やアニメ制作会社、広告代理店、出版社、グッズ制作会社などが挙げられます。

制作委員会方式では、各出資者の出資金を元手としてアニメ制作を行います。実際のアニメ制作は、出資者でもあるアニメ制作会社に委託することが多いでしょう。そのうえで、アニメの放映やグッズ化などの二次利用によって得られた収入を、事前に取り決めた配分によって出資者に配分します。

なお、制作委員会は株式会社などではなく、民法上の任意組合に該当します。そのため、制作委員会自体は契約の締結権を持たず、著作権などの資産を保有することもできません。

そのため、出資者の中から制作委員会の中心となって契約締結や資産管理などを担う「幹事会社」を選定し、その幹事会社が契約の締結などを行います。また、二次利用などのライセンス契約などは、出資者である各会社が窓口となって締結することが一般的です。

アニメ制作で契約締結が必要となる主なプレイヤー

アニメ制作には、多くのプレイヤーが関与します。ここでは、主なプレイヤーとそれぞれが担う主な役割を紹介します。

  • 原作者
  • 出版社
  • アニメ制作会社
  • アニメ制作委員会
  • テレビ局
  • 音楽会社
  • 広告代理店
  • グッズ制作会社

原作者

原作者は、原作者はそのアニメを世に生み出した人物です。アニメ化にあたってはまず出版社の合意を得て(もしくは、出版社がプロデューサーなどにアニメ化の企画を持ち込み合意をして)、その後原作者からアニメ化(二次利用)の許諾を得ることとなります。

なお、原作者がいなければそのアニメは誕生しなかったのであり、アニメ制作にあたってはリスペクトすべきでしょう。原作者をリスペクトして世界観やキャラ設定などを壊さないようにすることは、ファンを失望させないことにもつながります。

出版社

出版社は、原作者から許諾を受けてアニメ原作の管理を担います。事実上、原作者との窓口を担うことも少なくありません。また、必要に応じてアニメ化へ向けた営業活動を行います。原作のアニメ化に成功すれば原作の売上も伸び、出版社としても利益が得られるためです。

さらに、制作委員会に名を連ねるなど、より積極的にアニメ制作に関わることもあります。

アニメ制作会社

アニメ制作会社は、アニメコンテンツの制作を担います。1社だけで完結することは稀であり、元請けとなる会社が下請会社や美術会社などに制作に関する業務を委託します。さらに、孫請けなどへ多重で業務が下請けがされることも少なくありません。

広告収入方式の場合、原則として、アニメの著作権はこのアニメ制作会社が保有することとなります。一方で、制作委員会方式の場合には契約によって制作委員会の各構成企業へと著作権が譲渡され、著作権は各構成企業による共有となることが一般的です。

アニメ制作委員会

制作委員会方式の場合、この制作委員会が中心となってアニメ化を進めます。具体的には、各出資者から集めた資金を元手に、アニメ制作会社に対してコンテンツ制作を発注します。

そのうえで、出来上がったアニメについてテレビ局に放映の許諾をしてライセンス料を得たり、グッズ制作会社にキャラクター使用などの許諾をしてライセンス料を得たりします。得た収入は事前に取り決めた計算方法に従って各出資者へと分配されます。

テレビ局

テレビ局は、アニメのテレビ放映を行います。

広告収入方式の場合には、テレビ局が中心となってアニメ制作を企画し、広告収入で制作費を回収します。一方で、制作委員会の場合にテレビ局も出資者となり、制作委員会の構成員となることが多いでしょう。

音楽会社

音楽会社は、アニメの音楽制作を担います。また、音楽には独自の著作権が発生するため、その著作権の管理や利用の許諾などを行ってライセンス料を得ます。

広告代理店

広告収入方式の場合、広告代理店はテレビ局とともに中心となり、アニメ制作を企画します。そのうえで、スポンサーを募り、スポンサーから広告費を得ます。また、アニメが放映される際には、事前の契約に基づいて放送枠の買取りなどを行います。

制作委員会方式の場合には、出資者として名を連ねることも珍しくありません。

グッズ制作会社

グッズ制作会社やおもちゃメーカーは権利者から許諾を受け、キャラクターグッズなどアニメ関連商品の販売を行って収益を得ます。また、制作委員会方式の場合は、グッズ制作会社が出資者となる場合もあります。

アニメ制作で各プレイヤーと契約書を締結すべき理由

先ほど解説したように、アニメ制作にはさまざまなプレイヤーが関与します。そして、各プレイヤーとの間では適宜契約を締結しておくべきでしょう。ここでは、アニメ制作にあたって契約を締結すべき主な理由を4つ解説します。

  • 合意内容が明確となるから
  • 法律とは異なる取り決めが可能となるから
  • 契約当事者が重視したいポイントが明確となるから
  • トラブル発生時の対応がスムーズとなりやすいから

合意内容が明確となるから

書面で契約書を締結しなかった場合、いったん合意した内容について「言った・言わない」や認識のズレによるトラブルが発生するおそれが生じます。

合意内容を書面化し、契約を取り交わすことで、合意内容が明確となります。また、書面化することで、万が一齟齬が生じていた場合であっても契約内容が走り出す前にそのことに気付きやすくなり、未然に交渉をすることが可能となります。

法律とは異なる取り決めが可能となるから

当事者間の契約は、原則として法律に優先されます。たとえば、請負契約に該当する場合、法律の規定によれば、報酬は仕事の目的物の引渡しと同時に支払うこととされています(民法633条)。しかし、実際には完成後、検収を経てから支払うとすることも多いでしょう。

このように、実際の取り決めの内容が法律の規定とは異なるケースは少なくありません。契約書を取り交わすことで、法律とは異なる取り決めをしたことが明確となり、原則として合意内容が法律に優先して適用されます。

契約当事者が重視したいポイントが明確となるから

契約書を取り交わすことで、契約当事者が重視したい事項が明確となります。特に、「遵守事項」や「禁止事項」などにはこれが反映されやすいでしょう。

遵守事項や禁止事項には、一般常識と取れる内容や、「その契約を締結するのであれば一般的に盛り込まれるであろう」内容のほかに、契約当事者が「特に守ってほしいこと」や「特に避けてほしいこと」が記載されます。これを双方が認識し、遵守することで、契約に関するトラブルの抑止につながります。

トラブル発生時の対応がスムーズとなりやすいから

契約書は、トラブル発生時にこそ真価を発揮するといっても過言ではないでしょう。起き得るトラブルを想定し、トラブルが発生した場合の対応を明確にしておくことで、万が一トラブルが顕在化した際にもスムーズかつ自社に有利な解決をはかりやすくなります。

アニメ制作の契約書で特に重視すべきポイント

アニメ制作の契約書は、どのような点に注意して作成・レビューをする必要があるのでしょうか?ここでは、主なポイントを4つ解説します。

  • 委託などの内容や範囲の特定
  • 知的財産権の処理
  • 中途解約時の取り扱い
  • 契約違反時の対応

なお、アニメ制作にまつわる契約書には注意すべき点が少なくありません。実態に即した的確な契約書を作成するため、実際に契約を締結しようとする際は、伊藤海法律事務所までご相談ください。

委託などの内容や範囲の特定

アニメ制作にまつわる契約では、委託などの内容や業務範囲などを特定しましょう。委託などの範囲が曖昧であると、この齟齬が原因でトラブルとなるおそれがあるためです。

特に、アニメなどのコンテンツ制作委託では、「やり直し」に対する追加料金の発生の有無などが問題となることが少なくありません。そのため、納品後の検収期間や修正対応についても、契約書に定めておくべきでしょう。

知的財産権の処理

アニメの制作にまつわる契約では、著作権を中心とした知的財産権の処理が重要です。

アニメの権利関係は非常に複雑であり、まず、原作の著作権は原作者にあります。また、原作を元に制作したアニメの著作権は作品の全体的な形成に創作的に貢献した者に帰属することとされており、アニメ制作会社のうち元請けがこれに当てはまりそうです。

また、二次利用によって制作されたアニメについても、原作者は権利を持つことが原則です。さらに、音楽には別の著作権が発生しています。

法令の原則どおりとした場合には、ビジネスとしてのスムーズな意思決定が疎外されかねません。そのため、契約によって譲渡をしたり、権利行使をしない旨の合意をしたりする処理が必要となります。

中途解約時の取り扱い

アニメ制作は、何らかの事情によって途中で頓挫することがあり得ます。そのような事態に備え、契約書には「出口」の対応も定めておきましょう。

契約違反時の対応

アニメ制作を進める中で、契約の相手方が契約違反をする場合があります。そのような事態に備え、契約書には、契約違反時の対応を明記しておきましょう。

違反時の対応を明記することで損害賠償請求や契約解除などがスムーズとなり、自社の損害を最小限に抑えやすくなります。

アニメ制作の契約書の作成・レビューを弁護士に依頼する主なメリット

アニメ制作にまつわる契約書の作成やレビューは、弁護士に依頼するとよいでしょう。ここでは、弁護士のサポートを受ける主なメリットを4つ解説します。

  • 実態に即した的確な契約書作成が可能となる
  • 自社が重視したいポイントを盛り込んだ契約書作成が可能となる
  • 自社に有利な内容を盛り込みやすくなる
  • トラブル発生時の解決がスムーズとなる

アニメ制作にまつわる契約書について相談できる弁護士をお探しの際は、伊藤海法律事務所までお気軽にご連絡ください。

実態に即した的確な契約書作成が可能となる

アニメ制作にまつわる契約書は複雑になりやすく、実態に即した的確な契約書を作成することは容易ではありません。弁護士のサポートを受けることで契約の実態に合った的確な契約書の作成が実現でき、トラブルの抑止につながります。

自社が重視したいポイントを盛り込んだ契約書作成が可能となる

契約書には、自社が特に重視したい事項を反映させることが可能です。先ほど解説したように、「遵守事項」や「禁止事項」などとして記載することが多いでしょう。

とはいえ、どのような内容であっても記載できるわけではなく、公序良俗に反する内容は無効です。また、相手方にとって負担の重すぎる内容であれば、交渉が決裂するおそれがあるでしょう。

弁護士のサポートを受けることで、表現などに注意しつつ、自社がその契約で重視したい事項を適切に盛り込みやすくなります。

自社に有利な内容を盛り込みやすくなる

契約書の最適解は、1つではありません。契約は交渉ごとであり、どちらの側であるかによって望ましい条項は変動します。

弁護士にサポートを依頼することで、自社にとって有利な条項を盛り込みやすくなります。

トラブル発生時の解決がスムーズとなる

弁護士はトラブルが発生してから相談を受けるケースも少なくありません。そのため、発生しやすいトラブルから「逆算」をして、契約書の条項を検討することが可能です。その結果、万が一トラブルが発生しても、自社にとってスムーズかつ有利な解決をはかりやすくなるでしょう。

アニメ制作に関する契約書の作成やレビューは伊藤海法律事務所にお任せください

アニメ制作に関する契約書の作成やレビューでお困りの際は、伊藤海法律事務所までご相談ください。最後に、当事務所の主な特長を5つ紹介します。

  • カルチャー・エンターテインメント法務に特化している
  • 弁理士資格も有しており知財に強い
  • クライアントのニーズに合わせた4種類の顧問プランを設けている
  • 英文契約書への対応も可能である
  • 連絡手段が豊富でありスピーディーな対応を実現している

カルチャー・エンターテインメント法務に特化している

当事務所は、カルチャー・エンターテインメント法務に特化しています。アニメ制作に携わる企業様のサポート実績も豊富であり、安心してお任せいただけます。

弁理士資格も有しており知財に強い

先ほど解説したように、アニメ制作の契約では著作権の処理が非常に重要です。当事務所の代表弁護士である伊藤海は、弁護士のほか、知財に関する国家資格である弁理士資格も有しており、知財の処理についても的確なサポートが可能です。

クライアントのニーズに合わせた4種類の顧問プランを設けている

アニメ制作に関わる事業者様の規模はさまざまです。そこで当事務所では、クライアント様の業務規模やニーズに応じた4種類の顧問プランを設けています。これにより、ニーズに即した過不足のないリーガルサポートを実現しています。

英文契約書への対応も可能である

アニメ制作では、海外の企業や個人と契約を締結すべき場面が生じることもあるでしょう。伊藤海法律事務所は英文契約書にも対応しているため、海外との契約についてもご相談いただけます。

連絡手段が豊富でありスピーディーな対応を実現している

当事務所は電話や対面での相談のみならず、SlackやChatwork、LINEなど多様な連絡手段を活用しています。また、一定の顧問契約を締結いただいた場合には、法務部のグループチャットに弁護士が参加することも可能です。これにより、スピーディーな対応を実現しています。

まとめ

アニメ制作に関する契約の概要や、アニメ制作に関して契約書を締結すべき理由、アニメ制作の契約書で重視すべきポイントなどを解説しました。

アニメ制作には数多くのプレイヤーが関与し、契約関係も複雑なものとなりがちです。合意内容に関する齟齬をなくし、後のトラブルを避けるため、契約書はきちんと締結しておくべきでしょう。

契約書の締結にあたっては、弁護士にサポートを受けることをおすすめします。弁護士のサポートを受けることで実態に即した的確な契約書が作成できるほか、万が一トラブルが発生した際にもスムーズな解決をはかりやすくなるためです。

伊藤海法律事務所はカルチャー・エンターテインメント法務に特化しており、アニメ制作に関する契約書の作成・レビューについても豊富なサポート実績を有しています。アニメ制作にまつわる契約についてサポートを受けられる弁護士をお探しの際は、伊藤海法律事務所までお気軽にご相談ください。

お気軽にお問い合わせください。