VTuberが所属する事務所から「卒業」する際は、権利関係を入念に確認しておく必要があります。権利関係を確認しておかなければ、卒業後に意図せず権利侵害をしてしまい法的措置の対象となるかもしれません。

では、VTuberに関する権利にはどのようなものがあるのでしょうか?また、VTuberが卒業すると、権利はどうなるのでしょうか?

今回は、VTuber活動に関する主な権利を紹介するとともに、VTuberが卒業する際の権利の帰属や卒業後の競業避止義務などについて、弁護士がくわしく解説します。

なお、当事務所(伊藤海法律事務所)はカルチャー・エンターテイメント法務に特化しており、VTuberとして活動する方やVTuber事務所様への豊富なサポート実績を有しています。VTuberの卒業に伴う権利について相談できる弁護士をお探しの際は、伊藤海法律事務所までお気軽にご連絡ください。

▼この記事のポイント

  • VTuberが卒業する際に注意すべき主な権利には、著作権と商標権がある
  • VTuberのアバターの著作権やネーミングの商標権をVTuberではなく事務所が有している場合、卒業後は使えなくなる可能性が高い
  • VTuberが卒業する際は競業避止義務にも注意が必要だが、内容によっては競業避止義務が無効と判断される可能性もある
伊藤 海

この記事を書いた人:伊藤 海 弁護士/弁理士

弁護士/弁理士
東京弁護士会所属(登録番号:49989)
日本弁理士会所属(登録番号:21902)

取扱分野:企業法務、カルチャー・エンターテインメント法務、AI法務、ベンチャー・スタートアップ支援、知的財産権法

VTuberに関する主な権利

VTuber活動に関する主な権利としては、次の2つが挙げられます。

  • アバターの著作権
  • ネーミングの商標権

ここでは、それぞれの権利の概要を解説します。

アバターの著作権

著作権とは、著作物を保護する権利です。著作権者は著作物を独占的に利用でき、第三者が権利者に無断で著作物を複製したりインターネット上で公開したりすれば、原則として著作権侵害となります。

著作権は創作と同時に自動的に発生するものであり、発生させるために登録などを受ける必要はありません。

著作権の対象となる著作物は「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」とされています(著作権法2条1項1号)。VTuberのアバターなども、著作物に該当する可能性が高いでしょう。

なお、著作権を有するのは、原則としてその著作物を創作した人です。そのため、たとえば所属事務所やVTuber自身が外部のクリエイターに委託してアバターを制作してもらった場合、原則としてそのクリエイターがアバターの著作権者となります(VTuber界隈では創作者を「ママパパ」と称することが多いため、この記事でも以後は「ママパパ」と表記します)。

また、事務所の従業員が職務上アバターを制作し、事務所の名義で公表する場合(職務著作)や、事務所がママパパから著作権の譲渡を受けた場合には、事務所が著作権者となります。そのアバターをまとって活動しているからといって、VTuberの「中の人」が自動的に権利者となるわけではありません。

ネーミングの商標権

商標権とは、商標を保護する権利です。商標とは、自社の商品やサービスを他社のものと区別するために付けるロゴマークやネーミングなどを指します。

商標権者は、登録商標を指定商品・指定役務について独占的に使用でき、権利者に無断で、指定商品・指定役務と同一または類似の商品・サービスについて同一または類似の商標を使用した場合、商標権侵害となります。

商標権は著作権とは異なり、自動的に発生するわけではありません。商標について商標権を発生させるには、特許庁に出願をして登録を受ける必要があります。

事務所としては所属するVTuberと同じ(または、似た)名前のVTuberが出現したり、所属するVTuberのネーミングを冠した商品が無断で販売されたりする事態は避けたいことでしょう。そこで、VTuberのネーミングについて事務所が商標出願するケースが散見されます。

事務所がVTuberのネーミングを出願して商標登録を受けた場合、事務所がそのネーミングの商標権者となります。

VTuberが卒業すると権利はどうなる?

VTuberが卒業する場合の権利の取り扱いについては、「権利者が誰であるか」によって異なります。ここでは、「中の人」が権利を持っている場合と、事務所が権利を持っている場合とに分けて解説します。

なお、伊藤海法律事務所はVTuberの卒業に伴う権利処理について豊富なサポート実績を有しています。VTuberが卒業することとなり、権利についてお困りの際は、伊藤海法律事務所までお気軽にご相談ください。

「中の人」自身が権利を持っている場合

VTuberの「中の人」が活動に伴う著作権や商標権を有している場合、「卒業」後も引き続きアバターやネーミングを使用できます。つまり、著作権や商標権などの権利を持ったまま、独立や移籍ができる可能性が高いということです。

ただし、所属時に事務所と取り交わした契約書によって、卒業後の活動が一定程度制限されている場合もあります。

思わぬ契約違反や権利侵害を避けるため、まずは弁護士に相談するとよいでしょう。お困りの際は、伊藤海法律事務所までご相談ください。

事務所が権利を持っている場合

VTuberの活動に伴う著作権や商標権を事務所が持っている場合、卒業後は原則として、これまでのアバターやネーミングを使い続けることはできません。これまでのアバターやネーミングを引き続き使用するためには、権利者である事務所と交渉をして権利を買い取るか、使用許諾(ライセンス)を受ける必要があります。

譲渡や使用許諾が受けられずこれまでのアバターやネーミングが使えない場合、「ガワ」やネーミングを変えて別のキャラクターとして活動する、いわゆる「転生」をすることが有力な選択肢となるでしょう。

事務所はVTuberの卒業後の活動を制限できる?

VTuberが卒業する際は、競業避止義務についても注意が必要です。ただし、その内容によっては、競業避止義務が無効と判断される可能性があります。

ここでは、競業避止義務の概要と有効性について解説します。

競業避止義務とは?

競業避止義務とは、事務所との契約期間中や事務所からの卒業後に、その事務所と競合する事業を営んだり競合する事業を営む他社と契約を締結したりしない義務です。

多くの事務所が、契約期間中に競業避止義務を課す条項を契約書に定めています。また、卒業後一定期間の競業避止義務を定める事務所も少なくありません。

競業避止義務が有効である場合、これに反して卒業後にVTuberとして活動してしまうと、契約違反を理由に旧事務所から損害賠償請求などがなされる可能性があります。

不当に自由を制限する競業避止義務は無効となる可能性がある

競業避止義務が不当に自由を制限するものである場合、事務所側との交渉で条項の削除を求めたり、訴訟で無効を主張したりできる可能性があります。なぜなら、卒業後を対象とする競業避止義務は、日本国憲法22条1項で保障された「職業選択の自由」を不当に制限するものとして、公序良俗(民法90条)に反し無効と判断される可能性があるためです。

そのため、事務所と取り交わした所属契約書や事務所側が提示する誓約書などに卒業後の競業避止義務を定める条項があり不安を感じている際は、まず弁護士に相談することをおすすめします。

伊藤海法律事務所は、VTuberやタレントが事務所を退所するにあたって、交渉により競業避止義務の削除に成功した実績を多数有しています。卒業後の競業避止義務でお困りのVTuber様は、伊藤海法律事務所までお早めにご相談ください。

VTuberの卒業に関してお困りの際は伊藤海法律事務所にご相談ください

VTuberの卒業に関してお困りの際は、伊藤海法律事務所にご相談ください。ここでは、当事務所の主な特長を4つ紹介します。

  • カルチャー・エンターテイメント法務に特化している
  • 知財に強い
  • 4種類の顧問プランを展開している
  • 英文契約書にも対応している

カルチャー・エンターテイメント法務に特化している

伊藤海法律事務所はカルチャー・エンターテイメント法務に特化しており、VTuber様やVTuber事務所様への豊富なサポート実績を有しています。

VTuberの卒業に伴う権利処理について、状況やご希望に応じた柔軟なサポートが可能です。まずはお気軽にご相談ください。

知財に強い

伊藤海法律事務所の代表である伊藤海は、弁護士のほかに弁理士資格も有しています。そのため、知財の権利処理や知財侵害時の対応だけではなく、知財を保護するための出願を含む総合的なサポートを提供できます。

4種類の顧問プランを展開している

伊藤海法律事務所は、次の4種類の顧問プランを展開しています。

プラン 概要
スタンダードプラン フリーランス、個人事業主、比較的小規模な中小企業などを想定したプラン
リーガルプラン 一般的な中小企業、メガベンチャーなどを想定したプラン
コーポレートプラン 上場企業などを想定したプラン
包括的法務受託 当事務所が実質的な法務部として稼働するプラン

そのため、VTuberなど個人で活動する方から上場している大規模な事務所に至るまで、過不足のないサポートが提供できます。

なお、顧問契約をいただいたクライアント様はLINEやメール、Chatwork、Slackなどで弁護士に気軽に連絡することが可能となるほか、弁護士を法務部のグループチャットに追加いただくことなども可能となります。

英文契約書にも対応している

VTuber活動やマネジメントに伴い、海外の企業や個人と契約すべき場面もあるでしょう。

伊藤海法律事務所は英文契約書にも対応しているため、海外と契約を締結する場面においても一貫したリーガルサポートを提供できます。

VTuberの卒業に関する伊藤海法律事務所の主な対応実績

伊藤海法律事務所は、VTuberの卒業に関して豊富なサポート実績を有しています。ここでは、当事務所による主なサポート事例を3つ紹介します。

なお、ここで紹介する事例は一部であり、ほかにもお困りの内容や状況に応じた柔軟なサポートが可能です。VTuberの卒業に関してお困りの際は、伊藤海法律事務所までお気軽にご相談ください。

卒業に伴う権利の調整によってVTuberの「2世」の活躍を可能とした事例

人気のあるVTuberの卒業は、事務所にとっても痛手となるでしょう。たとえ楽曲の権利などを獲得できたとしても、卒業後にはそのVTuberの新たな活動による収益は得られなくなるためです。

当事務所では、事務所側から依頼を受け、次の内容でVTuberの卒業による権利関係を整理した実績を有しています。

  • 楽曲の権利:卒業するVTuberが一部を取得
  • アバター(ママパパが有していた著作権を含む):事務所が一括取得

これにより、事務所は楽曲の権利の一部を失うことになるものの、アバターの権利を獲得したことで、同じ「ガワ」で「中の人」だけが異なる「2世」を活躍させることが可能となりました。

競業避止義務の削除に成功した事例

先ほど解説したように、契約条項にVTuberの卒業後の競業避止義務が設けられているケースは少なくありません。しかし、このような条項があればVTuberの卒業後の活動に制約が入り、「転生」などが難しくなる可能性があるでしょう。

当事務所では、卒業するVTuber側から依頼を受け、事務所側との交渉により競業避止義務の全面削除に成功した実績を有しています。

VTuberの卒業告知文のリーガルチェックをした事例

VTuberが卒業する際は、事務所の公式ホームページや公式SNSなどで卒業の告知をすることが多いでしょう。

この告知文は一見簡単に見えるものの、実際には慎重な確認が不可欠です。なぜなら、表現を誤れば卒業後の権利帰属などについて誤解が生じ、トラブルに発展するおそれがあるためです。

当事務所は、VTuberの卒業告知文について公表前にリーガルチェックをした実績を多数有しています。

VTuberの卒業に関するよくある質問

最後に、VTuberの卒業に関するよくある質問とその回答を4つ紹介します。

VTuberが卒業すると「ガワ」を変えて転生するのはなぜ?

VTuberが卒業後に「ガワ」を変えることが多いのは、VTuberの「中の人」は「ガワ」の著作権やネーミングの商標権を持っていないことが多いためです。

そのため、卒業後は権利者である事務所から許諾を得られない限りこれまでの「ガワ」やネーミングを使えず、別のアバターをまとって「転生」することとなります。

VTuberの卒業で事務所とトラブルになった際の相談先は?

VTuberの卒業で事務所とトラブルに発展したら、カルチャー・エンターテイメント法務に強い弁護士に相談するのがおすすめです。

お困りの際は、伊藤海法律事務所までご相談ください。

VTuberは「ガワ」などの権利を事務所から買い取れる?

VTuberが卒業に伴い事務所から「ガワ」などの権利を買い取れるかどうかは、交渉次第です。

VTuberが「ガワ」などの権利を強制的に買い取れるような法律や制度は存在しないため、買い取りたいのであれば慎重に交渉を進める必要があります。

また、卒業時点では交渉が難航しやすいため、その事務所に所属する時点で、所属契約書に「卒業時の権利を買い取れる旨の条項」などを設けるよう交渉することも1つの方法でしょう。

VTuberが卒業後に権利者である事務所に無断で元の「ガワ」を使うとどうなる?

VTuberが卒業後に無断で「ガワ」などを使用した場合、権利者である事務所側から差止請求や損害賠償請求がなされる可能性があります。

差止請求とは、その「ガワ」の使用をやめるよう求めることです。また、損害賠償請求とは、権利侵害によって事務所側に生じた被害を金銭の支払いで償うよう求めることを指します。

悪質な場合には、刑事罰の対象となる可能性もあります。

まとめ

VTuberが卒業する際に注意すべき権利について解説しました。

VTuberの活動に関する主な権利としては、アバターの著作権とネーミングの商標権が挙げられます。これらをいずれもVTuberが有しているケースもあるものの、事務所が権利者である場合が多いでしょう。

アバターの著作権やネーミングの商標権を事務所が有している場合、卒業後は、VTuberがこれらを自由に使うことはできません。卒業後も同じアバターやネーミングを使い続けたい場合には、事務所側と交渉し、権利の譲渡を受けるかライセンスを受ける必要があります。

VTuberが卒業を検討している場合にはまず弁護士に相談して権利関係を整理したうえで、必要に応じて事務所側との交渉を検討するとよいでしょう。

伊藤海法律事務所はカルチャー・エンターテイメント法務に特化しており、VTuberの卒業に伴う権利処理について豊富なサポート実績を有しています。卒業に伴う権利処理でお困りのVTuber様やVTuber事務所様は、伊藤海法律事務所までお気軽にご相談ください。

お気軽にお問い合わせください。