CMや企業のイメージキャラクターなどに、AIモデルやAIタレントを起用するケースが散見されるようになりました。AIタレントの起用にはメリットもある一方で、リスクや注意点も存在します。

今回は、AIモデルやAIタレントを起用するメリットや注意すべきリスク、リスクを軽減するための対策などについて、弁護士がくわしく解説します。

なお、当事務所(伊藤海法律事務所)はカルチャー・エンターテイメント法務に特化しており、AIモデルやAIタレントに関する豊富なサポート実績を有しています。AIモデルやAIタレントについて相談できる弁護士をお探しの際は、伊藤海法律事務所までまずはお気軽にお問い合わせください。

▼この記事のポイント

  • AIモデルやAIタレントを起用することには、コストを削減しやすいことや表現の自由度が高まること、不祥事リスクを回避しやすくなることなどのメリットがある
  • AIモデルやAIタレントを起用する場合、他者の著作権や肖像権などを侵害しないよう注意が必要
  • AIモデルやAIタレントの起用が自社のブランドイメージと合っていなければ、自社のイメージが低下するリスクがある
  • リスクを軽減する対策としては、他者の権利に「ただ乗り」しようとしないことや公開前に似た作品や人物がいないかどうかを入念に確認すること、弁護士に相談することなどが挙げられる
伊藤 海

この記事を書いた人:伊藤 海 弁護士/弁理士

弁護士/弁理士
東京弁護士会所属(登録番号:49989)
日本弁理士会所属(登録番号:21902)

取扱分野:企業法務、カルチャー・エンターテインメント法務、AI法務、ベンチャー・スタートアップ支援、知的財産権法

AIモデルやAIタレントとは?

AIモデルやAIタレントとは、生成AIを使用して制作された、実在しないモデルやタレントを指します。

「バーチャルヒューマン」と呼ばれることもあり、近年では企業のPRなどにAIモデルやAIタレントが「起用」されるケースも増えています。

AIモデルやAIタレントを起用するメリット

企業がAIモデルやAIタレントを広告などに起用することには、次のメリットなどがあります。

  • コストを削減しやすい
  • 表現の自由度が高まる
  • 不祥事リスクを回避しやすい

コストを削減しやすい

AIモデルやAIタレントを自社の広告に起用する大きなメリットの1つは、コストを削減しやすいことでしょう。AIモデルやAIタレントを生成するにも一定のコストは要するものの、そのコストは実在のタレントを起用する場合に比べて低くなることが一般的です。

特に、継続的にそのAIモデルやAIタレントを起用する場合には長期にわたって初期の開発コストを回収しやすく、コストの大幅な削減につながります。

表現の自由度が高まる

AIモデルやAIタレントを起用する場合、表現の自由度が高まります。AIモデルやAIタレントは、実在のタレントには難しい表現も可能であるためです。

たとえば、そのAIモデルやAIタレントの幼少期からの成長を段階的に見せることや動物などに変身させること、体型や体格を自在に変えること、空中を浮遊させることなども可能となるでしょう。

また、24時間休むことなく会話やダンスをし続けたり、視聴者の設定によって多数の言語を使い分けたりすることなども現実的となります。

不祥事リスクを回避しやすい

AIモデルやAIタレントは実在する人物ではないため、不祥事とは無縁です。

そのため、出演タレントの不祥事などに伴う広告の休止・差し替えのリスクやイメージ低下のリスクなどを回避できます。

AIモデルやAIタレントを起用するリスク

AIモデルやAIタレントを起用することには、リスクもあります。主なリスクとしては、次のものが挙げられます。

  • 他者の権利を侵害する可能性がある
  • 権利処理が甘ければ権利関係のトラブルに発展する可能性がある
  • ブランドイメージが低下する可能性がある

これらのリスクも理解したうえで、自社にとってAIモデルやAIタレントを起用することが最適であるかどうか慎重に検討する必要があるでしょう。それぞれのリスクについて、概要を解説します。

他者の権利を侵害する可能性がある

AIタレント自身は「不祥事」を起こす可能性がないものの、AIタレント自体が他者の権利を侵害していれば、大きなトラブルに発展するおそれがあります。

AIタレントが他者の権利を侵害している場合、権利者からそのAIタレントの使用をやめるよう求める「差止請求」がなされたり、損害賠償請求がなされたりする可能性があるでしょう。また、他者の権利への意識が低いと判断され、自社のブランドイメージが毀損されるかもしれません。

特に注意すべき権利には、次の3つが挙げられます。

  • 著作権
  • 肖像権
  • パブリシティ権

著作権

著作権とは、著作物を保護する権利です。

登録などを経ることなく、創作と同時に自動的に発生します(著作権法17条2項)。AIタレントが、他者が権利を有するイラストや写真、他のAIタレントなどと類似しており、それらに依拠して生成されたと認められる場合には、著作権侵害となる可能性があります。

肖像権

肖像権とは、承諾なしに自分の容貌・姿態を撮影されたり、写真やイラストなどで公表されたりしない権利です。法令に明文化された権利ではないものの、日本国憲法第13条で保障された「幸福追求権」を根拠として、判例によって確立されています。

AIタレントが実在の人物に酷似している場合、肖像権侵害にあたる可能性があります。

パブリシティ権

パブリシティ権とは、著名人が有する氏名や肖像、声などから生じる「顧客吸引力」を、本人が排他的に利用する権利です。

「顧客吸引力」について平たくいえば、「あの人がCMに出ているならこのサービスは信頼できそうだ」や「この人が使っている商品なら自分も使ってみたい」などと顧客に感じさせる力です。

著名人にこのような力があるからこそ、多くの企業が対価を支払って著名人を広告などに起用しています。そうであるにもかかわらず、実在の著名人に酷似したAIタレントが本人に無断で起用されれば、著名人が正当な報酬を得る機会を逸しかねません。

そのため、実在の著名人を想起させるほど酷似したAIタレントを、その著名人の顧客吸引力を利用する目的で起用することは、パブリシティ権の侵害にあたる可能性があります。

権利処理が甘ければ権利関係のトラブルに発展する可能性がある

AIモデルやAIタレントを起用する場合、実在のタレントを起用する場合とは異なる権利関係の処理に注意が必要です。AIモデルやAIタレントは、制作過程で人の創作的寄与が認められれば著作物に該当し、著作権を適切に処理する必要があるためです。

勘違いしている人も多いですが、著作権は「創作の依頼者」に帰属するのではありません。

たとえば、A社が外部クリエイターであるB氏に「自社のイメージキャラクターとなるAIタレントを作ってほしい」と依頼したとしても、A社が自動的に著作権者になるわけではないということです。B氏が試行錯誤の末に創作したAIタレントの著作権は、原則として創作者であるB氏に帰属します。

生成されたAIタレントの著作権をA社が獲得したい場合、著作権者であるB氏と交渉をして譲渡を受ける必要があります。この点を正しく理解していなければ、権利関係をめぐってクリエイターとの間のトラブルに発展するかもしれません。

また、AIタレントの人気が出た場合、そのAIタレントのグッズ化などが視野に入る場合もあるでしょう。この際も、トラブルを避けるためには、権利関係を慎重に処理して契約書を交わしておく必要があります。

ブランドイメージが低下する可能性がある

前提として、すべての人がAIモデルやAIタレントに好感を持つわけではありません。好感を持つ人や「特に何も思わない」という人などもいる一方で、AIによる制作物やAIタレントに嫌悪感を抱く人も少なからず存在します。

そのため、AIモデルなどの起用が自社のブランドイメージや自社の示す理念と合致していない場合、ブランドイメージの低下につながるかもしれません。

AIモデルやAIタレントの起用でリスクを回避する対策

AIモデルやAIタレントの起用によってリスクを回避するには、次の対策などを講じるとよいでしょう。

  • 自社のブランドイメージと合っているかどうか事前に慎重に検討する
  • 他者の権利に「ただ乗り」しようとしない
  • 似た作品や似た人物がいないかどうか公開前に入念に確認する
  • AIモデルの制作を委託する際は事前に弁護士に相談する

ここでは、それぞれの対策について解説します。

なお、伊藤海法律事務所はAIモデルやAIタレントの起用に関して豊富なサポート実績を有しています。AIモデルやAIタレントの起用に関してリスクを低減したいとお考えの際やトラブルが発生してお困りの際などには、伊藤海法律事務所までお気軽にご相談ください。

自社のブランドイメージと合っているかどうか事前に慎重に検討する

AIモデルやAIタレントを起用する際は、「これらを起用することが自社のブランドイメージと合致しているか」や「自社のターゲット層にどのように捉えられるか」などを、事前に慎重に検討することをおすすめします。

先ほど解説したように、AIモデルやAIタレントを起用することが自社の打ち出す経営理念や自社の主要な顧客層の考え方などとズレていれば、ブランドイメージの低下につながるおそれがあるためです。

他者の権利に「ただ乗り」しようとしない

AIモデルやAIタレントの起用によるリスクを回避するためには、他者の権利に「ただ乗り」しようとするのは避けるべきでしょう。

「人気タレントAの人気にあやかって、Aに似たAIタレントを起用しよう」、「人気のキャラクターBは当社のターゲット層である中高生に人気があるので、Bを多く学習させて似たキャラクターを生成しよう」などという発想でAIタレントを起用すれば、他者の肖像権やパブリシティ権、著作権を侵害し、トラブルに発展するリスクが高くなるためです。

似た作品や似た人物がいないかどうか公開前に入念に確認する

AIモデルやAIタレントを生成したら、これを世に出す前に、似た著作物や似た人物がいないかどうか入念に確認することをおすすめします。

AIでは、既存の著作物や実在の人物に似たキャラクターが生成される場合があります。たとえ意図的に似せたのではなかったとしても、結果的に既存の著作物や実在の人物に酷似したAIタレントを起用すれば、大きなトラブルに発展するかもしれません。

生成したAIタレントを公開する前に似た著作物や人物が存在しないかどうか入念に確認することで、意図せず権利侵害をするリスクを軽減しやすくなります。

AIモデルの制作を委託する際は事前に弁護士に相談する

AIモデルの制作を委託する際は、事前に弁護士に相談するとよいでしょう。弁護士のサポートを受けることで、AIタレント起用の目的や今後想定している活用法などを踏まえて契約内容を事前に検討・交渉でき、的確な契約を締結しやすくなるためです。

伊藤海法律事務所は、AIモデルやAIタレントの制作委託についても豊富なサポート実績を誇っています。お困りの際は、当事務所までお気軽にご相談ください。

AIモデルやAIタレントに関してお困りの際は伊藤海法律事務所にご相談ください

AIモデルやAIタレントに関してお困りの際は、伊藤海法律事務所にご相談ください。ここでは、当事務所の主な特長を4つ紹介します。

  • カルチャー・エンターテイメント法務に特化している
  • 代表は弁理士でもあり知財に強い
  • 顧問契約にも対応している
  • 英文契約書にも対応している

カルチャー・エンターテイメント法務に特化している

伊藤海法律事務所は、カルチャー・エンターテイメント法務に特化しています。

AIモデルやAIタレントに関するサポート実績も豊富であるため、状況に応じた的確なサポートを提供できます。

代表は弁理士でもあり知財に強い

伊藤海法律事務所の代表である伊藤海は、弁護士のほかに弁理士資格も有しています。

知財の保護から侵害時の対応、知財に関する契約交渉に至るまで、総合的なサポートを提供できます。

顧問契約にも対応している

伊藤海法律事務所は、顧問契約にも対応しています。

「日頃から弁護士に気軽に相談したい」「自社の状況を知っている弁護士に継続的にサポートを依頼したい」とお考えの際は、顧問契約もご検討いただくのがおすすめです。

英文契約書にも対応している

AIモデルやAIタレントに関して、海外の企業や個人と契約を締結すべき場面が生じる可能性もあるでしょう。

伊藤海法律事務所は英文契約書にも対応しており、海外との契約締結に関しても一貫したサポートが提供できます。

AIモデルやAIタレントに関する伊藤海法律事務所の主な対応実績

伊藤海法律事務所は、AIモデルやAIタレントに関して豊富なサポート実績を有しています。ここでは、当事務所の主なサポート事例を3つ紹介します。

なお、ここで紹介するのは事例の一部であり、ほかにもお困りの内容や状況に応じた柔軟なサポートが提供できます。AIモデルやAIタレントについて相談できる弁護士をお探しの際は、伊藤海法律事務所までお気軽にお問い合わせください。

AIモデル生成サービスを展開する企業向けにマニュアルを作成した事例

AIモデルの生成を事業として営む場合、他者の著作権や肖像権などを侵害する「AIモデル」を納品しないよう、入念に注意すべきでしょう。

意図的ではなかったとしても、権利侵害のある「AIモデル」を納品してしまえば多額の賠償責任を負う可能性があるほか、自社のイメージが大きく毀損され、以後の売上低迷につながるおそれもあるためです。

また、生成した「AIモデル」の著作権の帰属などについて発注者である企業と交渉をまとめる必要があるなど、多面的な注意も必要でしょう。

これらの注意点を社内に徹底させるには、マニュアルの整備は不可欠です。

伊藤海法律事務所では、AIモデル生成サービスを展開する企業から依頼を受け、マニュアルを作成・整備した実績を有しています。

所属タレントと似たAIモデルの使用差止めを請求した事例

AIによって生成された人物が、実在のタレントと似る場合があります。

意図的である場合もあれば意図せず似てしまう場合もあるものの、タレント側としてはいずれの場合であっても看過できないことが多いでしょう。そのAIモデルの使用によって、パブリシティ権を侵害される(つまり、「仕事を奪われる」)可能性があるほか、肖像権の侵害にあたる可能性もあるためです。

伊藤海法律事務所では、芸能事務所からの依頼を受け、所属タレントと似ているAIモデルの使用差止めを請求した実績があります。

生成AIによって作成したアイドルのリーガルチェックをした事例

先ほど解説したように、AIモデルやAIタレントを生成したり起用したりする際は、そのAIモデルやAIタレントが他者の権利を侵害していないことを事前に入念に確認すべきでしょう。

仮に権利侵害がある状態で公開に至ってしまえば、損害賠償請求などの法的措置がとられる可能性があるほか、差止請求によって回収・差し替えなどの負担が生じたり、自社のブランドイメージの毀損につながったりするおそれがあるためです。

とはいえ、どの範囲でどのようにチェックをすればよいかわからない場合も多いでしょう。

伊藤海法律事務所では、生成AIによって作成したアイドルが第三者の権利を侵害していないかどうかリーガルチェックをした実績を有しています。

AIモデルやAIタレントに関するよくある質問

最後に、AIモデルやAIタレントに関するよくある質問とその回答を3つ紹介します。

著名人に似せたAIタレントを起用するのは違法?

実在する著名人に似せたAIタレントを起用した場合、著名人の側からパブリシティ権や肖像権の侵害であるなどとして法的措置がとられる可能性があります。

また、起用した企業のリテラシーが低いと判断され、ブランドイメージが毀損されるおそれもあるでしょう。

AIタレントに肖像権はある?

AIタレントに肖像権はありません。肖像権は、実在の人物だけが有する権利であるためです。

その一方で、人間がAIへの具体的な指示や生成物への加筆・修正などを通じて創作的に関与したAIタレントであれば、著作権が発生する可能性があります。

AIタレントの権利は誰に帰属する?

AIタレントについて著作権が発生する場合、その権利は原則として、AIを使って「AIタレント」という著作物を創作したクリエイターに帰属します。

そのクリエイターが企業の従業員であり、職務の一環として創作するなど職務著作の要件を満たす場合は、原則としてその所属企業が著作権者となります。

ただし、著作権は譲渡できるため、これらの者から別の者に譲渡されている可能性もあります。

AIタレント自体が著作権者となったり、生成に活用したAIやそのAIシステムの提供企業が著作権者となったりするわけではありません。

まとめ

AIモデルやAIタレントを起用するメリットやAIモデルやAIタレントに関する主なリスク、リスクを回避する対策などについて解説しました。

AIモデルやAIタレントの起用にはメリットが少なくない反面、リスクも存在します。リスクを軽減するため、AIモデルやAIタレントの起用が自社のブランドイメージと合っているかどうか慎重に検討することをおすすめします。

また、他者の権利に「ただ乗り」しようとするのは避け、公開前には似た著作物や人物がいないかどうか入念に確認するとよいでしょう。

AIモデルやAIタレントにくわしい弁護士を見つけて適宜サポートを受けることで、リスクを回避しつつ、AIモデルやAIタレントの起用を進めやすくなります。

伊藤海法律事務所はカルチャー・エンターテイメント法務に特化しており、AIモデルやAIタレントに関して豊富なサポート実績を有しています。AIモデルやAIタレントの起用をご検討の際は、伊藤海法律事務所までまずはお気軽にご相談ください。

お気軽にお問い合わせください。